チチパスが初めてのグランドスラム準決勝へ [オーストラリアン・オープン]
「オーストラリアン・オープン」(オーストラリア・メルボルン/1月14~27日/ハードコート)の大会9日目、男子シングルス準々決勝。
ステファノス・チチパス(ギリシャ)は、2007年以降で最年少のグランドスラム準決勝進出者となったことと同じくらい、数時間の間に自分のYou Tubeチャンネルのフォロワーが倍増したことに(「オーマイゴッド! 本当かい?」とチチパス)、興奮しているように見えた。
テニス界の次代のビッグ候補として浮上しつつあり、自分の旅ブログをプロモートする好機を得た20歳である…。
「君たち、もしまだチャンネル登録していないなら、ぜひ登録してよ」
彼はその火曜日、オーストラリアン・オープンの試合を生で、またテレビを通して観ている者たちに、こう誘いかけた。
メルボルンパークでのロジャー・フェデラー(スイス)に対する驚くべき勝利がまぐれだと思われないように、チチパスは引き続き第22シードのロベルト・バウティスタ アグート(スペイン)を7-5 4-6 6-4 7-6(2)で倒し、グランドスラム大会のベスト4に至って見せた。
「フェデラーに対する勝利が、僕のイメージのため、また僕が誰かということを知らしめるのに重要だったということは知っている」とチチパスはコメントした。彼は先の日曜日にオーストラリアン・オープン2連覇中だったフェデラーを倒した。
「でも最大のチャレンジは、今日の試合だということはわかっていた。もう一度、自分の力を証明して見せるということが」
彼は確かに、それをやってのけた。
チチパスの次の相手は、グランドスラム大会を17度制したラファエル・ナダル(スペイン)だ。
ナダルは、新世代に属する上昇中の若手のひとり、21歳のフランシス・ティアフォー(アメリカ)のキャリア最高の進撃に6-3 6-4 6-2で終止符を打った。ナダルは相手に許した2度のブレークポイントの双方をセーブし、各セットでティアフォーの最初のサービスゲームをブレークした。
ロッド・レーバー・アリーナ内外に溢れた国旗を掲げる騒々しいギリシャ人応援団に励まされ、チチパスは22本のサービスエースを決め、アンフォーストエラーより30本多いウィナー(68対30)を記録しつつ、持ち前の多彩なスキルを披露した。
それは、彼が憧れの選手である37歳のフェデラーに対してやったこと――彼に興奮で眠れぬ夜を与えたその試合の、素晴らしき再演だった。
この試合の第1セットと第3セットで、チチパスは先にブレークを許して劣勢に立たされていたが、その双方で形勢を逆転させた。
バウティスタ アグートもまた、グランドスラム優勝歴3回のアンディ・マレー(イギリス)、2014年USオープン・チャンピオンで昨年のオーストラリアン・オープン準優勝者のマリン・チリッチ(クロアチア)を倒し、準々決勝へのスリル溢れる進撃を実現していた。
「彼はすぐれたプレーヤーだ。そうだろ? 万能な選手だ。フォアもバックもよく、サービスも強い」とバウティスタ アグートはチチパスについて語った。
「彼はテニスというものをよく知っていると思う。どうプレーすべきかを知っている」
だからこそ、彼の同僚たちは、彼を『2018年にもっとも上達したプレーヤー』に選んだのだ。そしてそれは、彼がすでにトップ20入りし、オーストラリアン・オープンで第14シードにつけていた理由でもあった。
ごく最近、今季の目標は何かと尋ねられたチチパスは、グランドスラム大会で準決勝に進出すること、と答えていた。2019年に3週間食い込んだところで、すでに目標は達成されたわけだ。
では、彼は満足しているのだろうか?
「それは、より深く突き進んでいくための出発点だ」とチチパスは答えた。
「それは、最低限の目標、とでも言うものだよ」
2007年USオープンのノバク・ジョコビッチ(セルビア)以降、グランドスラム大会でここまで至った者の中に、彼より若い男子選手はいない。
「すべては、おとぎ話のように感じられる。まるで夢を体験しているようだ。僕はこのために、ずっとハードワークを積んできたんだ」とチチパスは心境を語った。
試合が終わったとき、彼はラケットを落とし、仰向けに倒れて顔を手で覆った。
「少し感動しているが、過剰にではないよ。なぜって、自分がここに至るためにハードワークを積んできたことを自覚しているからね」
コートサイドの彼のゲストボックスには、彼の両親――父は彼のコーチで、母は旧ソ連のテニス選手だった――とふたりの兄弟、そしてパトリック・ムラトグルーがいた。ムラトグルーは、セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)のコーチであり、チチパスのアドバイザーも務めている。
試合後のオンコートインタビューで、観客たちに彼らと、ほかの近親者を紹介する前に、チチパスは自分の映画撮影と写真への情熱、そして自らの創造性の表現手段として昨年から始めた、You Tubeビデオについての話をした。
のちの記者会見の際にチチパスは、その趣味から何を得られるかについて話を広げた。
「絶望しているとき、気持ちが落ち込んでいるとき、僕はこれらのビデオを制作する。そうすると、気分がよくなるんだよ」と彼は言った。
「それは、“テニスは人生でもっとも重要なものではないんだ”ということ、“僕らは皆、知らなくても実は別の才能も持っているんだ”ということを気づかせてくれる。それで、よりリラックスした気持ちになれるんだよ」
(APライター◎ハワード・フェンドリック)(翻訳◎テニスマガジン)
※写真はステファノス・チチパス(ギリシャ)(撮影◎小山真司 / SHINJI OYAMA)
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