マレーが涙を浮かべ、オーストラリアン・オープンが最後の大会になる可能性を示唆
アンディ・マレー(イギリス)は変わらず、腰の故障に引退を強いられる前に、もう一度ウインブルドンでプレーしたいと願っている。しかし今のところ、彼が出場を約束しているのはオーストラリアン・オープンだけだ。
感情を揺さぶられる記者会見だった。涙を浮かべたマレーは、会見を始めようとしたすぐあとに部屋から去らなければならなかった。再開してからも、落ち着くために数回休止することを必要とした。彼は、来週に始まるオーストラリアン・オープンの1回戦でプレーすると確言しているが、そのあとどのくらい長くプレーできるかはわからないと語った。
31歳のマレーは、“最後にもう一度だけウインブルドンでプレーする”ということをメインゴールに、シーズンオフの練習を行ったのだと明かした。ウインブルドンでの2013年のタイトルによって、彼は77年ぶりのイギリス人チャンピオンとなったが、今はそこまで行きつけるか確信が持てないでいる。
「僕はまだ、ある程度のレベルでプレーすることはできる。それは、僕がプレーしたいと願うレベルではない」と彼は言った。
「でもまた、ただそれだけじゃないんだ。痛みが、本当に強すぎるんだよ」
「こんな形でプレーを続けたくない。状況をいい形にもっていくためにほぼすべてのことを試し、トライした。でもうまくいかなかった」
グランドスラム大会で3度優勝した経験を持つマレーは、メルボルンパークで第22シードのロベルト・バウティスタ アグート(スペイン)に対して大会を始める。シーズン最初のグランドスラム大会の本戦は、月曜日に口火を切るのだ。マレーはこれまでに5度、オーストラリアン・オープンの決勝に至ったが、一度も優勝したことはない。
元世界ランク1位のマレーにとって1回戦をクリアすることは、2019年の大きな成果となることだろう。昨年1月に右腰の手術を受けて以来、昨年を通して12試合しかプレーできなかったため、マレーはランキングを230位にまで落としている。
彼は先週のブリスベン国際で今季を始め、ジェームズ・ダックワース(オーストラリア)との初戦に勝ったが、2回戦でダニール・メドベデフ(ロシア)にストレートで敗れていた。彼はその試合中にもポイント間に足を引きずり、コート内を自由に動き回ることに苦労するなど、目につく故障の影響の兆候を見せていた。
彼は木曜日にメルボルンパークで、長年の友人で世界ナンバーワンのノバク・ジョコビッチ(セルビア)と略式の練習試合を行ったが、2ゲームしか取ることができなかった。
マレーは、2012年USオープンで優勝した際に、グランドスラム大会におけるイギリス人男子選手の不毛の時期に終止符を打ち、翌年にはウインブルドンで、この威信あるグラスコートの大会で優勝した1936年のフレッド・ペリー以来のイギリス人となった。彼はまた、2012年ロンドン五輪と2016年リオ五輪で優勝し、オリンピックにおいて2大会連続でシングルスの金メダルを獲った唯一のテニスプレーヤーとなった。
長い間、ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ジョコビッチとともに男子テニスの『ビッグ4』とみなされてきたマレーは、痛む腰の問題に対処しようと努めた20ヵ月を経て、この4人の中でもっとも若くして引退する者となる可能性が高い。
37歳のフェデラーは、現在オーストラリアで3年連続、総計では7度目のタイトル獲得に挑戦しようとしているところだ。31歳のジョコビッチもまた、メルボルンで7度目の優勝を狙っている。世界2位で32歳のナダルは、キャリアをあと数年延ばせるということに自信を持っている。
マレーは、自分のキャリアが数ヵ月の間に終わるかもしれないと知りつつ、2019年シーズンの準備を行っていた。先月のトレーニング・プログラムの間に、彼は自分のサポートグループに、痛みはあまりに強くなっており、引退の日付を決めなければならないと話していたのだという。
「僕は自分のチームの皆と話し、僕はこのようなことをずっと続けることはできない、終着点をもたなければならないと告げた。というのも僕は、いつ痛みが止まるのかまったくわからないままプレーしていたからなんだ」と彼は金曜日の記者会見の際に話した。
「僕は、僕のチームに、『ウインブルドンまで何とかいけると思う』と言った。そこが、僕が辞めたいと…プレーを止めたいと思っている場所なんだ」
マレーはふたたび涙をこぼしながら、「でも、それができるかどうかも、はっきりわからない」と言い添えた。
「この痛みの中で、もう4、5ヵ月プレーすることができるか確信が持てない」
世界中のプレーヤーとコーチたちはマレーを励ますために集結した。キャリアを通して故障と格闘してきたフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)はツイッターに、自分のサポートの気持ちを伝えるメッセージを投稿した。
「アンディ、たった今君の記者会見を見た。どうかトライするのをやめないでくれ。戦い続けてくれ。君は、自分自身が望むときに引退するに値する選手だ」
コメンテイターのダレン・ケーヒル(オーストラリア)は、彼のテニスへの貢献を讃え、プレーヤー仲間のグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)も同様だった。
マレーは、テニスのトップレベルに戻るための方法というより、自分の日々の生活の質を向上させるために、もう一度、腰の手術を受けることを考慮しているとも言った。
「もう一度手術を受ける、という選択肢もある。僕が以前に受けたものよりも少し深刻な手術を。人工関節を入れるという手術だ」と彼は説明した。
「それが今、僕が真剣に考慮していることなんだ。何人かのアスリートはその手術を受け、競技に戻っている。でも僕がこのような手術を受ける理由はプロのスポーツ界に復帰するためではなく、より質の高い日常生活を送れるようにするためなんだ」
マレーは、長寿のダブルスの名手であるボブ・ブライアン(アメリカ)に、似たような手術からの回復について長く話をしたと明かした。
「僕は右腰を深刻に痛めた。いうまでもなく、君たちは僕がテニスコートを走りまわり、ポイント間に歩いているのを見ている。そしてもちろん、それがあまりいい具合に…心地よさそうに見えていないことが、僕には分かっている」とマレーは言った。
「でも、毎日の生活で四苦八苦している、ちょっとしたことがあるんだ。靴を履いたり、ソックスを履いたり、というようなことなのだが、痛みなく、そういうことをできるようになれたらいいと思うよ。手術を受けることの主な理由は、それなんだ」(C)AP(テニスマガジン)
※写真は記者会見で涙を見せたアンディ・マレー(イギリス)
MELBOURNE, AUSTRALIA - JANUARY 11: Andy Murray of Great Britain speaks during a press conference ahead of the 2019 Australian Open at Melbourne Park on January 11, 2019 in Melbourne, Australia. (Photo by Scott Barbour/Getty Images)
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