かたや、ITF(国際テニス連盟主催大会)5大会優勝を誇る、今大会の第1シード。

 かたや、ITF優勝は一度で、2.5万ドルのグレードでの決勝は今回が初のノーシード選手――。

 数字上の状況としては、24歳の鮎川真奈(エームサービス)が挑戦者で、20歳の清水綾乃(Club MASA)は迎え撃つ立場である。だが、小学生時代に鮎川の祖父母が経営するテニスクラブに通い、4歳年長の鮎川を「凄く強いお姉さん」と仰ぎ見ていた清水には、第1シードという気負いはなかったという。

「前回の対戦でも負けているし、自分が向かっていく気持ちだった」

 それが、清水の胸中だった。

 対する鮎川には、決勝ゆえの緊張があったという。ただ自身がやるべきプレーに、迷いを抱くことはない。

「守って守りきれる相手ではない。自分の出来ることをやっていこう」

 その「出来ること」とは「攻めること」。スキの少ない相手を、自ら崩す策を鮎川は思い描いていてコートに立った。

 ただいざ試合が始まると、鮎川は清水のプレーに圧倒される。フォアとバックの両サイドから強烈なショットを繰り出す清水は、左右に打ち分けオープンコートを作っては、迷わずウィナーを打ち込んできた。瞬く間に2つのブレークを奪われ、スコアは0-3に。

「これは勝てない……。0-6 0-6で負けないようにしないと」

 そんな焦燥が、鮎川の胸に押し寄せた。

 一方の清水には、この時点でも、そこまでリードしているという思いは無かったという。「相手にもチャンスはあったし、幾つかの大切なポイントを自分が取っただけ」。逆に、今は外れている相手の強打が、入りだしたら適応するのは難しいかもしれない……そんな不安要素を、どこかに抱えながらのリードだった。

 その不吉な予感は、半ば的中する。鮎川のフォアの強打が深く刺さりだすと、打ち合いの中で押される事態が増え始めた。3ゲーム連取を許し、スコアは4-3に。それでも、「ここは取りたい」と気持ちを引き締め続くゲームをキープしたことで、相手に傾きだした流れを堰き止める。第1セットは、清水が鮎川の追撃を振り切った。

 これで清水が勢いに乗るかと思われたが、第2セットは立ち上がりから鮎川が攻勢に出る。第1ゲームをブレークし、中盤までは完全に鮎川が支配した。

 そして鮎川サーブの、ゲームカウント4-3の局面。「ここが勝負だな」と直感した清水は、鮎川のサーブを確実に返すことに集中する。

 その清水のプレー向上に圧迫感を覚えた鮎川は、やや無理をして際どいコースを狙っては、結果的にミスを重ねた。

 狙い通り数少ないチャンスをモノにした清水は、手繰り寄せた主導権を最後まで手放さない。最終スコアは、6-3 6-4。終わってみればどちらのセットも、終盤の第8ゲームが勝負の分水嶺となった。
 
 試合後の表彰式で、鮎川は「ここがスタートライン」だと断言した。ベスト4に入った先週の牧之原大会と合わせ、キャリア最高の2週間を終えた今、彼女は「ここで満足したら次が見えなくなる。まだここで終わりたくないというのが正直な気持ち」だと言った。

 ここが鮎川のスタートラインなら、清水にとってこの優勝は、次のステージへの足がかりだろう。今季、ウインブルドンとUSオープン予選に出たことで、清水は「グランドスラムの本戦に出たい」との情熱を一層深めた。

「あそこで勝つために、この大会にも出ている。全部つながっていると思っているので」

 それが清水の、率直な思いだ。

 決勝を戦った二人はともに、この試合から……この大会から何かをつかみ、そしてそれぞれの道を進む。

レポート◎内田暁(大会オフィシャルライター)

画像: 鮎川真奈(エームサービス)(写真提供◎浜松ウイメンズオープン実行委員会、撮影◎てらおよしのぶ)

鮎川真奈(エームサービス)(写真提供◎浜松ウイメンズオープン実行委員会、撮影◎てらおよしのぶ)

※トップ写真は清水綾乃(Club MASA)
写真提供◎浜松ウイメンズオープン実行委員会
撮影◎てらおよしのぶ

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