「テニスをやめたほうがいいと何度も言われた」決勝進出のフェルナンデスが過去の苦労話を明かす [USオープン]

準決勝でアーニャ・サバレンカ(ベラルーシ)に負けず、観客を煽ったレイラ・フェルナンデス(カナダ)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の女子シングルス準決勝で、レイラ・フェルナンデス(カナダ)が第2シードのアーニャ・サバレンカ(ベラルーシ)を7-6(3) 4-6 6-4で倒して決勝に進出した。

「どちらも素晴らしいプレーをしたと思う。彼女は立ち上がりがよかったけど、自分も何とか我慢しながら簡単にはポイントを与えなかった。タイブレークではオフェンシブにいきながら、一発を狙い過ぎないように注意した。第2セットでもチャンスがあったけど、ミスが出てしまい、彼女がチャンスを生かした。第3セットは最後までいいバトルだった。何とかボールをひとつでも多く返し続けたことがよかったと思う」

 君が憧れているジュスティーヌ・エナン(ベルギー)は“Impossible is nothing(不可能なことはない)”という言葉を残しているけど、それが今の状況にピッタリ合っている?

「ええ、その通り。不可能なことはない。父がいつも言ってくれたように、私のすること、私のポテンシャルには限界がないと信じている。毎日一生懸命練習して、前に進み続けてきた。不可能なことはない。私のできることに限界はない。今すべてが上手くいっていることがとてもうれしい」

 ここまで成し遂げてきたことをどう表現する?

「信じられないことをしてきたと思う。何と言えばいいんだろう? 頭に浮かんで離れない言葉が“マジカル”。勝ち上がりがいいだけでなく、プレー自体も凄くいいから。私はただ楽しんでいるだけ。観客が喜んでくれることを提供したい。私がコートでしていることをファンが喜んでくれているのがうれしくて、私も喜びに溢れている。だから、“マジカル”と表現したい」

 ここまでの苦労を教えて欲しい。

「ひとつ明らかなのは、多くの人が私の力、家族、夢を信じてくれなかったこと。“プロ選手になどなれない”と言われてきた。“選手を諦めて学校に集中したほうがいい”とも言われた。ある先生は実際にテニスをやめなさいと言ってきた。でもその言葉を掛けてくれてよかったとも思っている。毎日そのフレーズが頭の中に響いて、“やらなくちゃ!”という気持ちにさせてくれるから。彼女に見せつけてやりたいの。自分が夢見てきたことを実現させるところをね。でも、それは氷山の一角に過ぎない。家族としてもっと多くの、大きな苦労を乗り越えてきた。例えば、母が家族を助け、私がテニスに集中できるようにするため、数年間私たちの元を離れてカリフォルニアへ行かなければならなかった。私にはお母さんが必要だったから、本当に辛かった。10歳から13歳でそばにいてくれる存在が必要だった。その頃はほとんど会えなかった。それでも実際に会うときは、近い存在なのに他人に会うような変な感覚もあった。今大会、母がスタンドから応援してくれて、楽しんでいるのは凄くラッキーだと思う。本当にいろんなことを家族で乗り越えてきた。今はすべてが上手くいっていて、安心している」

 何年生のときに先生にテニスをやめるように言われたの?

「たぶん6年生か5年生のとき。年度の終わりにクラス対抗のイベントがあったんだけど、時期がテニスの大会と重なったから参加できないと先生に伝えたの。彼女も凄く負けず嫌いだから、そういう言葉が出たのだと思う。でも、いま振り返れば自分の夢を叶えるために、なかなか頑張ってきたと胸を張れる」

 勝利の瞬間に屈み込んで顔を手で覆った瞬間は何を考えていたのか?

「何も考えてなかった。頭の中が真っ白だった。自分でも信じられなかった。そこからどっと感情が溢れてきた。ボールがアウトだったことで解放された。2時間以上戦い続けてすべてのハードワークが報われて決勝にいけたから」

 母と離れていた時期の影響によって、コート上での気持ちの強さ、決断力が身についたのではないか?

「最初は本当に辛かった。でもその頃コートに立つと、自分の夢を実現するために持てる力をすべて発揮して、テニスに集中していた。夢が叶えばまた家族で一緒にいられると信じていた。私一人で成し遂げたことではなく、両親、父のおかげでもある。彼はある日決断して、家族みんなでアメリカへ移り、母と一緒に過ごせる環境を整えてくれた。あまりに辛過ぎたから。でも、母をカリフォルニアへ行かせた決断はよかったと思っている。私は強くなれたから。家族も強くなった。皆で夢を叶えるために、この犠牲は絶対に報われるんだと信じていた。私たち家族に起きたことは結果としてすべてよかったと思う」

 母がカリフォルニアにいるとき、あなたと父はどこにいたの?

「私たちはカナダのラバルにいて、そこで練習していた」

 今大会は今後コート内外で前進するためにどんな力になる?

「自分のテニスを信じる力を大きくしてくれただけでなく、自分のポテンシャルに限界はないんだと、自分の目を見開かせてくれた。これらのトップ選手を相手に3セットを戦えること、互角に戦い、勝つことができると信じられる。この経験を経て、自分のテニスがどのレベルにあるのかを知ることができた。ここですべてのポイントを取ろうと全力で戦ったことを誇りに思っている。自分のメンタル面の強さが大きなプラスになってきた。今大会成し遂げたことにとても満足している。オフコートではすべての瞬間をとにかく楽しんでいる」

 フィリピンの人々も君の影響でテニスに興味を持っているという。母の祖国についてどんなことを知っている?

「教えてくれてありがとう。フィリピンの人々も応援してくれていると聞いてとてもうれしい。残念ながら私はフィリピンについて何も知らない。でもおじいちゃんのフィリピン料理は最高に美味しいの。カナダに戻ってトロントで彼に会ったら、彼のフィリピン料理を皆で楽しみたい。フィリピンの文化についてもこれからしっかり勉強したい」

 フェルナンデスは決勝で予選勝者のエマ・ラドゥカヌ(イギリス)と対戦する。(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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