セバスチャン・コルダがオーストラリアン・オープンで父の軌跡をたどる


 もしセバスチャン・コルダ(アメリカ)が、オーストラリアン・オープン(1月15~28日/オーストラリア・メルボルン/ハードコート)をプレーすることに、すでにナーバスになっていなかったとしても、ロッド・レーバー・アリーナの光景には何がしかの感銘を受けたはずだ。

 その最初の印象のひとつは、アリーナの中にある「ウォーク・オブ・チャンピオンズ」という歴代チャンピオンたちの写真が飾られた通路に、1998年に優勝した彼の父ペトル・コルダ(チェコ)の名前とともにあったサインを見たときだろう。

 プレッシャーも、何もない。

 その日曜日、若きコルダはオーストラリアン・オープンで幸先のいいデビューを果たした。彼はジュニアの部のシングルスとダブルスで初戦に勝ったのである。彼はシングルスでクレモン・タブール(フランス)を7-5 6-3で倒し、それからニコラス・メヒア(コロンビア)と組んだダブルスでもストレート勝ちをおさめた。

 17歳の息子がメルボルンで戦うところを見るため、父ペトルがフロリダの自宅から出向いて来ることはなかった。しかし彼は、特にマルセロ・リオス(チリ)を倒して自身唯一のグランドスラム・タイトルを獲った記念日が20周年を迎える今年、精神的な意味で大いにここメルボルンにいたのだ。

「父が優勝したときのポスターを見て回るだけで楽しいよ」とセバスチャンは言った。「絶対的にすごいことだ」。

 セバスチャンはフロリダの、スポーツに憑りつかれた家族の中で育った。チェコ人である両親は結婚したあとにフロリダに身を落ち着けたのだが、母のレジナ・ライヒルトバも世界ランキングで最高26位にまで至ったことのある元テニスプレーヤーだった。

 そして彼の姉たちも、今やプロのゴルフ選手だ。姉たちもセバスチャン同様、アメリカ人としてプレーしている。24歳のジェシカは2012年にLPGAツアーで全豪オープン優勝を遂げ、19歳のネリーは、現在女子ゴルフのランキングで70位につけている。

 セバスチャンは、チェコのプレーヤーであるラデク・ステパネクの試合を観に、2009年のUSオープンに行くまではホッケーに傾倒していた。父ペトルが一時コーチしていた選手であるステパネクは、その年、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)と対戦したのだが、それ以降、彼はテニスの魅力に憑りつかれてしまった。

 そこまで、彼の親は決して、テニスの道に進むことを息子に強いなかったが、彼が真剣にテニスに打ち込むと決意したあとは、父が彼のコーチのひとりとなった。

 セバスチャンと父の類似性は、実際、驚くほどだ。彼はペトルのトレードマークだった90年代のハリネズミのような髪型ではないにせよ、同じような痩せた体、細い手足、そして金髪の持ち主だ。セバスチャンはすでに、父よりほんの少し高い193cmの長身を誇っている。

 ふたりのプレースタイルにも類似したところはある。とはいえセバスチャンは右利きで、父の武器だった優雅な片手打ちバックハンドは持たない。

「僕の父は間違いなくボールを非常に早くとらえる。僕もその点では同じようにプレーしているよ」とセバスチャンは言った。「僕はアグレッシブなプレーヤーだ。サービスの強さを生かし、ポイントを早く取るタイプのプレーをするよう努めている」。

 火曜日に50歳になるペトルは、セバスチャンのメインのコーチを務めているが、娘のゴルファーとしてのキャリアも助けているため、息子とともにツアーを巡って旅することに関しては限界がある。セバスチャンはメルボルンに、練習コーチであるディーン・ゴールドファインとともにやって来た。ゴールドファインはかつてアンディ・ロディック(アメリカ)、トッド・マーチン(アメリカ)のコーチだった人物である。

「彼はオールラウンドなテニスをする選手だ」とゴールドファインは言った。そして「彼は強力なサービスの持ち主だ。彼のサイズの男にしては、バウンドの上がりばなをうまくとらえて打っているし、動きもこの上なくいい。技術力に優れ、全般的にテニスをよく理解している。彼は、彼の年齢の者にしては、本当に穴のないプレーヤーだ」。

 セバスチャンは、父ペトルのキャリアのハイライト、1998年オーストラリアン・オープン決勝の、リオスに対する6-2 6-2 6-2の勝利についてのストーリーを聞きながら育った。それは大会の歴史で、もっとも一方的な決勝のひとつでもあった。

「もちろん、たくさんのビデオを見たよ」と、彼は笑みを浮かべながら言った。

 しかし彼は、父の遺産を重荷とみなしてはいない。もし何かあるとしたら、それはインスピレーションの源であり、自分の目標を定めるための方法だ。

「父よりも一つ多くグランドスラムのタイトルがほしいし、父よりも一ついいランキングに至りたい」と彼は言った。

 父ペトルは最高で2位にまで至ったことがある。つまりセバスチャンが父よりいいランキングに就くということは、ナンバーワンにならなくてはいけないということだ。

 今、テニスの試合をしたらどちらが勝つかについては、セバスチャンは明言できないと言った。

「もう最近は勝負していない。最後に試合をしたのは僕が12歳のときで、そのときには父が6-0で勝った。今のところ、父とすぐ勝負したくはないね」と彼は言った。

 それでも、今なら父に勝てると思っているだろうか?

「そう思うよ」と、にんまり笑って言った。「でも、そんなことしたくない」。

 もし彼がオーストラリアン・オープン・ジュニアのタイトルを獲ったら、それで十分かもしれない。それは、ロッド・レーバー・アリーナの「ウォーク・オブ・チャンピオンズ」に、いつか自分の名を刻むための最初の一歩だ。(C)AP(テニスマガジン)

※トップ写真はセバスチャン・コルダ(アメリカ)
Photo: MELBOURNE, AUSTRALIA - JANUARY 21: Sebastian Korda of the United States plays a forehand against Clement Tabur of France during the Australian Open 2018 Junior Championships at Melbourne Park on January 21, 2018 in Melbourne, Australia. (Photo by Mark Kolbe/Getty Images)

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