夏本番に「熱中症」安全対策〜スタンダードは“クール・ファースト”

写真◎Getty Images



3|対策②水分補給

しっかり汗をかくために
飲み負けない体をつくる!
こまめに汗をふく 
 

「1|熱中症を知る」でも解説しましたが、汗というのは気化熱を奪って体表の温度を下げる効果があり、体表と深部体温の間に大きな熱勾配をつくるためにも汗をかくというのは非常に重要になります。体表の温度が高くなって深部温度との差があまりなくなると、熱勾配が小さくなり、体内の熱が外に流れなくなって熱中症のリスクが高まります。しっかりと水分を補給して汗がどんどん供給され、どんどん蒸発して体表の温度を下げるというのは熱中症対策の大前提になるのです。

 ではどれくらい水分を補給すればいいかというと、例えば暑い時期にデ杯選手たちの対応をする場合、だいたい30分で1ℓの水分を補給してもらうように準備をします。ジュニアやベテランを含めた一般のプレーヤーであっても、30分に500㎖は目安にしてもらいたいところです。

 30分に1ℓということは2時間の試合なら4ℓ、30分に500㎖でも2ℓになりますので、「飲む力」も大切になります。飲み慣れていないと、体は水分を必要としているのに飲めない、飲んでも吸収できずお腹がタポタポになってしまうということになってしまいます。汗のかき方には個人差がありますが、特に汗をよくかく人は普段からある程度、飲み方のトレーニングをしておくことも必要です。

 ただ、体表が濡れた状態では汗が蒸発せず、いくら汗をかいても体表温度は下がりません。汗で濡れたらすぐにふき取り、汗腺からどんどん汗が蒸発できるようにしておかなければなりません。同じように、余裕があればウェアもこまめに着替えることができれば理想的です。

 また、汗は水ではなく電解質です。カリウムやナトリウムも汗と一緒に流れ出てしまうので、カリウムやナトリウムを含んだ電解質の水分を補給する必要があります。スポーツドリンクなどを活用しながら、しっかり補給するようにしましょう。

 汗をかくためには暑熱への馴化も大切です。日本は四季がはっきりしており、特に冬場は汗をかかないので汗腺の活発な汗の産生がうまくできなくなります。その時期にオーストラリアン・オープンへ出場するナショナルチームの選手たちには、ナショナルトレーニングセンターの温度を上げ、汗をかく能力と体温を調整する力、自律神経系を活発化するトレーニングをしてもらっています。

 一般のプレーヤーも新型コロナウイルスの影響で自粛を余儀なくされ、しばらくテニスやスポーツから離れていた人は、強度の低い運動からはじめて体に暑さを覚えさせ、適正な量の汗をかけるようにすることから始めるとよいでしょう。



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