憧れのスターに感激のコルダ、ナダルに敗れた直後にサインをねだる [フレンチ・オープン]
今年最後のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦9月27日~10月11日/クレーコート)の本戦8日目は、男女シングルス4回戦と男女ダブルス3回戦などが行われた。
テニス選手がグランドスラムで1-6 1-6 2-6の敗戦を喫したのに「最高の経験」「間違いなく人生最高の瞬間」と表現するのは、滅多にないことだ。さらに珍しいのは、自分を負かしたばかりの相手にサイン入りのシャツをおねだりする行為だろう。
予選から勝ち上がってきた20歳のセバスチャン・コルダ(アメリカ)は男子シングルス4回戦で第2シードのラファエル・ナダル(スペイン)に敗れたあとも、まだ興奮が冷めない様子だった。
「子供のころから大ファンだった。彼のすべてが大好きなんだ。彼の試合はひとつも逃さずに見てきたよ。どんな相手でも、どんな大会でもね。彼は僕のヒーローなんだ。信じられない瞬間で、これ以上うれしいことはない」とロラン・ギャロスで12度の優勝を誇るスターの名前から自身の猫を命名したこともあるコルダは語った。
もしナダルの試合後のインタビューにコルダがいたら、舞い上がってしまっただろう。コルダのプレーについて聞かれたナダルは「彼には素晴らしい未来が待っていると思う」と答えたのだった。
1991年以降にパリで4回戦まで進んだもっとも若いアメリカ人男子選手となったコルダは、フィリップ・シャトリエ・コートでのすべての瞬間をかみしめた。強風によってクレーコートの土が舞い上がる悪いコンディションを「時折トルネードのようだった」と表現したが、それでも彼の心は踊った。
彼の父であるペトル・コルダ(チェコ)は1998年オーストラリアンオープン覇者で1992年のフレンチ・オープンで準優勝した実績を持つ元トップ選手で、母レジーナもトップ30位に入ったこともあるテニス選手だった。そんな両親を持つサラブレッドは、ウォームアップを終えてナダルとの決戦に挑んだ。
立ち上がりのゲームでコルダがクロスコートへのバックハンドウィナーを決めてブレークポイントを掴んだが、ナダルのボディへの鋭いサービスをネットしてしまって生かせなかった。10本続いたラリーの末に放ったフォアハンドウィナーで2度目のブレークチャンスを得たが、これもボディへのサービスでナダルが凌いだ。その直後にナダルが1-0とし、彼のほうに流れが傾いた。
「最初のゲームが最大の見せ場だった。取れなかったのが本当に悔やまれるよ。でも、クレーコートでも彼を相手に戦えるという自信を手にしたゲームだった」とコルダは振り返った。
ナダルの2本のショットにコルダは痺れたという。ひとつは“キング・オブ・クレー”が放ったフォアハンドのランニングショットによるウィナーだった。もう一本は?
「彼はネットの外側から回り込む軌道のフォアハンドを放ったんだ。僕は思わず『入ってくれ!』と願ってしまったよ。決まっていれば、こんなに凄いことはないからね」
世界ランク213位のコルダにとって、忘れられない試合になったことだろう。(APライター◎ハワード・フェンドリック&ジョン・レスター/構成◎テニスマガジン)
※写真はラファエル・ナダル(スペイン/左)とセバスチャン・コルダ(アメリカ)
PARIS, FRANCE - OCTOBER 04: Rafael Nadal and Sebastian Korda tap racquets at the net at the end of the match won by Rafael Nadal of Spain in the fourth round of the men’s singles at Roland Garros on October 04, 2020 in Paris, France. (Photo by Stephane Cardinale - Corbis/Corbis via Getty Images)
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