レフティー万歳 ~読者から届いた質問にプロが回答!~
テニス界で少数派とされるレフティー(左利き)。ここでは、高畑寿弥プロと越智真プロに読者から受けた「7つの質問」に回答してもらった。左利き必見(右利きも参考になるかも⁉)のレフティー談義がスタート!【2018年1月号掲載】
写真◎BBM
高畑寿弥プロ(橋本総業ホールディングス)トップ写真右 ※以下のプロフィールは当時のまま
たかはた・ことみ◎1989年11月17日生まれ、大阪府出身。6歳からテニスを始め、ジュニア時代はダブルスで数々の全国タイトルを獲得。2011年10月にプロ転向を果たし、同年と15年の全日本選手権女子複で日本一に輝いた。WTAランク単903位、複174位、JTAランク単49位、複8位(11月13日現在)。2020年2月現在、プロ引退
越智真(江崎グリコ) トップ写真左
おち・まこと◎1996年5月3日生まれ、兵庫県出身。8歳からテニスを始め、13年の全日本ジュニア18歳以下単を優勝。全日本ジュニア選抜室内も制し、国内の18歳以下ランキング1位を記録。15年2月にプロ転向を果たす
Q1|サービスで気をつける点を教えて!
高畑プロ
『ワイドからの展開が軸!』
第一にサービスでのアドバンテージが大きいと思います。レフティーは右利きと比べてプレーヤー数が少なく、ボールの回転や軌道も異なるので有利です。特にアドサイドからのワイドに切れていくサービスは、レフティーなら必ず武器にすべき。相手をコート外に追い出し、オープンコートをつくる展開を軸にしたほうがいいでしょう。
私はゲームの出だしが安定せず、コーチから「左利きだからまだサービスキープできているけど、これが右利きだと相手にブレークされているぞ」と怒られることもあります(笑)。やはり右利きと比べて左利きと対戦する数は多くないので、相手も慣れるまで時間がかかり、その部分でも助かっているなと思います。
越智プロ
『ボディもうまく混ぜよう!』
軸はアドサイドからのワイドサービスですが、一辺倒だと大事な場面で相手に読まれるので、要所でボディも狙ったほうがいいと思います。相手も身体に向かってくるボールに差し込まれてリターンしづらいですし、サイドラインを割るフォールトの心配もありません。大事な局面でワイドを使いたいときは、それ以前にボディもうまく混ぜる。そうすると、ポイントの獲得率アップにつながると思います。
Q2|ストロークで武器となるのは?
高畑プロ
『右利きにはない軌道の逆クロス!』
左利きはテークバックの身体のひねりが深く入り、相手に打つコースを隠しやすいと思います。それが顕著なのが、回り込みのフォアの逆クロスです。
この逆クロスは外へ逃げるスピードボールで、右利きにはない軌道。打つコースがぎりぎりまでわからず、相手の反応が遅れて体勢が崩れやすくなります。また、打ったあとはその場にステイしたままでもOK。相手が返球できる範囲が狭いので、前につめればフォアボレーで仕留めることもできます。
回り込みからのフォアの逆クロスは単複関係なく使えますし、攻撃の軸にせずとも、武器にしたほうが試合を有利に進められると思います。攻め方に困っている左利きの方は、逆クロスに打ち込む練習にも取り組んでみてください。
越智プロ
『ベルダスコを参考に!』
昔からトップ選手の動画を参考にして左利きの戦術を勉強しています。攻撃的なテニスの面で言うと、逆クロスの使い方を学ぶときはフェルナンド・ベルダスコのプレーをよく見ています。彼は逆クロスを使ったプレーを軸にどんどん仕掛けるタイプなので、攻撃面でとても参考になります。
Q3|ダブルスで 有利な点は?
高畑プロ
『“日差し”を気にせずにプレーできる!』
太陽の日差しは、試合に影響を与える要素のひとつで、選手たちはサービスゲームのときを考え、“眩しくないサイド”を確認しています。
右利きと左利きのペアの場合、どちらかのサイドは右利きにとって日差しが眩しく、左利きにとっては眩しくないサイドだったりします。そこで右利きと左利きダブルスはかなり有利です。
ダブルスはパートナーとサービスゲームを交互に打ち合うもの。右利きと左利きのペアは、どちらが最初のサービスゲームで先に打つかもスムーズに決められます。なぜなら「太陽を背にして打てるほうが先に打つ」と決めやすいからです。
これが右利き同士だと「どっちが先に打つ?」「こっちのサイドは結構眩しいよね」「最近はサービスの調子どう?」などと話し込み、試合に集中できません。その点でも左利きの選手がペアにいると有利だと思います。
Q4|ダブルスのリターンはどちらのサイド?
高畑プロ
『フォアハンドで対応する機会が増えるアドサイド!』
私はパートナーが得意とするサイドを優先して選びますが、左利きは基本的にフォアハンドで対処しやすいアドサイドがいいと思います。
ダブルスはテンポが早い上に、相手に先を読ませないことが重要です。フォアハンドはバックハンドと比べて、打つコースを直前まで隠すことができ、アドサイドなら角度をつけたリターンが可能です。フォアハンドは構えたときにタメがつくりやすく、打つ直前までコースを隠せます。よって、その状況がつくりやすいアドサイドがベストだと思います。
ペアによって考え方も変わってくると思いますが、右利きと左利きのペアはお互いの優位性を考えながらサイドを選びましょう。
Q5|スピン量の多いフォアハンドを打つにはどうすればいい?
越智プロ
『インパクト前からフォロースルーまでを意識!』
僕はどちらかというと、ボールの回転量を増やして相手をベースライン後方に下げるショットが得意です。トップスピンをかけたいときやボールの軌道を上げたいときは“フォロースルー”に意識を置くようにしています。
少し感覚的なものではありますが、ボールをインパクトする瞬間からラケットを振り抜くまでに、スイング軌道の角度によって、ボールの回転量やコースを調整するイメージです。
相手に攻め込まれたときやラリーのテンポを落としたいときは、スイングを下から上へ振り上げます。フィニッシュ時にはラケットが頭の上にきていることが多いですね。逆にカウンターを仕掛けたいとき、エースを奪うときは、ラケットをあまり振り上げず、前に振ります。
Q6|日常生活もやっぱり左利き?
越智プロ
『僕はスポーツのときだけ!』
小さい頃、親がテニスで遊ばせようとしたときにラケットを左手で持ち、そのままにしたら左利きになりました。実は字を書いたり、箸を使ったり、スマートフォンの操作などはすべて右手で行います。自分でもどちらが利き手なのかわからなくなります(笑)。
感覚としては、スポーツなどパワーを出す必要がある場合は左手を使い、細かい作業などは右手など、自分の中で使い分けています。ただ、ゴルフだけは右利き。最近はあまりプレーしていませんが、道具を借りるにしても左利き用はあまりなく、打ちっぱなしも左打席が少ないので、右で打つようにしています。
普段は左利きではないので、グリップテープを巻くときは“右巻き”でしか巻くことができず、右利き用の巻き方でプレーしています。昔からそうだったので違和感はありませんが、周りからは「左巻きにしたほうがいい」とよく言われます。自分ではうまく巻けませんが、誰かが巻いてくれたら、何も問題なく使えます(笑)。
Q7|やっぱり左利きでよかった?
高畑プロ
『左利きで本当によかった!』
左利きでよかったなと思います。人とは違うし、個性がより出しやすいのが左利きだと思います。
大会に出る際は必ず練習コートがあるのですが、当日の「左利き対策」として練習相手に選ばれることが多いのもいいですね。
あと“左利きあるある”としては、相手がとっさに中ロブを上げた際に、右利きのバックサイドに打つ習慣があると、「しまった!左利きだ!」と悔しがる対戦相手の姿も見たりします(笑)。振り返ってみても、左利きであることは私にとってすごくよかったことだと思います。
越智プロ
『いいような気もするけど…』
正直なところ、左利きがどれくらい試合に有利なのかはわかりません。男子テニス界のトップを見ると、僕も憧れているラファエル・ナダルが世界のトップにいますが、全体を見れば右利きのほうが多いと思います。それほどテニスに右利き・左利きの違いはない気もしています。
ただ、昔から左利きは有利と言われているし、自分としても「たぶん、そうなんやろな」くらいに考えていますね(笑)。
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