2021-10-16

ジュニア

中村健太が富田悠太との大接戦を制してITF大会初優勝 [世界スーパージュニア2021]

写真は男子シングルス準決勝での中村健太(志津TC)(撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU)


 国際テニス連盟(ITF)のジュニア公式戦「大阪市長杯世界スーパージュニアテニス選手権大会」(ITFグレード4/大阪府大阪市・ITC靱テニスセンター/本戦10月12~16日/ハードコート)の大会最終日は、男女ともシングルスおよびダブルスの決勝が行われた。

 コロナ禍の渡航制限で本来の『グレードA』での開催が叶わず、今年は『グレード4』として行われている今大会は雰囲気も例年とは異なるが、日本の選手たちにとってここが世界への入り口になる。

 男子シングルスの決勝はどちらが勝ってもITF大会初優勝という中村健太(志津TC)と富田悠太(チェリーTC)の対決となり、第2シードの中村が4-6 6-3 7-6(4)の接戦をものにした。なお、男子ダブルスでは第3シードの三城貴雅(トップランAIOI)/山本夏生(相生学院高等学校)が坂本怜(チェリーテニスクラブ)/富田を6-4 6-4で下し、コンビ2大会目で両者ともに初のITFタイトルを獲得した。

     ◇     ◇     ◇

 我慢比べのロングラリーもあり、早い仕掛けのネットプレーもありの駆け引きは、最後の最後まで勝者の見えない2時間45分の大熱戦となった。最終セットのタイブレーク6-4から富田のフォアハンドがワイドに逸れると、それまでほとんど感情を表さなかった中村がラケットを放り投げて全身で吠えた。

「(あまり声を出していなかったのは)疲れていたし、もう無理だという思いもあった。最後のポイントを取るまで、ずっと逆転されると思いながらやっていた」

 随分消極的で弱気な発言にも聞こえるが、これは固くならずにやり遂げるための思考操作のようなもの。2週間後に15歳になる富田に対して6月に17歳になった中村は海外留学の経験も含めて経験値で相当上をいくはずだったが、試合前からそんな立場は捨てていた。

「(原﨑)朝陽にも(前田)優にも勝ってきてるという見方をすれば自分がチャレンジャーだと思ったし、実際去年対戦したときは勝ったけど危なかった」

 ITF大会の決勝を戦うのは両者ともに初めて。立ち上がりは中村のほうがやや固く、富田が3本のウィナーを決めていきなりブレークした。その富田も第2ゲームになるとミスが相次ぎ、中村にとっては早い段階でブレークバックの機会を得たことが幸運だった。しかし第7ゲームでふたたびブレークを許して第10ゲームで掴んだブレークバックのチャンスは生かせず、第2セットは中村が先行する形でのブレーク合戦となった。第4ゲームから第8ゲームまでをブレークし合い、第9ゲームで中村が0-30から何とかサービスキープをしてセットをイーブンに戻した。

 最終セットは逆に富田がブレークを先行してのブレーク合戦の中、5-3とした富田がサービング・フォー・ザ・マッチを迎える。ガッツを前面に出す富田だったが、そこまでのブレークだらけの展開が微かな影を落としたのかもしれない。

「だんだんサーブに自信が持てなくなっていたこともあって、勝ちびびりというか、固くなってしまった」

 フォアハンドで放ったクロスのウィナーで1ポイント目を奪ったが、そこから中村が4ポイントを連取してブレークバックに成功した。

 タイブレークは中村の優位で進んだが、5-1でのチェンジエンドでも「気持ちに余裕はなかった」と中村。前回も同じ状況から追いつかれた経験があるからで、実際5-4まで追い上げられたが、最後の2ポイントは中村の粘りがまさった。

「去年から全然調子がよくなくて精神的に病んでいた時期もあるので、この優勝は自信にはなります」

 悪い結果への心の備えを最高の結果に繋げてみせたが、これが偶然ではないという証をこの先いくつも見せて欲しい。(ライター◎山口奈緒美/構成◎テニスマガジン)

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撮影◎毛受亮介 / RYOSUKE MENJU

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