[浜松三ケ日国際女子] マッチレポート② 2回戦「井上雅 vs 今西美晴」(大会提供レポート)
その相手に井上雅(テニスラウンジ)は、決して小さくない苦手意識を抱いていたという。
「読みがいいし足も速いので、攻めても攻めても、ボールが何球でも返ってくる」
プロになってからの過去3度の対戦で、井上は今西美晴(島津製作所)に、いずれも接戦の末に敗れてきた。
それでも今回の対戦を迎えたとき、井上は「いつもよりポジティブな気持ちで試合に入ることができた」と言う。そのメンタリティが、初勝利への扉を開く鍵となる。第1セットは落としたが、そこから気持ちを切り替え、第2セット以降は自ら攻めて主導権を掌握した。
スコアだけを見れば、試合の流れは第2セット中盤あたりで反転したかに見える。だが実際には、第1セットの終盤にこそ、ターニングポイントはあったと井上は言う。
「第1セットは自分から何もできず、コートの後ろで守ってばかりで0-5になってしまった。そこでベースラインから下がらず、自分から攻めようと思い2ゲームを取れたのが大きかったです」
気持ちの切り替え、そして自ら攻めるテニス――。今西戦でも勝利を支えたこの2つの柱こそが、今の井上を支えるキーワードだと言えるだろう。
「今年に入ってからメンタリティが安定してきた」と彼女は端正な顔に笑みを広げ、理由を「自分の攻めるテニスを信じられるようになったから」と説明した。
その背景にあるのは、「全然勝てずに、まったく方向性が見えなくなった時期を乗り越えたこと」。
昨年は、新たなプレースタイルを模索するなかで勝利に見放され、進む先や自分が何を求めているかさえ、迷いと混乱のなかで見えなくなった。その迷走の末に辿り着いたのは、自身の持ち味である攻撃的なテニス。「昨年の辛さを乗り越えたからこそ、見えてきた」という、原点回帰ともいえる道だ。
心身ともに充実している今、彼女は数字上の目標を立てたり、大会でも「どこまでいきたい」というような先の見方はしなくなったという。ドロー表も手にしたとき、まず見るのは初戦の相手のみ。
進むべき方向が明確に見えているからこそ、迷いなく、目の前の一試合のみに集中する。
レポート◎内田暁(大会オフィシャルライター)
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