チームの明暗分けたダブルス、最終試合に持ち込むも日本は敗退 [デビスカップ日本対スウェーデン]

写真はオープニングセレモニーの様子(写真提供◎日本テニス協会)


 男子テニスの国別対抗戦「デビスカップ by Rakuten」のファイナルズ予選「日本対スウェーデン」(3月4、5日/スウェーデン・ヘルシンボリ/室内ハードコート)の2日目は、ダブルスと初日から対戦相手を入れ替えたシングルス2試合が行われた。

 日本はマクラクラン勉(イカイ)/内山靖崇(積水化学工業)がアンドレ・ゴランソン/エリアス・イーメル(スウェーデン)に6-2 6-7(7) 5-7で競り負けたあとエースのダニエル太郎(エイブル)がドラゴス ニコラエ・マダラシュ(スウェーデン)に6-0 7-5で勝って勝負は最終試合にもつれたが、綿貫陽介(フリー)がイーメルに3-6 3-6で敗れて日本のファイナルズ進出は叶わなかった。

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 あれこれ悔やめばキリがない。しかしその中でも、3つのマッチポイントを握っていたダブルスを落としたことは殊更に悔やまれる。

 元世界ランク4位でもあるスウェーデンのロビン・ソダーリング監督は「ダブルスが決定的だった。ダブルスを取ったとき、いけると感じた」とのちに振り返ったが、初日のシングルスでダニエルにストレート勝ちして勢いのあるイーメル兄をマダラシュに代えて起用した作戦からもダブルス必勝への強い決意が伺えた。

 それでもマクラクラン/内山は快調に滑り出し、第1セットを6-2で先取した。しかし後手後手の展開となった第2セットは終盤に合計4度のセットポイントを凌いでタイブレークに持ち込んだものの、ここで3度あったマッチポイントを生かせなかった。

 前の週にプレーしたチャレンジャー大会で左ふくらはぎに肉離れを起こしていたという内山が、第2セット途中でそのケガを再発させたことも暗転に繋がった。結局スウェーデンが5度目のセットポイントをものにして最終セットへ。両者キープのシーソーゲームから内山のサービスだった第11ゲームでブレークを許し、勝負はほぼ決まった。

 第4試合のシングルスを戦ったダニエルにも、前日に喫した敗戦の後悔はあった。

「昨日の試合後にどしっときて、感情的には重い24時間だった」

 しかし、目の前の仕事は最終試合に望みを繋ぐこと。その状況への立ち向かい方を、「怖さとかプレッシャーとか余計なことを考えているという状態をまず自分で認めて、そこから逃げないでこの試合で何に集中するかを考えた」と明かした。

 第1セットは6-0と世界327位のマダラシュを寄せ付けず、第2セットは「相手がレベルを上げてきたときに引いてしまった」と1-4のピンチに立たされたが、そんな自分に対する怒りと冷静さをいいバランスでプレーに繋げて逆転に成功した。

 こうしてチームの命運を託されることになったのは23歳の綿貫だ。意外にも、試合前はさほどナーバスにはなっていなかったという。むしろ意気に感じていたくらいだ。

「デ杯のアウェーで2対2。こういう試合に勝ちたくて今までプレーしてきたといってもいい。そんな場面を過去の日本チームにも見て感動してきたので、今回はそこで自分がプレーできるという喜びのほうが試合前は大きかった」

 いい立ち上がりだったのは、その気持ちが大きく影響したのだろう。しかし第3ゲームで2度あったブレークチャンスを生かせず、第6ゲームでブレークを許すという展開の中で「少しプレーが乱れ始めたところからリズムを失ってしまった」と悔やんだ。劣勢に立たされる中で、〈喜び〉だった状況も〈重圧〉へと変わっていった。重圧の正体がわかったのは試合後だったという。

「チームの思い、応援してくれている皆さんの思いはやっぱり重かったんだと…。今まで感じたことのない重圧だったと思います」

 第2セットもいきなりブレークを許して第4ゲームでブレークバックに成功したが、取り戻しつつあった伸びやかなフォアハンドのショットも試合の流れを変えるまでには至らず3-2からはひとつもゲームを奪うことができなかった。

 エースのミカエル・イーメル(スウェーデン)がケガで戦えなかった状況で、終わってみればその兄であるエリアス一人に3敗を喫した。ソダーリング監督が「エリアスのおかげだ。集中力を切らさず、よく最後のシングルスまで戦ってくれた」と言えば、岩渕聡監督も「ナンバーワンが出られなくなったことは日本にとってはプラス材料だったが、自分たちがエリアスに力を出させてしまったのか、彼自身がホームの力も得て素晴らしいプレーをしたのか…。彼にやられたデ杯だったと思う」と肩を落とした。

 日本は9月にワールドグループⅠでの対戦に臨むことになる。組み合わせはまだ決まっていないが、勝てばまた来年このファイナルズ予選に戻ってくることができる。昨年も同じ状況ででパキスタンに勝って今回の切符を手に入れたのだが、パキスタン戦のメンバーの中では当時271位だった綿貫が最高位だった。どのチームもそうだが、ステージが下がれば国内の上位選手は離れる。ここが監督には苦しいところだろう。

 ダニエルは自身の試合後のリモート会見で「錦織君のケガが治って、西岡君もいてフルチームでいけたらファイナルズでもいい結果が残せるチーム。日本チームのポテンシャルに関しては結構自信がある」とポジティブに語ったが、そのポテンシャルを最大に発揮するためには少なくともこのファイナルズ予選に居続けなくてはならない。ベストメンバーでのチャレンジは、近い将来に叶うだろうか。(ライター◎山口奈緒美/構成◎テニスマガジン)

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写真提供◎日本テニス協会

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