大坂なおみ対クビトバ、それぞれの観点からのオーストラリアン・オープン決勝
今年最初のグランドスラム「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/本戦1月14~27日/ハードコート)の女子シングルス決勝。
ペトラ・クビトバ(チェコ)は、涙を流した。今週、長いこと人目につかないところで流していた涙は、公衆の面前で流された。
ラケットを持つ左手にナイフによる深刻な切り傷を負わせることになった自宅での襲撃事件は、自身のキャリアにおける重要な区切りのポイントだったと彼女は見ていた。
その前にはふたつのウインブルドン・タイトルがあり、それから彼女の『第2のキャリア』がある。
第2のキャリアはここまでのところ、土曜日のオーストラリアン・オープン決勝への疾走によって強調されることになった。
彼女が今、気持ちを集中させているのは、グランドスラムで2014年ウインブルドン以来のタイトルを獲得することだ。そこに至るには、彼女はグランドスラム大会で13連勝している21歳でUSオープン・チャンピオンの大坂なおみ(日清食品)を倒さなければならない。
「正直、私はまだ自分が決勝に進出したことが信じられないでいる」とクビトバは心境を語った。
「率直に言って、ある意味、奇妙でもあるわ。自分がふたたびテニスをプレーできるのかさえ分からなかったのだから」
2011年のウインブルドンで初めてグランドスラム大会優勝を遂げたとき、クビトバは21歳だった。当時の彼女は、言ってみれば今の大坂のような上昇中の星だったのだ。
大坂と違い、彼女は初優勝の次のグランドスラム大会では1回戦で敗れた。その後、2016年12月に彼女のキャリアを脱線させ、ともすればもっと悪いことさえ引き起こし得た恐ろしい試練が起こったのだった。
テニスの成績に関してその間の彼女のキャリアには、2度目のウインブルドン優勝を含むアップとダウンがあった。
彼女の医師は当時、手術で修復した手にある傷が、テニスのトップレベルに戻ること妨げるかもしれないという懸念を彼女に告げなかった。
今振り返ってみてクビトバは、自分がそれを知らなかったのはいいことだったと考えている。
「肉体的にだけでなく、精神的に非常に厳しかった。できると信じられるようになるまで、かなり時間がかかったの」と彼女は当時を振り返った。
「多くの、多くの努力が必要だった。たくさんの回復処置、治療を受けたわ。それに関しては、私が送ってきたスポーツの世界での生活が助けになったと思う。私は本当にカムバックしたいのだと気持ちを定め、そのためにできるすべてをやったの」
回復に努めるため3ヵ月ツアーから離れたクビトバは、2017年オーストラリアン・オープンを欠場した。彼女はその年のフレンチ・オープンで復帰し、全仏とウインブルドンは2回戦で敗れたが、続くUSオープンでは準々決勝に進出し、復活劇の中で脚光を浴びることになった。
しかしグランドスラムでは、それがここ2シーズンでのピークだった。彼女は昨年のメルボルンパークとウインブルドンで1回戦負けを喫し、フレンチ・オープンとUSオープンでは3回戦進出にとどまった。
起こったすべてを鑑みれば、それは小さな躓きだったと言えるかもしれない。
「メンタル面では問題なかった。私は本当に強くあり、ネガティブなことを考えすぎないようにする必要があったの」とクビトバは語った。
彼女は今、11試合連続で勝利をおさめている。
「ええ、ここまで長い道のりだったわ」
クビトバと大坂は、これまで一度も対戦したことがない。しかしながら大坂は、長いことクビトバを見て育ってきた。
「ウインブルドン決勝での彼女のプレーを見たわ。彼女がどれほど偉大な選手かは知っている」と大坂はクビトバについて語った。
「グランドスラムの決勝で、初めて彼女と対戦するチャンスを得ることができるなんて、本当に素晴らしいことだわ」
日本人の母とハイチ人の父を持つ大坂は、USオープン決勝でセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)を破って以来、日本でスターとなった。
そして彼女のファン層は、彼女のフィジカル的、そしてメンタル的コンディション同様に、急激に増えつつある。
それは大坂が、3回戦で第28シードのシェイ・スーウェイ(台湾)に対して1セットダウン、第2セット1-4から挽回しなければならなかったとき、彼女がラケットを叩きつけたほどフラストレーションを感じていた局面で非常に重要なものとなった。
そこを乗り越えたあと、第13シードのアナスタシア・セバストワ(ラトビア)、第6シードのエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)、2016年USオープン準優勝で第7シードのカロリーナ・プリスコバ(チェコ)に対する勝利が続いた。
今、彼女は2015年のセレナ以来の、ふたつのグランドスラム大会に続けて優勝した女子プレーヤーとなることを目指している。
「私がUSオープンに勝ったという事実は、間違いなく助けとなっているわ」と大坂はコメントした。
「なぜって、自分にはすごく長い期間プレーし、そんなふうに多くの試合に勝つ能力があるのだと知っているということだから」
双方のプレーヤーが、決勝での勝利により世界1位となることを目指しており、双方がロッド・レーバー・アリーナで多くの応援を受けることになるだろう。
特にクビトバは、アシュリー・バーティ(オーストラリア)に勝った準々決勝のあと、涙にくれながらのオンコートインタビューで、これは彼女の『第2のキャリア』における成功であると認めていただけに、感傷的なお気に入りとなるはずだ。
金曜日、観客は自分のストーリーを知っていて、それゆえ応援してくれると感じているかと聞かれたクビトバは、「わからない。彼らはそう叫んではいないわ」と微笑みながら答えた。
「でも観客たちの中に、私の側についてくれるファンたちを見つけられたらと願っている」(C)AP(テニスマガジン)
※写真は女子シングルス決勝で対戦する大坂なおみ(日清食品/左)とペトラ・クビトバ(チェコ/右)
FILE PHOTO (EDITORS NOTE: COMPOSITE OF IMAGES - Image numbers 1087813666,1087765830 - GRADIENT ADDED) In this composite image a comparison has been made between tennis players Naomi Osaka of Japan (L) and Petra Kvitova of the Czech Republic. They will meet in the Australian Open Women's singles final on January 26, 2019 at Melbourne Park in Melbourne, Australia. *LEFT IMAGE* MELBOURNE, AUSTRALIA - JANUARY 24: Naomi Osaka of Japan celebrates in her Women's Semi Final match against Karolina Pliskova of Czech Republic during day 11 of the 2019 Australian Open at Melbourne Park on January 24, 2019 in Melbourne, Australia. (Photo by Quinn Rooney/Getty Images) *RIGHT IMAGE* MELBOURNE, AUSTRALIA - JANUARY 24: Petra Kvitova of the Czech Republic celebrates in her Women's Semi Final match against Danielle Collins of the United States during day 11 of the 2019 Australian Open at Melbourne Park on January 24, 2019 in Melbourne, Australia. (Photo by Mark Kolbe/Getty Images)
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