「SNSは若者の生活の一部。助けが必要だ」2回戦突破のジョコビッチ[フレンチ・オープン]
今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月22日~6月5日/クレーコート)の男子シングルス2回戦で、第1シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)がアレックス・モルチャン(スロバキア)を6-2 6-3 7-6(4)で下した。
1、2回戦を振り返って調子はどう?
「ここまではいいね。コート上での感触、ボールを打つフィーリングに満足している。今日は難しいコンディションで相手はクレーのスペシャリスト。直近のリヨンで準優勝の強敵だ。簡単に勝てるとはまったく思っていなかったが、自分のパフォーマンスには満足している。第3セット、ワンブレークアップだったのに反撃のチャンスを与えてしまった。でもタイブレークで我慢強く戦えた。ここまでのプレーに満足しているよ。すべてが正しい方向に進んでいる。3回戦が楽しみだ」
1回戦では吠える場面が多かったけど2回戦では静かだった。何か違いはあった? 大会前にレフティとの対戦に不安があると言っていたが、これで2連勝だ。準々決勝でかなり手強いレフティと当たる可能性もあるが、そこに向けて自信になる?
「次は右利きだし、君が誰について話しているのかわからないよ(笑)。僕の頭の中には次の試合のことしかない。一歩ずつ進んでいくだけだ。コート上での気持ちは様々だ。自分の気持ち、相手、相手の反応、観客の反応など多くの要素が関連する。いつも同じとは限らないよ」
多くの選手とメンタルヘルスとSNSについて話したが、君はどう対応している? 若手にとって難しい面もあると思う?
「凄く重要なトピックだが、大き過ぎるので話を絞るのが難しい。僕のSNSとの付き合い方を話そう。僕もSNSで発信するけど、その時間をどうコントロールするかは、自分で考えるしかない。いい面、面白いことをたくさんSNSでは学ぶことができる。情報に溢れていて、すべてがいいものじゃない。若い選手、若い人たちにとって生活の一部になっているし、それを完全に排除することはできないと思う。誰かに禁止されてもこっそりできちゃうから、それでは解決策にはならない」
「若い選手のことをよく理解して仲良くなり、いろんなことを共有できるようにするのがいい。親しくなって、自分を信頼してもらえれば、自分の経験からいろいろアドバイスできるはずだ。一緒にいい方法が見つかるかもしれない。若い人には助けが必要だと思う。これは本当に難しく、大きな問題だ。僕は7歳と4歳の子供がいて、父親としてまだ経験が浅い。でもすぐに2人がSNSを使う時期がくるだろう。妻と一緒にそのときのことを考えている。簡単ではない。個人的な問題でもある。どこに住み、どんな生活をしているのかにもよる」
「若いテニス選手にとっては、選手生活がかなり孤独と感じられるかもしれない。移動が多い。練習以外の時間はオンラインで費やすことが多い。僕が知る多くの選手は電話で話す時間が多いようだ。この状況がいいとは思わない。僕は自分でコントロールしている。だから、本来なら自分にとって一番いい方法を見つけるのがいい」
新しいロラン・ギャロスをどう思う? コート・フィリップ・シャトリエだけでなく、コート・シモーネ・マチューを含め選手が利用する施設、観客が戻ってきたことについて。
「すべてのコートで観客がフルキャパシティで入れるのは素晴らしいことだ。スタンドに若い人たち、子供たちを見るのが僕は大好きだ。凄くエネルギーをもらえる。僕くらいのキャリアを積むと、人々が僕のことを観に来てくれることとそのエネルギーは、プロ選手として第一線でプレーするための最大のモティベーションの一つになっている」
「この数年の施設の改善は素晴らしいと思う。パリの天気は変わりやすいから、屋根付きのスタジアムができたのは本当に喜ばしい。毎年、数日は雨が降るからね。スケジュール面で大きな助けになる。プレスの施設も広くなってよくなった。他の会場よりもジムが多く、ロッカールームも広い。大会側が施設の状態を気にして、改善しようと意識しているのは素晴らしいことだ」
ウインブルドンについて今後さらに話し合いがもたれるようだが、そこに関して君が立ち上げたPTPA(プロテニス選手協会)はどんな役割を果たす?
「テニスの大きな組織の中には、PTPAの存在をよく思っていない人もいるが、なくなることはない。PTPAは男女の選手の権利を100%代表する組織だ。まだできたばかりで機能するのに時間が必要だ。まずは認められることが最重要課題だ。現状では認められていない。そして残念ながら、今回の件でPTPAは蚊帳の外。本来なら議論の場にいなければいけないのだが」
「選手から多くの不満が出ている。この数日何人かの選手と話した。特に、昨年のウインブルドンで好成績を残し、今回の決定で多くのポイントを失う選手たちを中心に。ATP(男子プロテニス協会)の下した決定は、ウインブルドンがロシア人選手、ベラルーシ人選手の出場を認めなかったことへのリアクションだと言うこともわかっている。不満を持つ選手がたくさん出てしまっている」
「僕は選手協会にはもう属していないから、どんな話し合いがされたのかわからない。数日前にATPの会長と話したんだ。ATPが決定を下したあとに、英国テニス協会(LTA)と話し合いがあったようだ。内容は教えてくれなかったが。そこでどんなことが議論されているのかわからない。ATPが決定を取り消すとは思えない。決定はすでに下された。その決定に何かが加えられるかどうかが焦点だ。選手たちはATPと話し合いたいはずだ。グランドスラムとは話し合えないのだから」
「ATPの選手協会はATPの機構の内部にある選手を代表する組織で、何十年もそのように存在してきた。でも、これはベストの形だと思わない。何度も選手に嫌な思いをさせてきた。だからこそPTPAが必要なんだ。このような大きな問題が起きたとき、選手側の声がほぼ届かないんだ。残念ながらATPでは選手と大会の立場はフィフティ・フィフティだ。選手の意見が100%聞き入れられることはないんだ」
「何か問題があるとき、いつも同じ結論になる。今はウインブルドン、明日は他の話題、数年前は他の話題。でもいつもシステム自体の問題が取り上げられる。選手たちには団結する必要があり、そこで強さと姿勢を見せるべきだ。自分たちの姿勢にそれほど力があることにも気づいていないんだ。テニスが個人競技であるために、多くの選手は残念ながら全体的な利益よりも個人の利益を優先してしまっている。そこでいつも対立が生まれてしまう」
大会中、他の選手のことはどれほど気にしている? ステファノス・チチパス(ギリシャ)、アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、カルロス・アルカラス(スペイン)はこの数日フルセットを戦い苦戦している。
「僕は他の選手たちの状況は気にしている。選手は他の選手のことを気にしている。トップ選手たちの状態、ポイントについて気にするのは、グランドスラムや大きな大会では特に大きいことだ。でも、実際他の選手たちのことを調べるのに1日中時間を費やす訳にもいかない。気にはするけど、彼らの調子をコントロールするのは自分ではない。自分は試合に勝っていい結果を残すことが重要なんだ」
ジョコビッチは3回戦で、アルヤズ・ベデネ(スロベニア)と対戦する。
写真◎Getty Images
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