ノアのミッションは「〈敗北の文化〉を終わらせることだった」 [デ杯決勝フランス対ベルギー]
使命(ミッション)は果たされた。
2年前にふたたびフランス・デビスカップ監督に任命されたとき、ヤニック・ノアは、はっきりしたプランを持っていると言った。
元フレンチ・オープン優勝者のノアは、それを実行に移し、デ杯トロフィーを16年ぶりにフランスに持ち帰った。
のちに歌手としても成功を収め、フランスではカリスマ的存在であるノアは、決勝でベルギーに対して3勝2敗の勝利をもってフランスに10度目のデ杯タイトルをもたらした。
1991年、1996年にデ杯タイトルを獲得したあと、監督として彼にとって3度目の優勝へとチームを導いたノアは、成功のカギは、フランス・チームをとらえていた〈敗北の文化〉を終わらせることだったと言った。
「過去16年にわたり、皆が負けることに慣れてしまっていた。私は以前に、一度もそんなものを感じたことはなく、そのことに打ちひしがれたよ。準決勝の間に、私はそのことにはっきりと気づいた。非常に辛かったよ」。
今年、フランスはタイトルまで比較的なだらかな道を進んだ。反対にノアの前任者、アルノー・クレメンは、これ以前の最後の決勝進出だった2014年の対スイス戦で、ロジャー・フェデラーやスタン・ワウリンカのような強敵に対処しなければならなかった。
しかし今年のフランスは、日本、イギリス、セルビアに対して勝利をおさめたとき、ノアのもとにいた選手たちは錦織圭(日清食品)、アンディ・マレー(イギリス)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)という、それぞれの国の最強の選手たちが不在の中で実りを引き出した。決勝ではダビド・ゴファン(ベルギー)を例外に、ほかのベルギーの選手たちはこの任務に十分な実力を備えていなかった。
1991年にノアはフランスがデ杯史上最大の番狂わせをやってのける手助けをしている。彼らは前年度覇者のアメリカを倒し、59年ぶりのタイトルを手に入れたのである。
反対にこの日曜日には、勝利以外のすべてが失敗とみなされていたことだろう。
「今、私たちはその成功の波に乗っていくことになる」とノアは言った。もっとも彼がデ杯監督の座にとどまるか否かは、まだはっきりしていない。
ピエール・モロワ・スタジアムの室内ハードコート上で、勝負を決めるシングルスに勝って、フランスのタイトルの干ばつを終わらせたのは、世界18位のルカ・プイユ(フランス)だった。プイユは、日曜日の第2シングルスでスティーブ・ダルシー(ベルギー)を6-3 6-1 6-0で一方的に下し、デ杯決勝での3連敗に終止符を打った。
初めてデ杯で勝負を決める5試合目をプレーしたあと、プイユは「言葉は必要ない」と言った。「ただこの雰囲気と感動を見てみるといい。僕らはこのトロフィーを心から欲し、16年ののちに、ついに手に入れたんだ」。
プイユは金曜日のゴファンに対する第1シングルスを含め、これに先立つデ杯での2試合に敗れていたが、対ダルシー戦では完全に状況をコントロール下に置き、一度もブレークポイントに直面することはなかった。
「金曜日に僕をこきおろした人々にとってはよくなかっただろうけど」とプイユは言った。「僕は今日、コート上のすべてを打ち壊したかった」。
フランスはデ杯優勝回数で、アメリカ(32)、オーストラリア(28)に続き、イギリスとタイの3位に浮上した。
フランスのこれに先立つ優勝は2001年で、2002年、2010年、2014年には決勝で敗れていた。
ゴファンはそれに先立ち、スコアを2勝2敗に持ち込んで、ベルギー初優勝の望みをつないでいた。日曜日の第1シングルスで、ジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)を7-6(5) 6-3 6-2で下していたのだ。
リールにほど近い町で生まれたプイユは、持ち前のパワフルなグラウンドストロークを使って、ダルシーを崩した。ダルシーは、ここまでデ杯の5番目の試合で5戦5勝を誇っていたが、この試合では一度もいい波に乗ることができず、試合を通して四苦八苦しているように見えた。
第1セットのプイユは、ダルシーのミスを最大限に活用。第2ゲームでの最初のブレークポイントをものにし、自分のサービスからは8ポイントしか落とさずにセットを先取した。
その闘志で知られるダルシーではあるが、この試合での彼は力不足であるように見え、プイユのフォアハンドの猛攻に押されて、第2セット第3ゲームでふたたびサービスをブレークされた。もう1つのブレークでプイユは4-1とリードし、そこからはもう決して振り返ることなく、12ゲームを連取して第2、3セットを取った。
勝利が決まり、チームメイトたちがコートに駆け込んでくる中、プイユは仰向けに倒れて泣いた。それから、ノアを含めたフランス・チーム全員がスタジアムでウイニング・ランを行った。
「ルカが地元の観衆の前で勝つということは、運命に定められていたのだろう。本当に素晴らしい」とノアは言った。
決勝の最強プレーヤー、ゴファンはツォンガを印象的なまでに粉砕することで、勝負を第5試合にまで持ち込んだ。
セットを落とすことなく第1シングルスにも勝った世界7位のゴファンは、素晴らしいパフォーマンスを見せてフランスのトッププレーヤーを倒した。
第1セットでサービスの調子が非常によかったツォンガは、ゴファンのサービスで6度ブレークするチャンスを手にしたが、ゴファンはそのつど強烈なグラウンドストロークで困難を切り抜け、重要なポイントで“鉄”のメンタルを見せた。
ゴファンは5-6からのセットポイントをフォアハンドのウィナーでしのぎ、ダウン・ザ・ラインにバックハンドを打ち込み、自らがつかんだ最初のセットポイントをものにした。
「第1セットで僕はいくつかのチャンスを逃してしまった。もっとしっかり好機をとらえなければならなかった」とツォンガは悔しさをにじませた。「それ以降、事は難しくなって、彼はよりリラックスしてのびのびとプレーし始め、僕にできることはあまりなくなってしまった」。
ゴファンは、第2セットでツォンガがダブルフォールトをおかしたゲームをものにして4-2とリードし、ツォンガにプレッシャーをかけて多くのミスを強いた末、第3セットで2度サービスをブレークした。
ここ最近素晴らしい調子を誇っているゴファンは、先週ロンドンで行われたATPファイナルズでは、ラファエル・ナダル(スペイン)とフェデラーを倒した上で、準優勝していた。
疲労と、膝に問題を抱えていたにも関わらず、ゴファンはロンドンでの調子をリールにも持ち込み、金曜日には、ツォンガがダルシーを倒して1勝1敗に持ち込む前にプイユを簡単に片づけた。そしてフランスが土曜日のダブルスで勝利をおさめ、最終日を迎えていた。(C)AP(テニスマガジン)
※トップ写真はデ杯決勝表彰式
LILLE, FRANCE - NOVEMBER 26: France team celebrate after winning the Davis Cup Final during day 3 of the Davis Cup World Group final between France and Belgium at Stade Pierre Mauroy on November 26, 2017 in Lille, France. (Photo by Sylvain Lefevre/Getty Images)
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