[浜松三ケ日国際女子] 出場選手紹介⑥川﨑光美(大会提供レポート)
細身の身体から伸びた腕は、フォアのストロークを打つときも、両手でラケットを握っている。そのラケットが美しいフォームで振り抜かれると、ロブやドロップなど多彩なショットが、次々と生まれていく。
川﨑光美(テニスユニバース)のテニスは、強打を武器とする大柄選手が顔を揃える国際大会では、自ずと異彩を放つ。そしてその光は、彼女自身が歩んできたキャリアのユニークさを光源とするものだ。
「亜細亜大学でテニスをしていたんですが、それほど強くなかったので、卒業後は今の所属先でもある“テニスユニバース”でコーチをしながら、JOP大会(日本テニス協会の公式トーナメント)に出場していたんです。でも約3年前……2015年にプロに転向しました」
実年齢より遥かに若く見える川﨑が、プロ転向を決意したのは32歳のとき。当時の彼女は、JOP大会では決勝や準決勝の常連。すでにアマチュアレベルでは、目指すべき地点がなくなっていた。ならばどうするかと考えたとき、何にも勝ったのは「次は国際大会で戦っていきたい」との情熱である。
その川﨑は、今回の浜松三ケ日国際では、予選から3試合連続でストレート勝ち。本戦でも初戦で世界ランキング500位台の奥野彩加(フリー)、2回戦では西郷幸奈(フリー)ら、いずれも国際大会の経験豊富な選手たちから白星をつかみとった
「予選の初戦で当たった宮村(美紀)さんや、奥野さんも西郷さんも、皆これまで勝ったことのない相手だったんです」
かつて敗れた相手に勝てた事実は、プロ3年目の34歳に「確実に上達している」との自信と手応えを与えていく。
一方で、準々決勝で敗れた19歳の清水綾乃(Club MASA)は、3年前に勝った相手だった。その当時の高校生が、今では世界ランキング200位台の国際的な選手に――そのようなトッププレーヤーとの足跡の交錯や対戦で得られる緊張感も、彼女がプロの世界に飛び込み求めたよろこびだろう。
実際に清水との対戦では、序盤こそ若い相手の圧力に押されるも、徐々にスライスやロブを繰り出しながら、相手を翻弄し見せ場も作る。
「強い選手相手に飲まれることなく、自分のやるべきことが出来た。これは初めて覚える感覚でした」
初めて勝ち上がったITF2.5万ドル大会ベスト8の舞台で、彼女はまた一つ、新たな成長の証を身体に刻み込んだ。
「今大会にも出ている(藤原)里華さんや(波形)純理さんも、30代で頑張ってらっしゃる。お二人は若い頃から強くてすごい方たちですが、私のような雑草でも、コツコツ諦めずにやっていけば、まだまだ上にいけると感じています」
年齢なんて、ただの数字ですよね!――明るく笑う“遅れてきた新人”は、まずは今大会クラスの大会に本戦から出場できる、500位内の世界ランキングを目指す。
レポート◎内田暁(大会オフィシャルライター)
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