異例の「全日本」開幕もトップシードのモチベーションは最高潮 [三菱全日本テニス選手権95th]

「全日本は全日本」
 今年も「全日本」が幕を開けた。「三菱全日本テニス選手権95th」は初日となった10月28日に男女シングルス1回戦各16試合が行われた。

 2020年の「全日本」は異例のフォーマットとなった。有明テニスの森公園の「インドア」ハードコート中心の開催となったため、新型コロナウイルス感染拡大の状況も鑑みて男子シングルス(32ドロー)のみ、5日間の短縮日程での開催に。1回戦はファイナルセット10ポイントマッチタイブレークで、2回戦まではセルフジャッジ、ボールパーソンの配置は決勝のみとなっており、そして何より無観客で行われている。

 そんな中でもトップシードは順当なスタートを切った。昨年は惜しくも準優勝に終わった男子第1シードの清水悠太(三菱電機)は片山翔(伊予銀行)に6-7(12) 6-3 [10-3]の逆転勝利。第1セットを長い長いタイブレークの末に落としながら、マッチタイブレークに持ち込んで鮮やかに差し切った。「最初は舞い上がってミスが多かった」というが、「ボールが止まる」という室内ハードのサーフェスに徐々にアジャストしながら、あえてアタックのペースを落とすことで流れを引き戻していった。

「全日本は毎年緊張する。そんなものだと思ってやっている」。清水にとっては昨年までとはがらり環境が変わっても、「全日本は全日本」ということのようだ。涙の準優勝に終わった昨年のリベンジに向け、さらにモチベーションを上げていくはずだ。

「失うものはない」トップシード
 女子のトップシードは6年ぶりの出場で初戴冠を目指す世界ランク71位の日比野菜緒(ブラス)。1回戦では小関みちか(橋本総業ホールディングス)に6-2 6-3と寄せ付けず、日本女子ナンバ-2の力を見せつけた。


好スタートを切った日比野

 日本代表に強い思い入れを持つ日比野にとって、「全日本のタイトルはフェドカップ(ビリー ジーン・キング・カップに改称)で戦うのと同じくらい大きい」という。主戦場がワールドツアーとなったこともあってこの5年は参戦が叶わなかったが、「ずっと出たいと思っていた」。

 近年、全日本は一度優勝すれば「卒業」という風潮がより強くなり、日本のトップ選手たちが集結する場にはなっていなかった。日比野は「自分も出ていなかったのだが」と前置きしつつ、「トップが出ていないことに寂しさを感じていた。今は世界ランクも高くなったので、出場することで少しでも(全日本を)盛り上げられたという気持ちもあった」と話す。

 とはいえ、過去3度の出場で2回戦止まりという現実もある。「全日本では成績が出ていないので、失うものはない」という気持ちを最後まで保ち続けることができれば、やはり女子は日比野が優勝候補の大本命ということになるだろう。

 また開催発表時の8月以降、経費削減と新たな協賛企業の獲得などもあり、大会の賞金総額が当初より704万円増額されて1824万円となったことが発表されている。優勝賞金320万円、準優勝賞金160万円など、前回大会の80%の賞金まで増額された。

 大会2日目の29日は男女シングルス2回戦が行われ、早くもベスト8が出そろうことになる。

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取材◎杉浦多夢 写真◎菅原 淳

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