前年準優勝のアンダーソンが危機を凌いで辛くも4回戦へ [USオープン]

「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月27日~9月9日/ハードコート)の男子シングルス3回戦。

 閉じた屋根、落とした第1セット、昨年のUSオープン・ファイナリストが苦戦を強いられ、観客は大いに沸いた。確かにラファエル・ナダル(スペイン)は、その金曜日の勝利の中にこれらすべての要素を持っていた。

 しかし、ナダルからそう離れていないルイ・アームストロング・スタジアムでは、ケビン・アンダーソン(南アフリカ)が同じ状況の下、自分自身のすさまじい決闘に取り組んでいたのだ。

 2017年決勝でナダルに敗れたアンダーソンは、第1セットを落とし、初めてルイ・アームストロング・スタジアムの閉じた屋根の下でプレーしていた。その金曜日の夜に4セットで勝ったナダル同様、アンダーソンは脅威から脱出し、こちらは19歳のデニス・シャポバロフ(カナダ)に対する試合を4-6 6-3 6-4 4-6 6-4で制して、3時間43分をかけた末に4回戦進出を決めた。

「試合を通し、素晴らしいテニスだったと思う」とアンダーソンは言った。

 第5シードのアンダーソンは、人気のあるシャポバロフにファンの声援を奪われていたが結局勝ち進み、日曜日に第9シードのドミニク・ティーム(オーストリア)と対戦することになった。

 彼は変わらず、今年2度目のグランドスラム決勝を視界にとらえている。アンダーソンは30代になって遅まきながらの開花を果たし、2017年USオープンでキャリア初のグランドスラム大会決勝を経験。今年のウインブルドンでも、ロジャー・フェデラー(スイス)を倒した末に決勝に進出していた。

 第28シードのシャポバロフは、それよりもずっと早くこの種のマイルストーンに至るに必要な、すべてを備えていることを示して見せた。

 19歳のシャポバロフは、ATPトップ100にいる最年少プレーヤーだ。2017年、USオープン出場権を得たシャポバロフは4回戦に進出し、1989年のマイケル・チャン(アメリカ)に次いで若いラウンド16進出者となった。この進撃が、彼がそのすぐあとにトップ50に食い込むことを後押しし、彼は2004年のナダルに次ぐ若さでトップ50入りした選手となった。

 シャポバロフは帽子のつばを後ろに向けてかぶっており、帽子のサイズを調整するバンドを額の上で絞めているがためにバンドが前に突き出して、ユニコーンの角のように見えていた。彼は、首にかけたチェーンを噛み、ほとんどエンドチェンジのたびにバナナを食べ、プレーが再開するのを待っている間、足でハードコートを叩いた。

 辛抱のない様子で自分の出番を待ち、その目をビッグ・スクリーンとUSオープン史上の偉大な瞬間に捧げるトリビュートの映像に向けるシャポバロフは、典型的なティーンエイジャーのように見えた。しかし彼の振る舞い――彼はボールボーイとボールガールの労をねぎらってお礼を言った――、相手に大打撃を与えるバックハンド・ウィナーをたたき込むそのやり方は、その年齢を超えた成熟度を見せていた。

「今年、僕はそこ(このレベルの舞台)に所属していると感じている」と彼は言った。

「僕は今日見せたように、そこで、誰とでも競い合うことができる。自分のテニスが違うレベルに至ったと感じている」

 彼は腕を振って立ち上がるよう観客を促し、スタジアムの歓声は屋根が閉じているため余計に大きく騒々しくなった。ニューヨークがすぐさまシャポバロフの街になっていくなか、会場のアナウンスは、静かにするよう観客たちを戒めなければならなかった。

「ほとんどコロッセウム、闘技場にいるように感じられたよ」とアンダーソンは言った。

「ずっと絶え間なく騒音が続いていたよ。言うまでもなく、テニス選手としては静かにしてもらったほうがいい。でも、もっと気を散らされるのは、いったん静かになって、そここからちょっとした音が聞こえてくることの方なんだ。ずっとうるさいときの方が、実際には対処が楽だね」

 しかしながらアンダーソンは、第5セットの序盤にシャポバロフのサービスを破り、セットの残りで試合のコントロールをその手に握った。ルイ・アームストロング・スタジアムと、ナダルがカレン・ハチャノフ(ロシア)に対するスリリングな試合を制したアーサー・アッシュ・スタジアムは、ひとたびフラッシングメドウに小雨が降り始めると、ともにその屋根を閉じた。

 アンダーソンは昨シーズン、どこからともなく現れて、USオープン決勝に進出した。32位だった彼は、1973年にATPコンピューターランキングが始まって以来、もっともランキングの低いUSオープン決勝進出者となった。身長203cmのアンダーソンは、そこまで33回のグランドスラム大会出場経験があったが、2015年全米でのベスト8が最高成績だったのだ。

 しかしナダルは、3度目のUSオープン・タイトルを獲る過程でアンダーソンを圧倒した。

 今季のウインブルドンで決勝に進出したアンダーソンは、一発限りの男でないことを証明して見せた。しかし、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が3セットのストレート勝ちを収め、ここでもふたたび、彼はより経験あるチャンピオンにたやすく打ち破られていた。(C)AP(テニスマガジン)

※写真はケビン・アンダーソン(南アフリカ)
NEW YORK, NY - AUGUST 31: Kevin Anderson of South Africa celebrates after winning his men's singles third round match against Denis Shapovalov of Canada on Day Five of the 2018 US Open at the USTA Billie Jean King National Tennis Center on August 31, 2018 in the Flushing neighborhood of the Queens borough of New York City. (Photo by Elsa/Getty Images)

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