[特別対談] クルム伊達公子×陣内貴美子 fromテニスマガジン

長いシーズンが終わり、束の間のシーズンオフ。その合間をぬって実現した仲良し2人のキミコ対談。『テニスマガジン2月号』では掲載しきれなかったトークを、この『テニスデイリー』でお届けします。


テニスはグローバルなスポーツ


陣内 テニスはバドミントンに比べて(メディアに)取り上げてもらえるし、すごくうらやましい。
伊達 でも今じゃバドミントンだってすごくないですか? 女子に限って言えば今はテニスよりバドミントンじゃない? 陣内さんはちょっと(時代が)早かったですね!
陣内 時代? そう言いながらまだ(クルム伊達は)やってるんだから! でも昔はこういう(他競技同士の)交流はなかったよね。テニスはテニス、バドミントンはバドミントンで。今はLINEでつながっているし、違う競技の応援にも行くしね。
伊達 みんな仲がいい。(SNSで)つながって、やりとりできるから。
陣内 昔はなかったというか、そんなことやっている時間があったら練習しろと……、
伊達 怒られた!
陣内 でも、やっぱりテニスとバドミントンでは取り上げられ方が違うと思う。どんなに頑張っても(笑)。だって錦織選手が全米で決勝に行ったら、すごく取り上げられたじゃない? バドミントンは日本選手が世界選手権でメダルを獲っても……。
伊達 テニスはグローバルなスポーツというのはありますね。男女平等で、ゴルフのように女子のスポーツとして確立している。
陣内 テニスの選手は英語も話せるし、自立しているイメージがある。同じ個人スポーツだけど、バドミントンはまだチームで動いているから。個人の大会なのに、負けても最後まで他の選手を応援している。
伊達 プロの選手はいないんですか?



陣内 いるんだけど企業に所属しているから、企業の考えを受け入れて活動している。今の選手はいい子、真面目な選手が多いんだけど、もっと自分をアピールしてほしい。
伊達 テニスもそうかもしれませんね。みんなを押しのけて、自分だけ突き抜けようとする感じは一切しないかな。みんな仲良く、平和に、楽しくテニスをやって、それなりにお金をもらってと。だから勝っても負けても、みんないい子ですよ。
陣内 見ていて歯がゆい?
伊達 というより、怒り?
陣内 せっかく現役復帰して、いっしょにやっているんだから、もっと見習ってほしいし、盗んでほしいと思う。もし私が若手だったら、嫌と思われても、ずっといっしょにいたいと思うんだけどな。現役時代、先輩といっしょに練習して、基本だけで1時間くらい打つじゃない。緊張しているからすごくヘトヘトになるんだけど、でもそれって絶対に身になっているよね。
伊達 初めてガブリエラ・サバティーニ(アルゼンチン)やモニカ・セレス(アメリカ)と練習したときは死ぬかと思いました。30分くらいが2時間にも感じて。ミスしたら次はもう(いっしょに)やってもらえないと思って必死でした。
陣内 でも4時間、5時間の練習よりも、その30分がどれだけ活きた練習か。

370gと80gのラケット談議

陣内 ラケットはどんなところにこだわっている?
伊達 私はグリップ、重さ、バランス。一番はグリップ。
陣内 私も。ヨネックスには同じグリップ、同じ重さのラケットが何百本もあって、それを全部握って、感覚の合うラケットを何十本とか抜くの。次にそれを振ってみて、それで感覚の一番いいラケットを選んでた。
伊達 私は人差し指のひっかかり具合が重要。“ちょっと”ひっかかるくらい、その感覚が得られるかどうか。新潟に専任の方がいらっしゃるんですが、その方に仕上げてもらっています。
陣内 職人! 



伊達 重さは、これでも軽くしたくらい(370g)。それでも男女を通じてトップ5に入るくらいの重さだと思います。軽いと振れないんですよ。軽くしたときは振れすぎて、慣れるまで少しブレちゃったけど。そっちは何gですか?
陣内 80gちょっと。
伊達 軽~い!
陣内 昔は100gを切ると軽いと思ったけど、今は80gだもんね。
伊達 (コートにはラケットを)何本持っていくんですか?
陣内 現役のときは5~7本かな。でも本当に使うのは1~2本だった。
伊達 私は昔(遠征に持って行くのは)8本だったんですけど、なかなかガットが切れないこともあって6本に減ったんです。この8年は6本ですね。私は偶数じゃないとダメなんですよ。服にしても何にしても(笑)。4か6か8。でもラケット4本は何かあったときに少し怖いなと思って。でも実際、それほど使わないんですよ。みんなボールチェンジで替えるんですが、私はそうじゃない。極論、2本で大丈夫なんですけど、エキストラで2本を加えて今は4本なんです。でも全然問題ない。
陣内 (ストリングが)切れるときはバンバン切れるよね!
伊達 切れるんだ!
陣内 私は自分で張っていたよ。魂が入るというか、(機械だと)愛情がない気がして。
伊達 自分で張るの? すごい!



PROFILE
クルムだてきみこ(写真左)◎1970年9月28日生まれ。京都府出身。園田学園高を卒業後にプロ転向。ライジングショットを武器にトッププレーヤーへと成長し、94年全豪オープン、95年全仏オープン、96年ウインブルドンでベスト4をマーク。日本女子最高ランクの世界4位を記録した。96年シーズンを最後に引退。01年にレーシング・ドライバーのミハエル・クルムと結婚。08年春に11年半のブランクを経てコートに復帰した。その後はツアー最年長プロとして活躍、46歳を迎える2016年新シーズンに臨む。ツアー通算単8勝、複6勝。世界ランキング単182位、複98位(12月7日付)。エステティックTBC所属。

PROFILE
じんないきみこ(写真右)◎1964年3月12日生まれ。熊本県出身。小学校4年生からバドミントンを始める。中2・3時に全中(当時は団体のみ)で優勝、熊本中央女子高2年時にインターハイ個人複・団体で優勝し、3年時には3冠を達成。16歳でナショナルチーム入りし、その後、日本のエースへと成長した。実業団ではヨネックス、サントリーでプレー。主な戦績は88~90年全日本総合ダブルス優勝、90年ジャパンOP2位、91年台北OP優勝、全英OP2位、92年バルセロナ五輪にも出場(パートナーはいずれも森久子)。現役引退後はテレビやラジオのキャスター、また講演会や講習会などで幅広い活躍を続けている。

続きを読むには、部員登録が必要です。

部員登録(無料/メール登録)すると、部員限定記事が無制限でお読みいただけます。

いますぐ登録

タグ:

Pick up

Ranking of articles