【『ペア競技の復元力』発売前特別企画】中身チラ見せ6連載|連載3|自分の調子を冷静に判断する



ペア競技の復元力 技術・戦術・メンタルを一本につなぐ、ダブルスの本質
朴 相俊  パク サンジュン 著(国際ソフトテニス指導者・プレーヤー・スポーツメンタル教育者)
※詳細プロフィールは最下部

ソフトテニスの緻密なペアリングから学ぶ、すべてのテニスプレーヤー必読の書

8月18日発売(全国の書店、ネット書店で予約受付中)
A5判並製 312頁
本体価格2000円+税
ベースボール・マガジン社刊


|連載3|
(書籍『ペア競技の復元力』116_119ページ掲載)

第2章 前衛・後衛の役割は「配置」ではなく「判断

後衛の役割とは「展開を選び続ける判断」にある

〈後衛編〉診断する-自分と相手の状況を読む

Section❶自分の調子を冷静に判断する

 なぜ後衛に「自分の調子判断」が必須なのか。後衛は、試合の中でずっとボールを打ち続ける役割を担う。つまり、調子の良し悪しに関係なく、プレーは止められない中で、攻めの選択と守りの選択を適切に判断しないと試合の崩壊が早まってしまう。だから後衛の仕事は、「調子の良し悪しを消すこと」ではなく、調子に合わせて「戦いの構造(型)を変えること」である。

■ 調子とは何か

 多くのプレーヤーが調子を「当たり感覚(当たり外れの感覚)」と思っているが、それは違う。試合で本当に見るべき調子は次の3つだ。

❶出力の調子(力、スピード)
 スイングが走っているか、足が前に出ているか、打点に余裕があるか。

❷精度の調子(コントロール・深さ)
 深さが安定しているか、コースがブレていないか、高さが一定に保てているか。

❸判断の調子(選択の質)
 余計な攻めをしていないか、相手の嫌がるところを選べているか、「自分がしたい」ではなく、「必要なこと」を選べているか。
 
 後衛が見るべきは、当たりよりも判断の質であるため、仮に当たりが悪い日でも勝てるが、判断が悪い日はほぼ負けてしまう。


■ 冷静に判断するための試合中の後衛観察ポイント


イラスト◎サキ大地(以下同)

 試合中は感覚が揺れるから、基準を持って確認すること。

❶深さが保てているか(最重要)
 ベースライン付近に入っているか。もし、浅くなるなら、「攻めるな」のサインとして知覚する。

❷打点がつまっていないか
 つまる(準備と距離感が崩れている)ときは、「展開を変えるボール」よりも「時間をつくるボール」を意識する。

❸ミスの種類は何か
 ネットミス増(出力不足、焦り)、アウトミス増(力任せ、判断過剰)、流しコース抜け(軸足の決め不足、足が遅い)など、ミスの結果ではなく、種類で調子を判断する。

❹1本目の入り(サーブ、レシーブ後)が安定しているか
 試合は「最初の1本」で流れが決まることがある。ここが崩れている日は、まず安全設計を組み立て直す。

❺息が上がっているか(呼吸)
 呼吸が浅いことは、判断が浅いことを意味するので、深呼吸ができない日はせめて判断する余裕を意識する。

■ 調子が悪いと判断したときの正しい切り替え

 冷静に判断できても、切り替え設計がないと意味がない。

❶まず、攻める仕事をいったん横に置く(攻めない)
 無理に展開を変えず、まずラリーを成立させる。

❷目標を「勝ち」から「崩れない」に置き換える
 3本続ける、深さを揃える、相手前衛の得点を止めることを意識する。

❸戦いの構造(型)を固定する
 調子が悪い日は「自由度」を下げる。例えば、基本はラリーを深く打つ、2本に1本はロブを上げる、流しコースは打たないなど、意思決定を単純化する。

❹前衛に情報を渡す
 調子判断は自分のためだけではない。後衛はペアのエンジンなので、前衛に対して、「今日は浅くなりやすいから、ロブ多めでいく」「打点がつまって不安定だから展開を変えず、まずラリー優先で」「攻めボールは後半まで温存する」など、情報を共有する。

■ 調子がよいと判断したときの落とし穴

 意外に危険なのがこの状況で、調子がよい日ほど無駄に攻める、展開を変えすぎる、早く終わらせようとするなど、崩れることが多い。調子がよいときこそ、攻め方ではなく勝ち方を選ぶ。例えば、相手が崩れている場所を見定めつつ、相手前衛の迷いを増やし、余計なギャンブル勝負をしないなど。

■言語化すると「後衛の成熟」



 この後衛を言語化すると、「後衛の成熟」ではないだろうか。

 成熟の意味を考えてみよう。初心者は調子に振り回され、中級者は調子がよいときだけ勝ち、上級者は調子が悪いときに負けない。そして、最上級者は調子の波を試合設計で消していくことができる。つまり、崩れても生き残るための後衛の思考の成熟さが、その意味である。

■試合で使える「自分の調子」を判断する言葉

 試合中に自分へ短い言葉をかけてみてほしい。「深さは出ている?」「今は攻める時間?」「勝ちにいくより、崩れないで」「まず一本、同じボールを続けよう」など、言葉を単純化して、自分の調子、状態を判断する。


深さは出ている? 今は攻める時間?





著者プロフィール
朴相俊

パク・サンジュン◎1975年、韓国生まれ。小学校から高校までエリートコース(スポーツ強化)でソフトテニス競技に参加し、韓国ジュニア代表としてプレー。1995年、20歳で競技を離れた。大学3年時に休学して兵役に就き、任務を終えたのち1998年に来日。2010年に東京大学大学院教育学研究科身体教育学コースで修士・博士課程を経て、現在は長野県にある佐久大学で基盤教育を行い、並行して国内外のソフトテニス振興・普及活動を行っている。教育学修士、環境共生学博士、日本自殺予防学会編集委員、信州公衆衛生学会理事、日本認知・行動療法学会認定行動療法士。2010年からプレーを再開しており、全日本クラブ選手権や関東オープン(35歳の部)、全日本社会人ソフトテニス選手権(45歳の部)、東日本ソフトテニス選手権(45歳の部)などで優勝。指導者としては、韓国代表も含め、国内の大学・高校チームのメンタルサポート、自ら立ち上げたソフトテニスの地域クラブ「PSJクラブアカデミー(小中学生対象)」代表兼コーチ、実業団「ウェル・トレード・プロワカ」チーム監督。さらに、ソフトテニス普及活動を目的とした「一般社団法人World Challenge Project」を立ち上げ、普及活動家兼指導者として、指導者を対象にソフトテニス技術指導、スポーツメンタル教育、チームビルディング指導のほか、JSPO資格のコーチ講師を務める。国際ソフトテニス連盟ランキング委員会副委員長、日本ソフトテニス連盟特別委員会委員などの活動もある。
Instagram @seagullpark_2028


試合で崩れても残る技術がある。
判断を誤っても立て直せる思考がある。
不安になってもやり直せるメンタルがある。
それらは才能でもなければ、偶然でもない。
試合は設計できるものであり、指導できるものだ。


ペア競技の復元力(朴相俊 著)
818日発売
A5判並製 312頁
本体価格2000円+税

目次
はじめに
第1章 技術は「正しさ」より「再現性」で考える
第2章 前衛・後衛の役割は「配置」ではなく「判断」
第3章 戦術とは「配球」ではなく「心理操作」
第4章 試合を分けるのは「技術差」ではなく「認知の差」
第5章 メンタルは「才能」ではなく「設計」
第6章 ペア競技における信頼とズレのマネジメント
第7章 競技が止まった日、人生が再起動した
第8章 怪我を経験した指導者だから伝えられること 
―技術・戦術・メンタルを超えた「人を育てる視点」―
私の履歴書
おわりに




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Cover写真◎篠原秀典(日本体育大学ソフトテニス部監督/ソフトテニス全日本ナショナルチーム男子監督)

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