ラケットを叩きつけ、コートで転倒した大坂が難局を打開し4回戦へ [オーストラリアン・オープン]
今年最初のグランドスラム「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月14~27日/ハードコート)の大会6日目、女子シングルス3回戦。
USオープン・チャンピオンの大坂なおみ(日清食品)は第1セットにラケットを叩きつけたことで審判から警告を受け、次のセットでベースライン近くで転んだときには、体に問題はないか尋ねられた。
第4シードの大坂は、やりずらいトリッキーなショットを使ってくる第28シードのシェイ・スーウェイ(台湾)を最終的に5-7 6-4 6-1で倒す前に、一時は敗戦まであと2ゲームと迫り、やや混乱した3回戦を潜り抜けた。
試合後のオンコートインタビューで大坂は、ラケットを叩きつけて審判に警告を食らったことについて観客たちに謝罪し、起きなかったこととして忘れて欲しいと頼んだ。
「ここから、学べるように願うわ」と彼女はのちに語った。
「私は多くのことを内に抑え込む傾向があるの。でもあの瞬間は、(ため込んだ感情を)解放するほうが、ただ内側に秘めておくよりも楽だと感じた」
大坂が一瞬動きを止め、微笑み、33歳のシェイのやり方を把握したのは、第2セットでワンブレークダウンとなってからだった。
両サイド両手打ちのシェイは、スピンやスライス、ドロップショットなど多彩な球種やリズムを混ぜてくる技巧派の選手だ。
シェイは以前にも、グランドスラム大会でトップ10を倒したことがある。昨年のオーストラリアン・オープンではガルビネ・ムグルッサ(スペイン)を下して4回戦に進出し、ウィンブルドンでは、世界1位のシモナ・ハレプ(ルーマニア)を破っていた。
大坂がフラストレーションをポジティブなエネルギーに転換したのは、シェイが第2セット4-2からの自分のサービスゲームで40-0とし、5-2リードまであと1ポイントと迫っていたときだった。
そこから勢いに乗って5ポイントを連取した大坂はその後、試合の残りでわずか1ゲームしか落とさなかった。
「悪い意味で言ってるんじゃないけど、私は試合で彼女が奇妙なことをたくさんやってくるだろうと知りつつ、試合に入っていったの」と大坂は微笑みながら明かした。
「でも、彼女は本当にいいプレーをしていて、私は圧倒されてしまったのだと思う。それから、第2セットの序盤の私は、必ずしも自分のテニスではないことをしようとしていた」
「それからしばらくして、“私はグランドスラム大会でプレーしているのだ”と考え始めた。悲しい気持ちでいるべきじゃない。私は本当に優秀な選手と対戦しているのだから、ただプレーする時間を楽しみ、すべてのポイントで自分にできる最高のプレーをすることにすべてのエネルギーを注ぎ込むよう努めるべきなのだと」
そこからの彼女の唯一の“つまずき”は、本物の“つまずき”だった。彼女は、キープすれば第2セットを取るという自分のサービスゲームの出だしに足首を捻り、コートに倒れてしまったのだ。
審判のマニュエル・アブソリューは、大丈夫かと叫んで尋ねた。彼女は最初、「ノー」と答えたが、それから親指を上げて大丈夫だと合図した。
「ちょっと可笑しかったわ」と彼女はその場面を振り返った。
「彼(主審)は、『なおみ、大丈夫か?』と聞いてきて、私は大丈夫だったんだけど、『ノー(いいえ)』と答えた場合の彼の反応を見たかったの」
21歳の大坂の名声は、USオープン決勝でセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)を破って以来、急激に高まった。彼女はいまだ、自分のイメージを育んでいるところであり、ユーモアはそのカギだ。
昨年9月のUSオープンまで、昨年のメルボルンパークでの進撃がグランドスラム大会での彼女の最高のパフォーマンスだった。彼女は最低でも2週目に進むことができなければ、それを失敗だとみなしていたことだろう。
「自分がこのように戦ったことに満足している」と大坂は言った。
「私にとってそれは、上達させることができるとずっと思っていた、もっとも大きなことのひとつなの。というのも以前の私には、ある意味で敗戦を受け入れてしまうようなところがあったから」
大坂は、第13シードのアナスタシア・セバストワ(ラトビア)に対する4回戦への試合に向け、迅速に態勢を立て直さなければならないと言った。セバストワは第21シードのワン・チャン(中国)を6-3 6-3で破って勝ち上がった。
大坂は、セレナとカロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)らのヒッティングパートナーを歴任した経験を持つサーシャ・バインの指導の下で、着々と上達している。しかし彼女はまた、特にボカラトンのクリス・エバート・アカデミーでトレーニングしているときには、テニスの偉人のひとりからのアドバイスにもオープンな姿勢で耳を傾けていた。
エバートがどのような英知の言葉を与えてくれたのかと聞かれた大坂は、そこにいたずら心を発揮するチャンスを見出した。
「別にサーシャをからかいたい訳じゃないんだけれど、ある意味で、彼女の言葉にもっと耳を傾けるべきだと感じるの。なぜって――こんなこと言ったら嫌われちゃうわね――なぜって、彼女(エバート)がやってのけたことを見てきたし、彼女は(ハイレベルで)プレーしてきたし…」
「だから、ちょっぴり余計に信用できる感じがするの」
バインとの次の練習は、楽しいものになりそうだ!(C)AP(テニスマガジン)
※写真は大坂なおみ(日清食品)
撮影◎小山真司
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