2年前のトラウマよさらばーーチリッチがコントロールを保ち、クロアチアがデビスカップ優勝
前回のデビスカップ決勝の辛い敗戦のあと、マリン・チリッチ(クロアチア)にとって今回は、失望の展開はなかった。
2年前のザグレブで、クロアチアがアルゼンチンに対して2勝1敗でリードしていた最終日、チリッチはフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)から2セットを先取していた。しかし、そこからチリッチのテニスは崩れて最終的にアルゼンチンは挽回を果たし、その決勝に勝った。
しかし、北フランスでのチリッチは、カムバックを目指していたフランスを相手に微塵の希望も与えなかった。
リールのサッカースタジアム内に設置された室内クレーコートでの敵対する観客の前で、元USオープン・チャンピオンは情け容赦なく、同時に冷静だった。
彼の機能的なプレーは、ルカ・プイユ(フランス)を7-6(3) 6-3 6-3で破り、それがクロアチアのフランスに対する3勝1敗の勝利を決定づけた。
双方のチームが、消化試合となった5試合目はプレーしないということで同意した。
チリッチは、デル ポトロに対する逆転負けの思い出に気持ちを乱されることはなかったというが、自分の受賞リストに、ついにデビスカップの優勝杯を加えられたことにほっとしている、と言った。
「すでによく眠れているから問題はないが、今週これだけいいプレーができたことをうれしく思う」と30歳のチリッチは言った。
2年前のアルゼンチンは、反撃して挽回することに成功したが、フランスは必要な武器を擁していなかった。フランスは2日目のダブルスに勝ったが、チリッチとボルナ・チョリッチ(クロアチア)に対する3つのシングルスのすべてで、ストレートで叩きのめされることになった。
「ボルナと僕の統計を見てみるといい。3試合を通し、僕らは一度もサービスゲームを落としていない。このことは僕らのレベル、僕らがどんなプレーをしたかを物語っている」とチリッチは言った。
彼はデビューの12年後に、ついにこのチームで成功を味わうことができた。そして自身とチョリッチが、2018年の終わりにきて特に調子を高めていた事実を指し、「僕らは、適切な時期にすばらしい調子に至ることができた」と言った。
チリッチはチームリーダーのステイタスに恥じない働きを見せた。プイユを倒したあと、彼はコート上でクロアチア・チーム全員に囲まれ、クロアチアの国旗を肩にかけた。同国のコリンダ・グラバーキタロビッチ大統領は、彼を温かく抱擁した。
「世界チャンピオンになるというのは、毎日起こることじゃない」とチリッチは言った。
「僕らにとって、この国にとって、夢の実現だ。僕らは本当に情熱的だ。ファンたちを見てみればわかるだろう。クロアチアでも、すごいことになるだろうと思う」
クロアチアは2005年の勝利に続いて2度目の優勝を遂げ、そうすることでフランスの11回目の優勝を阻んだ。
「彼らは我々を叩きのめした」と、フランスのヤニック・ノア監督は言った。「彼らは我々に、一度もサービスブレークを与えなかった」。
決勝が、伝統的フォーマットでプレーされるのは、これが最後となる。来年から、この男子のトップチーム大会は、シーズン末に中立の会場で18チームによるトーナメント形式で行われることになるのだ。
ピエール ユーグ・エルベール/ニコラ・マウ(フランス)が土曜日のダブルスに勝ったあとも、初日のシングルスで2敗した開催国フランスは、1勝2敗の劣勢に立たされていた。彼らが0勝2敗から挽回して優勝した1939年以来の代表となるためには、最終日のシングルスの双方に勝つ必要があった。
1939年のオーストラリアは決勝で0勝2敗の劣勢を覆し、アメリカを倒して優勝していたのだ。しかし彼らの挽回の希望は、すぐについえることになった。
世界7位のチリッチは、第1セットでファーストサービスが思うように入らず苦労していたが、プイユがいいスタートを切りながら次第に色褪せていく中、徐々にリズムを取り戻していった。
勝負を5試合目にもち込もうとする試みの中で、フランスのヤニック・ノア監督はラインナップを変更し、プイユがジェレミー・シャルディ(フランス)に変わってこの日最初のシングルスをプレーした。しかし、この日のプイユは本調子のときの彼からは程遠く、繰り返しバックハンドのミスをおかした。プイユは総じて44本のアンフォーストエラーをおかし、対するチリッチはミスを29本にとどめた。
昨年、ベルギーに対して勝利を決定づける勝ち点を獲り、フランスの史上10回目の優勝を決める立役者となったプイユは、強いサービスのおかげもあってスコアでついていき、何本かの賢いドロップショットでチリッチを驚かせた。
しかし、チリッチはタイブレークでそのプレーレベルを引き上げ、4ポイントを連取してセットを終わらせた。その中でも強烈なフォアハンドのパッシングショットは見事で、プイユはただ茫然と見送ることしかできなかった。
プイユのプレーレベルはその後、劇的に落ち、反対にチリッチは高いプレーレベルをキープ。第2セットでも早々にブレークを果たして4-2とリードした。一連のいいサービスを放ったプイユは、第8ゲームで4つのセットポイントをセーブすることに成功した。しかし、チリッチは次の自分のサービスゲームをきっちりキープし、見事なフォアハンドのクロスでセットを締めくくった。
大声で声援を送る地元フランスの観客たちのサポートにも関わらず、第3セットのプイユは力なく見えた。彼は第5ゲームでまたもバックハンドをミスしてサービスをブレークされ、結局、それが運命を封じた。
5-3からのゲームでプイユはマッチポイントを2度セーブしたが、チリッチが見事なロブを放ったときには、ただそれを見送ることしかできず。これが2度目のブレークを生んで試合に終止符が打たれた。
「これは、我々がこれまで手にした中で最強チームのひとつだ」とクロアチアのジェリコ・クラヤン監督は言った。
「デビスカップ代表チームのベンチを預かるようになって7年になるが、今ここにいることを名誉に思う。私のシングルス選手たちは、一度もサービスを落とさなかった。それは素晴らしい成果であり、我がチームが生み出した質の高さを示すものだ」(C)AP(テニスマガジン)
※写真はクロアチア・チーム、右からジェリコ・クラヤン監督、フランコ・シュクゴール、イバン・ドディグ、マリン・チリッチ、ボルナ・チョリッチ
LILLE, FRANCE - NOVEMBER 25: Team Croatia with captain Zeljko Krajan, Franko Skugor, Ivan Dodig, Marin Cilic, Borna Coric celebrates winning the Davis Cup during the trophy ceremony on day 3 of the 2018 Davis Cup final between France and Croatia at Stade Pierre Mauroy on November 25, 2018 in Villeneuve d'Ascq, near Lille, France. (Photo by Jean Catuffe/Getty Images)
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