ビルズ&セイバーズのオーナー令嬢ペグラがグランドスラム8強の舞台へ躍進 [オーストラリアン・オープン]
アメリカ・ニューヨーク州バッファローを拠点にするNFL(プロアメリカンフットボールリーグ)とNHL(プロアイスホッケーリーグ)のオーナーの娘であるペグラは勝利を決めたあと、コートサイドのカメラのスクリーンに「ハーイ!ママ、パパ。次のラウンドで会いましょう、JEN B」と走り書きした。
それは両親への挨拶であるだけでなく、その月曜日にロッド・レーバー・アリーナでの次の試合で4回戦を戦うことになっていたペグラの友人であるジェニファー・ブレイディ(アメリカ)へのメッセージでもあったのだ。
そして第22シードのブレイディが試合に勝って準決勝行きをかけてペグラと対戦することが決まったあと、彼女はブルーのマーカーを使って「受けて立つわ!」と書いてこれに応えた。
「これは私たちふたりにとって、大きなチャンスよ」とペグラは言い、彼女とブレイディが女子テニスの国別対抗戦のビリー ジーン・キング・カップ(旧フェドカップ)でアメリカ代表としてダブルスをプレーしたあとに親しくなったことを振り返った。
「私はここにいられるだけでも十分幸せよ。彼女はこのところいい活躍をしており、トッププレーヤーの一員としての自分の地位を確立しつつあるわ」
世界ランク61位のペグラが同5位のスビトリーナをフルセットで下したあと、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)でカレッジテニスをプレーしたブレイディは第28シードのドナ・ベキッチ(クロアチア)を6-1 7-5で倒した。
ブレイディは1月にオーストラリア入りしたあと、同じ便に新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者が乗っていたことが発覚したため練習も含めいかなる理由でもホテルの部屋を離れることを許されない『ハードロックダウン』を課された72人の選手のひとりだった。
「多くの人たちが文句を言っていたけど、私はそんなことは言わないと自分に言い聞かせたの。私が14日間ホテルの部屋に閉じ込められているということよりも、世界ではずっと悪いことが起きているんだから」とブレイディはコメントした。
1日前に勝ち上がりを決めていた第10シードのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)にブレイディとペグラが合流し、同種目のベスト8に少なくとも3人のアメリカ人選手が残ることになった。その時点ではそれが4人になる可能性もあったが、シェルビー・ロジャーズ(アメリカ)はナイトセッションで第1シードのアシュリー・バーティ(オーストラリア)に3-6 4-6で敗れた。世界ナンバーワンのバーティは準々決勝で、第18シードのエリース・メルテンス(ベルギー)を7-6(5) 7-5で破って勝ち上がった第25シードのカロリーナ・ムチョバ(チェコ)と対戦する。
「かなり凄いことだわ。私たち皆が壁を破って突き進めること願うばかりよ。この1年くらい、私たちは皆で刺激し合って本当に切磋琢磨してきたの。お互いに口に出してはいなかったけど、皆がそれを感じていると思うわ」とペグラは自分を含めた仲間たちの活躍を喜んだ。
彼女は今、ブレイクと呼べる進撃の真っ最中だ。
グランドスラム大会でキャリアを通してマッチ3勝という戦績でこのオーストラリアン・オープンに乗り込んできたペグラは、メルボルン・パークでマッチ6勝目を挙げた。その中にはオーストラリアン・オープン優勝歴2回のビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)、2011年USオープン覇者のサマンサ・ストーサー(オーストラリア)に対する勝利も含まれている。
ビーナス・ウイリアムズ(アメリカ)のコーチだったデビッド・ウィット(アメリカ)の指導を受けているペグラにとって同じように意味深いのは、彼女がトップ10選手に対してこの日まで6戦全敗だったということだ。
元選手のウィットは、自信を高めたことがペグラの上達に大きく影響していると説明した。彼女は家族が所有するNFLチームでクォ―ターバックを任されているジョシュ・アレン(アメリカ)を主軸にここ4シーズンで3度プレーオフに進出しているバッファロー・ビルズと、ある種の親しい関係を結んだのだと明かした。
「彼があまりいいプレーをしていなかった昨年でさえ、私は『この選手、好きだわ。彼の闘志が大好き』と思ったの。彼は勇敢な選手で、勝ちたいと強く望んでいた。それは人々が見たいと願う何かだわ」とペグラはアレンについて話した。
「それは間違いなく、私が自分のテニスにも取り込もうとしていたものなの。チームが見せるガッツや競争的な姿勢、その闘志溢れる精神姿勢が素晴らしいわ。テニスの試合でも、90%くらいはメンタルだって言うしね。彼らが戦う姿を見るのは本当に素敵なことで、そのエネルギーを自分のテニスにも持ち込みたいと思うわ」
USオープンで準決勝に進出していることを考えると、ブレイディの勝ち上がりはそこまでの驚きではなかった。彼女はそこで、最終的に優勝した大坂なおみ(日清食品)に敗れていた。
ベキッチの右膝には、結局5-5にまでもつれた第2セットの序盤にトレーナーによって厳重にテーピングが施された。しかしブレイディはそこからラブゲームでブレークし、次のゲームをキープして首尾よく勝利を掴んだ。
一方のペグラは試合の序盤でグランドスラム大会の準決勝を2度経験した実績を持つスビトリーナを押し込んでセットを先取し、第2セットでもすぐにブレークを果たして1-0とリードした。
スビトリーナが勝負を第3セットに持ち込んだあと、ペグラはショットをコーナーからコーナーへと打ち込んで本来のアグレッシブなスタイルを取り戻すと4-1とリードした。そのあとブレークされて4-3と追い上げられたがすぐに引き離し、5-3からのサービスゲームでは0-30から最後の4ポイントを連取してキャリアでもっとも重要な勝利をもぎ取った。
そして今、ペグラはよき友人でもあるブレイディと対戦することになった。
「私は彼女が初のグランドスラム準々決勝進出を果たしたことに、とてもワクワクしているわ。彼女が今感じている感情を私も知っているから。雲の上にいるような気分なの。私たちはお互いをよく知り合っており、対戦を心から楽しみにしているわ。すごく楽しい戦いになると思うの。アメリカの皆が観ていてくれるでしょうね。間違いなく!」とブレイディは語った。(C)AP(テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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