[浜松三ケ日国際女子] マッチレポート① 1回戦「波形純理 vs 藤原里華」(大会提供レポート)

 大会開幕前日……出来上がったばかりのドロー表を目にしたとき、波形純理(伊予銀行)は、思わず大きくのけぞった。

 1回戦の対戦相手が、今大会の出場選手の中で、誰よりもよく知る藤原里華(北日本物産)だったからだ。

 現在35歳の波形と、36歳の藤原が初めて対戦したのは、二人がまだ小学校中学年だったとき。

「確か初対戦は、負けました。というより、ジュニアの頃は勝てる気配がなかった」

 波形が回想する。10代の頃の藤原は、常に同世代のトップ。波形にとっては、ライバルと呼ぶのもためらわれる存在だった。

 その波形が、今回ドローを見たときに真っ先に思い出したのが、2007年でのこの大会での対戦だったという。そのときは、接戦の末に波形が6-3 4-6 6-2で勝利。実はこの一戦こそが、プロになってから4度目の対戦にして、波形が藤原から初勝利を手にした試合だった。

波形純理(伊予銀行)(写真提供◎大会実行委員会、撮影◎てらおよしのぶ)

「あのときの対戦では、第1セットをいい形で取って、でも第2セットでは守りに入り取られてしまった。だから第3セットでは、もう一度攻めようと思った。ボールを見すぎるのではなく、高い打点で打つことを心掛けたんです」

 10年前の試合展開や心の動きまでをも克明に覚えている事実が、この一戦が波形にとり、いかに大きな意味を持つかを物語る。そして奇しくも今回の対戦でも、試合は似た展開を見せた。

 最初のゲームからいきなり幾度も重ねたデュースが、二人の意地を浮かび上がらせる。その鍔迫り合いから最初に抜け出したのは、第4ゲームをブレークした藤原。しかし波形もミスの少ないプレーで、直ぐにブレークバックに成功する。淡々と自分のやるべきこと徹する波形が、終盤に突き放し第1セットを先取した。

 第2セットも、精力的な動きとショットバリエーションに富む藤原が先にリードするが、波形は、相手の早い展開についていくことを心掛ける。その波形の冷静さに圧力を感じたかのように、最後のゲームでは藤原が2本のダブルフォールトを重ねて試合に終止符が打たれた。

藤原里華(北日本物産)(写真提供◎大会実行委員会、撮影◎てらおよしのぶ)

 経験を生かしての快勝を満面の笑みでよろこぶ波形は、35歳を迎えた今、テニスが楽しくて仕方ないといった趣きだ。

 テニスは楽しい……? その問いにも間髪入れずに「はい!」と即答。「試合で勝てなくて落ち込んだときは、練習でボールを打つと楽しくなる」ほどに、テニスの魅力にハマっている。

 積み重ねた多くの経験値と、テニスを始めたばかりのような初々しいモチベーションーーそれらを融合させながら、35歳のベテランは笑顔でコートに立つ。

レポート◎内田暁(大会オフィシャルライター)

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