ジョコビッチが驚くべきプレーでナダルを圧倒、記録的7度目の優勝を果たす [オーストラリアン・オープン]
今年最初のグランドスラム「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月14~27日/ハードコート)の大会最終日、男子シングルス決勝。
ノバク・ジョコビッチ(セルビア)があまりに素晴らしく、あまりに情け容赦なく、ほぼ完璧だったがゆえに、ラファエル・ナダル(スペイン)はまったく太刀打ちできなかった。
この日のジョコビッチは、テニス界の偉人のひとりを、ただの圧倒された対戦相手のひとりに貶めた。波に乗れないナダルは、あるポイントで彼の有名なフォアハンドを完全に空振りしてしまったほどだったのである。
著しく一方的な結果をもたらした、目覚ましいまでに優勢でミスのないパフォーマンスの中で、世界ランク1位のジョコビッチはナダルを6-3 6-2 6-3で圧倒し、最多記録となる7度目の全豪制覇を成し遂げた。そしてグランドスラム3大会連続でタイトルを獲得し、通算優勝回数を「15」に伸ばした。
「驚くべきレベルのテニスだった」とナダルは認めた。
準決勝でわずか4ゲームしか落とさなかったジョコビッチは、よくいう“ゾーンに入っていた”ことについて話していた。34本のウィナーを決め、わずか9本しかアンフォーストエラーを犯さなかったのだから、この日も彼はその状態にあったように思われた。
そして言うまでもなく、これは並大抵の選手に対する試合ではなかった。ナダルはグランドスラムで「17」のタイトルを保持し、大会を通して1セットも落としていなかった世界2位の選手だったのだから。
しかしジョコビッチは、ナダルをまったく寄せ付けなかった。彼はただ、苦笑いを浮かべるか、歯を食いしばるか、ラケットのストリングをげんこつで叩くくらいしかできなかったのだ。
「今日は、僕の夜ではなかった」とナダルは試合後に語った。
そんなわけでジョコビッチは、過去6度(2008年、11~13年、15~16年)の栄冠に、もうひとつを付け加えた。彼はさらにフレンチ・オープンで1勝、ウインブルドンで4勝、USオープンでは3勝を挙げている。
彼は、ロジャー・フェデラー(スイス)と1960年代に活躍したロイ・エマーソン(オーストラリア)とタイだったオーストラリアン・オープン優勝回数の記録を破った。
今回の結果で彼は、グランドスラム優勝杯の総数でピート・サンプラス(アメリカ)を追い抜いきた。彼の前にいるのは、20回優勝のフェデラーと、17回のナダルだけだ。
そしてジョコビッチは、彼らとの距離を狭めつつある。
「この大会はときどき、故障に苦しんだという意味で僕にとって厳しいものだった」とナダルは言った。彼の全豪決勝での戦績は、1勝4敗となった。
「そして、また別のときには、今日のように対戦相手という意味でも厳しかった」
右肘の痛みのため、ジョコビッチは2017年後半を棒に振った。1年前、彼はメルボルンの4回戦で敗れ、その直後に手術を受けることを決意した。
これらすべては、もはや過去のことだ。
31歳のジョコビッチは、ふたたびエリートレベルに戻ってきた。今、むしろ彼と他の選手のギャップは大きくなりつつあるように見える。
「過去12ヵ月の旅路について、じっくり考えようと努めているんだ」
ジョコビッチは、彼が「かなり深刻な故障」と呼んだことについて言及しながらこう語った。
「今、この日、君たちの前にこうして立っているということ、このタイトルと4つのグランドスラム大会のうち3つで優勝することができたというのは、本当に驚くべきことだ」
「驚いて、何も言えない」
ナダルもまた、あらゆる類いの健康の問題に対処してきた。彼は昨年のオーストラリアン・オープン準々決勝とUSオープン準決勝を、右脚の問題のために途中棄権した。さらにオフシーズンには右足首の手術を受け、メルボルンでのプレーが始まったときには約4ヵ月、大会に出ていない状態だった。
「故障から復帰し、今僕がここにいるというのは、非常に重要なことだった。そして今後やってくることのための、いいインスピレーションでもある」とナダルはコメントした。
「僕はよりよいプレーヤーになるために、力の限り戦い続けるつもりだ」
ジョコビッチとナダルは、互いによく知り合っている。彼らは互いのプレースタイル、互いのパターンをも、知りすぎる程よく知っていた。
これは彼らの53度目の対戦だった。これは男子テニスにおけるここ半世紀のプロ化以降の時代でもっとも多い対戦回数であり、グランドスラム大会では最多記録に並ぶ15度目の対決だった。それはまた、グランドスラム決勝での8度目の対戦でもあった。
そんな訳で、ここ最近40度近くにまで上がっていた気温が対処しやすい25度程度まで落ち、かすかな風が吹く中で彼らが試合を始めたとき、ロッド・レーバー・アリーナの青いコートの上に予測不能なことなど起こるはずはなかったのだ
しかしながらごく最初から、この試合は、これ以前にこのふたりの間で戦われた唯一のオーストラリアン・オープン決勝であり、史上最長のグランドスラム大会決勝――5時間53分の戦いの果てにジョコビッチが勝った2012年のそれとは、似ても似つかなかった。
その7年前の夜の戦いは非常に拮抗していたが、今回は一方的な試合だった。今回は、2時間と少ししかかからなかったのだ。
事態がこれほど早く、取り返しがつかないほどジョコビッチの優勢に傾いていくのを目にするというのは、かなり予想しがたいことだった。ナダルほどの経験豊富で卓越した選手が、どうすればこれほど一方的にやられてしまうというのか?
ぴりぴりした神経、焦燥など、気持ち的問題だろうか。おそらく、それも何らかの影響を与えたのかもしれない。そうだったとしても、この日のジョコビッチのディフェンスは突破不可能だった。
いかにうまく打とうと、ジョコビッチのリーチの外にあるボールは存在しないかに見えた。彼はスライドし、体を伸ばし、どこであれ必要なところに届くように体をひねり、ときに足を完全に縦に開いてしまったことさえあった。
ジョコビッチは10ストローク以上続いた4度のラリーのすべてを含む、最初の14ポイントのうち13本を取った。彼の優位性は、この時点で打ち立てられた。
もっとも重大だったのは、ナダルが決勝で最初のサービスゲームをブレークされたことだ。2回戦から準決勝までの5試合で1度もブレークされていなかったナダルに対して、ジョコビッチは出ばなをくじくことに成功したのだ。テニス界最高のリターンの名手であるジョコビッチは、これまでの相手とは一味違っていた。
同様にリターンゲームに強いナダルだが、この日の彼はまったく前進することができなかった。ジョコビッチは、自分のサービスゲームの最初の16ポイントと、26回あったファーストサーブからのポイントのうち25本をものにした。
試合開始から75分が過ぎた第2セットの終わりに、ジョコビッチはナダルの2倍近いポイントを取り(59対30)、より多くのウィナーを決め(23対14)、アンフォーストエラーの数は相手よりずっと少なかった(20対4)。
彼はまた、最低でも10ストローク続いた17ポイントのうち14本を取っていた。もっとも長かったのは、ナダルがバックハンドをネットにかけて終わった22回のラリーだった。これを取ったジョコビッチは、第1セットの終わりにセットポイントを手にすることになった。ジョコビッチは、右のこぶしを上げ、自分のゲストボックスを見つめながら、それを掲げ続けた。
ジョコビッチは決勝の試合中、常に正しい道の上にいた。ナダルは、彼を止めるために何もすることができなかったのである。(C)AP(テニスマガジン)
※写真はノバク・ジョコビッチ(セルビア)
MELBOURNE, AUSTRALIA - JANUARY 27: Novak Djokovic of Serbia celebrates after winning championship point in his Men's Singles Final match against Rafael Nadal of Spain during day 14 of the 2019 Australian Open at Melbourne Park on January 27, 2019 in Melbourne, Australia. (Photo by Cameron Spencer/Getty Images)
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