錦織も出場のニューヨーク・オープンがロングアイランドに到来

 ニューヨークは、トップレベルのテニスを見るのに、もはやUSオープンを待つ必要はない。

 今シーズン新設されたニューヨーク・オープン(ATP250/室内ハードコート)は、多くのアメリカのトップ・プレーヤーを惹きつけるであろう大会の新しいホーム、NYCBライブ・ナッソー・コロシアムで開幕する。大会開催者たちは、将来的に、アメリカ人のトップ選手だけでなく、世界のベスト・プレーヤーを惹きつけられるようになることを願っている。

 大会は、テネシー州メンフィスにロジャー・フェデラー(スイス)やラファエル・ナダル(スペイン)を呼び寄せることはできなかったが、ロングアイランドに場所を移したことで、新しい可能性が開かれた。

「状況を気遣うアメリカ人として、この辺りでの大会がある意味で干上がり、世界の様々な場所に行ってしまうのを見てきただけに、私にとって(この大会がニューヨークで開始されることは)特に重要であると言える。私はこの大会が成功を収めるところを目にしたい」とテニス界のレジェンド、ジョン・マッケンロー(アメリカ)は言った。

「私は言うまでもなく、人々が来てくれるだろうと期待している」

 それは、運営者たちが大会をメンフィスからニューヨークに移すと決めたときに、期待していたことでもある。何十年にも渡ってメンフィスで開催されてきたこの大会の歴代優勝者の中には、マッケンローの名もある。

 しかし、観客収容人数2500人という会場のサイズと市場の規模ゆえ、大会がメンフィスで大きく育つのは不可能だった。それはすでにトップにいる選手ではなく、これから伸びようとする新進気鋭の選手のための大会のようになっていた。

 しかし、2年の改装工事を経て昨年再オープンしたコロシアムは、6000席の観客収容数を誇るふたつのショーコートを持つ。大会は色のついたコートを使うことをATPに嘆願し、その許可を得て黒いコートが使用される予定となっており、選手たちのためのモダンなロッカールームとラウンジが用意されている。十分な数のチケットを売ることができれば、それがトップ選手の誰かのための出場料となる可能性がある。

「今、我々はロジャー・フェデラーに声をかけるポテンシャルを手にしています。彼は日程やスケジューリングの都合ゆえにプレーしたいと思わないかもしれませんが、少なくとも彼のところに行き、『我々は今、十分なチケットを売る見込みを得たので、あなたにアピアランス・フィーを払うことができます』と言うことができるわけです」と大会ディレクターのジョッシュ・リップルは言った。

「純粋なビジネスの立ち位置から言えば、NYCBライブに、ここニューヨークにいるということは、我々に彼らのようなプレーヤーを惹きつける力を提供してくれるのです。我々は2018年にフェデラーに出場してもらうことは出来なかったが、2019年、2020年には競争力をつけ、そういった選手にオファーすることができるという見通しを持っている。これは、メンフィスでは決してできなかったことです」

 マッケンローは大会アンバサダーとして契約を結んでおり、大会初日の夜にエキシビションマッチをプレーすることになっている。その夜のイベントには、USオープン・チャンピオンのスローン・スティーブンス(アメリカ)とユージェニー・ブシャール(カナダ)の対戦も含まれる。

 月曜日に始まるメインドローには、USオープン準優勝のケビン・アンダーソン(南アフリカ)、ジョン・イズナー(アメリカ)、サム・クエリー(アメリカ)らの地元勢、また、元メンフィス・チャンピオンの錦織圭(日清食品)らが出場する。21歳の新鋭チョン・ヒョン(韓国)もエントリーしていたが、フェデラーに敗れたオーストラリアン・オープン準決勝で彼に棄権を強いた足のマメのため、結局出場を取り消した。

 今年最初のグランドスラム大会は、アメリカ人男子にとって惨憺たるものだったが、彼らは来週に奮起して立ち直る可能性を手にしている、とマッケンローは考えている。出場者の中には、昨年のメンフィス優勝者であるライアン・ハリソン(アメリカ)、スティーブ・ジョンソン(アメリカ)、フランシス・ティアフォー(アメリカ)、ジャレッド・ドナルドソン(アメリカ)らの顔もある。

「言うまでもなく、アメリカ人たちは、オーストラリアでかなりひどい大会を送った。だからジョン・イズナー、サム(・クエリー)らの男たちは、より本領を発揮できる場所に戻ってきて、そこで何かを証明する理由があるわけだ」とマッケンローはコメントした。

「そんなわけで、これらの選手たちが勝ち進み、それから、驚きと輝きを生み出す選手が何人か出てきて、大会を訪れるファンたちを惹きつけてくれることを願いたい」

 もしかするとアンダーソンは、ナダルに敗れたとはいえ、先の9月に初のグランドスラム大会決勝に至ったニューヨークでの調子を再発見できるかもしれない。世界11位と、出場者の中でもっともランキングが高い選手であるアンダーソンは、全豪で1回戦負けを喫したばかりだ。クエリーとイズナーもまたトップ20の選手だが、セルビアとのデビスカップのワールドグループ1回戦で、アメリカに勝利をもたらす前にメルボルンで早々に敗退していた。

「ケビンとジョン、そしてサムは、皆、オーストラリアン・オープンでのまずい成績を忘れてはおらず、それゆえ彼らにとって、可能な限り素早くいい軌道に戻ることが必要なのだ。彼らはデビスカップで勝ったが、この大会で勝利を重ね、ちょっぴりツアーポイントを獲得し、ランキングのトップ10に入ろうと努めるためのいい軌道に戻ることができたらよいと思う」とマッケンローは言った。

 大会ディレクターのリップルは、彼らがこの大会でのポジティブな経験についてほかの選手たちに話して聞かせることを願っている。シングルスに出場する28人の選手たちは、すでに昨年のメンフィスより層が厚く、少なくともニューヨークでの来たる10年間に、大会はただただより力強く伸び、発展するばかりになるだろう、と彼は信じている。

「選手たちとツアーは、きっとすごく満足し、感銘を受けると思います」とリップルは言った。「そしてそれが、私たちが期待していることなのです」。(C)AP(テニスマガジン)

※写真は昨年のリオデジャネイロの大会の記者会見での錦織圭(日清食品)
RIO DE JANEIRO, BRAZIL - FEBRUARY 20: Kei Nishikori of Japan attends a press conference during the ATP Rio Open 2017 at Jockey Club Brasileiro on February 20, 2017 in Rio de Janeiro, Brazil. (Photo by Buda Mendes/Getty Images)

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