書籍『ペア競技の復元力』カバー写真の撮影は篠原秀典さん - レンズの向こう側 - 撮影の背景と、私と朴さんのストーリー -

写真はイメージ(Getty Images)

(『ペア競技の復元力』掲載)
Cover Message


レンズの向こう側 - 撮影の背景と、私と朴さんのストーリー

写真・文◎篠原秀典
(日本体育大学ソフトテニス部監督/ソフトテニス全日本ナショナルチーム男子監督)




書籍『ペア競技の復元力』写真・文◎篠原秀典

 私と朴さんは、選手だった頃は国体などで、指導者になってからもよく会場で顔を合わせてきました。関係がグッと近くなったのは、実はこの写真を撮影した2023年9月、長野県の高地トレーニング施設で行った、私たち日本体育大学ソフトテニス部のトレーニング合宿(アーミー合宿)に講師として参加していただいたときからです。この合宿以前に、朴さんがある高校ソフトテニス部で行ったチームビルディングの合宿がとてもよかったとうわさを耳にして、うちの選手たちも鍛えてもらいチーム力を上げたいとお願いしました。快く引き受けてくださいました。

 この合宿ではラケットとボールは使わず、4日間で使ったのは自分の身体と頭と心のみ。乗り越えるのに何度も自分を奮い立たさなければならない課題の数々がありました。辛くて涙を流す選手もいましたが、朴さんは甘く接することはしませんでした。選手たちはチームで、選手同士が支え合うもの。そんなメッセージがありました。助け合って苦難を乗り越えていく選手たちのようすを、私は遠く離れた場所からカメラのレンズ越しに見ていたのですが、その表情が素晴らしくて、ついもらい泣きしてしまいました。このためにやっていることなんだと、そのときわかりました。

 それくらい厳しい合宿だったのですが、一番きつかったのは、たぶん朴さんです。朝、トレーニング場に行く前のルーティンとして、私と朴さんとスタッフはその日の内容を確認し、少しの時間を穏やかに過ごすのですが、そこまではいつものやさしい朴さんがいて、楽しく話をしているんです。ところが会場が近くなると、朴さんはその輪からスッと離れて一人になり、ただならぬ雰囲気を醸し出します。そこに私たちは近づけません。選手に厳しいメニューを課さなければいけない、集中して取り組まなければいけない、そんな緊張感だったと思います。自分は教官で、相手は選手、そういうことではなく、朴さんも「ともに戦う」と覚悟を決める時間だったと思います。やさしさと厳しさを併せ持つ人。その姿は本当に格好よくて、私は思わず朴さんにレンズを向けてしまいました。

 この本を読めば、朴さんという人がよくわかるでしょう。さまざまな肩書きをお持ちですが、私が知る朴さんは、言葉を大事にする、ソフトテニス愛に溢れた人。朴さんと会うたびに交わす言葉が、私の心の中に残ります。それはいろいろなところで甦ってきて、そのたび会いたいなと思います。私にとっても先生です。今はリハビリの途中にいます。朴さん、いつかまたラリーをしましょう。それも私たちの会話の一つです。

篠原秀典|Profile
しのはら・ひでのり◎1983年5月16日生まれ、群馬県出身。渋川中学校、東京農業大二高校、日本体育大学卒。小学3年生のとき渋川スポーツ少年団でソフトテニスを始め、日本体育大4年時(2005年)に日本代表として国際大会デビュー。国際大会には10度出場し、ソフトテニスの4大大会(アジア競技、東アジア競技、世界選手権、アジア選手権)すべての国別対抗戦で優勝した。小林幸司選手とのペアは『シノコバ』としてリスペクトされ、日本最高峰の全日本選手権で3回優勝(2011、2012、2015)。2017年度で第一線を退いた。現役時代より日本体育大女子ソフトテニス部のコーチを務めてきたが、2018年度より同大男女監督に就任。日本体育大准教授。2023年より全日本ナショナルチーム男子監督。

ペア競技の復元力
朴 相俊 著(国際ソフトテニス指導者・プレーヤー・スポーツメンタル教育者)
A5判並製、320頁、ベースボール・マガジン社
定価(本体価格2000円+税)8月18日発売

ソフトテニスの緻密なペアリングから学ぶ、すべてのテニスプレーヤー必読の書📚

👉この本は、技術、戦術、認知、メンタル、ペア関係を、それぞれ単独で扱わず、試合の中で「機能し続ける構造(型)」としてとらえ直すことで、ダブルスというものの本質に迫っている。ソフトテニスを題材に書かれている本だが、ソフトテニスの技術や戦術を解説しているわけではなく、テニスにおいても共通する、ペア競技ならではの〈戦いの構造(設計図)〉が書かれている。(編集担当/青木)







朴 相俊|Profile

パク・サンジュン◎1975年、韓国生まれ。小学校から高校までエリートコース(スポーツ強化)でソフトテニス競技に参加し、韓国ジュニア代表としてプレー。1995年、20歳で競技を離れた。大学3年時に休学して兵役に就き、任務を終えたのち1998年に来日。2010年に東京大学大学院教育学研究科身体教育学コースで修士・博士課程を経て、現在は長野県にある佐久大学で基盤教育を行い、並行して国内外のソフトテニス振興・普及活動を行っている。教育学修士、環境共生学博士、日本自殺予防学会編集委員、信州公衆衛生学会理事、日本認知・行動療法学会認定行動療法士。2010年からプレーを再開しており、全日本クラブ選手権や関東オープン(35歳の部)、全日本社会人ソフトテニス選手権(45歳の部)、東日本ソフトテニス選手権(45歳の部)で優勝など。指導者としては、韓国代表も含め、国内の大学・高校チームのメンタルサポート、自ら立ち上げたソフトテニスの地域クラブ「PSJクラブアカデミー(小中学生対象)」代表兼コーチ、実業団「ウェル・トレード・プロワカ」チーム監督。さらに、ソフトテニス普及活動を目的とした「一般社団法人World Challenge Project」を立ち上げ、普及活動家兼指導者として、指導者を対象にソフトテニス技術指導、スポーツメンタル教育、チームビルディング指導のほか、JSPO資格のコーチ講師を務める。国際ソフトテニス連盟ランキング委員会副委員長、日本ソフトテニス連盟特別委員会委員などの活動もある。
Instagram @seagullpark_2028 (闘病日記)

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写真◎篠原秀典、BBM

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