パリは晴れたがクビトバがサービスエースの雨を降らす [フレンチ・オープン]
今年最後のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦9月27日~10月11日/クレーコート)でようやく雨が止んだとき、ペトラ・クビトバ(チェコ)は代わりにサービスエースの雨を降らせた。この日の6本を加えて今大会での彼女のサービスエースは合計24本となり、女子の中でトップに立っている。
そして何よりクビトバは、2012年以来となるロラン・ギャロス準決勝へと駒を進めた。彼女がグランドスラム大会で準決勝に進出したのは、2019年のオーストラリアン・オープン決勝への進撃以来となる。
第7シードのクビトバはこの日、初のグランドスラム準々決勝を戦ったノーシードのラウラ・シグムンド(ドイツ)を6-3 6-3で退けた。特にレフティから繰り出されるクビトバのサービスの輝きが目立った第1セットでシグムンドはうまく対処することができず、また相手のパワフルなグラウンドストロークにも対応しきれていなかった。
8年ぶりに準決勝に戻ってきたクビトバにとって、それは2016年12月にチェコの自宅でナイフを持った強盗に襲われたトラウマから回復するための新たな一歩だった。彼女がラケットを握るのに使う左手の5本の指はすべてナイフによって傷つけられ、医師からはもはや以前のようにプレーできなくなるかもしれないと告げられさえした。
「これはもうひとつの奇跡だわ」とクビトバはコメントした。
この日決めたサービスエース6本のすべてを第1セットで決めたクビトバは、このセットでは1度もブレークポイントに直面せずにファーストサーブからのポイントの93%を獲得した。この日の彼女の最速サーブは、時速168kmだった。彼女はサービスエースを奪って2本のセットポイントをお膳立てし、次のポイントでシャープなフォアハンドのウィナーを決めて締めくくった。
秋の弱い日差しを受けるフィリップ・シャトリエ・コートでレギンスもはかず袖なしのウェアでプレーしたクビトバは、パリのレッドクレーでまだ1セットも落としていない。
「ここは今、私のラッキープレイス(幸運の場所)になってるわ」と彼女はコメントした。
第2セットの出だしにシグムンドはふたたびブレークされ、試合の様相はほとんど変わらなかった。しかしそれから、クビトバのテニスが微妙に崩れ始めた。30歳のクビトバは第4ゲームに連続してダブルフォールトを犯し、シグムンドにこの試合で最初のブレークポイントを与えてしまったのだ。
1本目はクビトバがセーブして続く2本も凌いだが、シグムンドはネットについたクビトバを抜き去るフォアハンドのパッシングショットでまたもブレークポイントをつかみ、クビトバがバックハンドをネットにかけて2-2と追いついた。
それからお互いにキープできない不安定な3ゲームが続き、サービスに時間をかけすぎると警告した主審とシグムンドが言い争う場面もあった。
「私がゆっくりなのは知ってるけど、これでも早くするよう最善を尽くしているのよ。以前よりずっと早くなったと思うわ」とタイムバイオレーションを受けたシグムンドは弁解した。
32歳のシグムンドは1971年オーストラリアン・オープンのノーマ・マーシュ(オーストラリア)以来、グランドスラム準々決勝に初めて到達した最年長の選手だった。彼女はその混乱したセットの第5ゲームでブレークされたあと、背中の痛みを訴えてフィジオセラピストからの治療を受けた。
次のゲームでクビトバはまたもダブルフォールトでブレークポイントをプレゼントし、シグムンドがふたたび3-3と追いついた。
しかし最後の3ゲームはクビトバが主導権を握り、一方的に突き進んだ。彼女は8ポイント連取で5-3とし、キープ出来なければ負けという状況にシグムンドを追い込んだ。そのプレッシャーはシグムンドにとって大きすぎたようで、彼女はマッチポイントでダブルフォールトを犯して試合に終止符が打たれた。
クビトバの準決勝の対戦相手は、今年のオーストラリアン・オープンでグランドスラム初優勝を果たした第4シードのソフィア・ケニン(アメリカ)に決まった。
ここまでのパリにおいて1試合を除くすべてでフルセットの戦いを強いられてきたケニンはこの日、ノーシードから勝ち上がってきたダニエル・コリンズ(アメリカ)との同胞対決を6-4 4-6 6-0で制した。(APライター◎ジョン・レスター&アンドリュー・ダンプ/構成◎テニスマガジン)
※写真はペトラ・クビトバ(チェコ)
PARIS, FRANCE - OCTOBER 07: Petra Kvitova of Czech Republic celebrates after winning match point during her Women's Singles quarterfinals match against Laura Siegemund of Germany on day eleven of the 2020 French Open at Roland Garros on October 07, 2020 in Paris, France. (Photo by Clive Brunskill/Getty Images)
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