東京・有明で開催されている「楽天ジャパンオープン」（ATP500／予選9月30日、10月1日、本戦10月2～8日／東京・有明コロシアムおよび有明テニスの森公園コート／賞金総額156万3795ドル／ハードコート）は1日、予選決勝（シングルス4試合とダブルス1試合）が行われた。

　シングルス予選に出場した日本選手5人のうち4人は1回戦で敗れたが、残る一人となった19歳で世界ランク259位の高橋悠介（三菱電機）が決勝に挑み、元世界25位でウインブルドン・ベスト8のバセック・ポスピショル（カナダ）を7-6(1) 6-2で破ってツアー本戦初出場を決めた。高橋は今大会が3度目のツアー予選出場だった。

　また、ダブルス予選決勝を戦った上杉海斗（慶應義塾大4年）／島袋将（早稲田大2年）の大学生ペアは、トリート・ヒューイ（フィリピン）／アディル・シャマズディン（カナダ）に2-6 2-6、48分の試合で敗れた。

　2500人を収容する1番コートは立ち見も出るほどだった。前日の1回戦で世界133位のアドリアン・メネンデス マチェラス（スペイン）に6-1 6-2で快勝し、日本選手でただ一人勝ち残った高橋に注目が集まる。

　第1セットの最初のサービスゲームで高橋は、「納得のいくプレーができた前日のイメージを強く持ちすぎた」「緊張した」ことで硬くなり、いきなりサービスダウン。だが、直後に立ち直ってブレークバックすると、「リセットして強気になれた」と、そこから拮抗した試合へ入っていった。

　第4ゲーム以降はデュースが一度もなく、両者がサービスキープ。ただしそれは、デュースがない、スコアほど簡単な内容ではなく、一本一本の精度が問われるものだった。崩れる様子をいっさい見せず互角にプレーする高橋がタイブレークまでついていったとき、ポスピショルは最初のポイントこそ取ったものの、その後は高橋が7ポイント連取してセットを奪った。

　第2セットの出だしは、両者がラブゲームでサービスキープした。そして第3ゲームで、高橋がサービスキープに苦しむ。8度のデュースで4度のブレークポイントを握られたあとキープした。

　プレッシャーをかけ続けるポスピショルは、第5ゲームで0-40のブレークチャンスをつかんだ。だが高橋が1ポイントずつ、ショットをていねいに選んで組み合わせ、5ポイント連取してサービスキープ。この粘り強さが、ポスピショルにダメージを与えていった。

　第6ゲームでポスピショルはファーストサービスが1本しか入らず、ついにサービスダウン。4-2とリードした高橋は、ここで一気に突き放したいところだったが、第7ゲームでイージーなミスを続けて0-40となり、ふたたびピンチを迎えた。だが、ここでも高橋は気を入れ直して、ふたたび5ポイント連取し、5-2とした。

　2度も0-40のブレークチャンスを逃したポスピショルが気落ちしたことは間違いなく、最後のサービスゲームはフォアハンドを続けてミスし、敗れた。

　何度も苦しい場面を乗り越えていく高橋に、ファンの心が惹きつけられたように見えた。

　高橋はオンコートインタビューでも記者会見でも繰り返し、「今日はみなさんに助けてもらいました。みなさんのおかげでつかめた本戦です」と口にした。弱気になりそうなとき拍手が起こって励まされ、「頑張れ！」という声援に後押しされた。そこで「逃げちゃいけないと、ワンプッシュできた」と振り返った。困難を乗り越える力をファンがくれたと、心から感じたからこその言葉。だがそれは、ファンをそういう気持ちにさせた高橋のプレーがあってこそのものでもある。

「何年か前に観戦に来ていた大会で、自分がプレーしているという実感はあまりない」と言う。

　16歳で全日本ジュニアU18とインターハイで優勝。インターハイの舞台は有明だった。そして19歳の今、世界259位となり、有明でATPツアーを戦っている。これから3年後には、有明で東京オリンピックが行われる。

「オリンピックにはもちろん出場したいです。でも、そこがゴールではなく、もっと上に行きたい」

　今の目標は、グランドスラム予選を見据え200位を切ること。本戦1回戦の相手は51位のライアン・ハリソン（アメリカ）に決まった。

（編集部◎青木和子）