メドベージェフが今季初優勝で3度目のマスターズ制覇、ズベレフは第3セットで失速 [パリ・マスターズ]
メドベージェフがズベレフのビッグサーブに対抗する方法を見つけたとき、彼のメトロノームのように規則的なリズムがカチっとはまり、勝利に向けて反撃を開始した。
「強い気持ちと姿勢を保ち続けることができた。最後まで試合の中に留まることができた」とメドベージェフはコメントした。「彼に四六時中プレッシャーをかけ続け、徐々に自分のプレーレベルを上げていったおかげで最後に彼は崩れたんだと思う」。
一見するとメドベージェフのプレースタイルは華々しさはなく、試合後のズベレフの言葉を借りれば力強さもない。
しかし彼が得意としているのは、一見不安定に思われるフラットなショットでしつこく返して徐々に相手を崩していくプレーだ。ラリー中に突然スピードを上げて引っ叩いたりし、スルスルと飛んでくるが不思議と常にコート内に入ってくるフォアハンドによってアクセントがつけられた非常に正確なストロークを武器としている。ここまでの対戦相手と同じようにズベレフはイライラを募らせ、試合の流れは急速に方向を変えた。
「僕は本当に一生懸命になって対戦相手をイライラさせようとしているんだ」とメドベージェフは試合後の記者会見で皮肉たっぷりの笑みを浮かべて話した。
この結果でメドベージェフは、ズベレフとの対戦成績を2勝5敗とした。彼のズベレフに対するこれ以前の勝利は、昨年の上海マスターズ決勝でのものだった。
「僕がこんなふうにプレーしているとき、多くの選手はやりにくさを感じるんじゃないかな」とメドベージェフは分析した。「もちろん、上海の決勝と比べるのは難しい。あのときは僕が常に優位に立っていたからね。ここでは非常に競っていたから、どちらが勝者になってもおかしくなかったよ」。
これはメドベージェフにとって今年最初の決勝だったが、ドイツのケルンで2週連続優勝したズベレフは3大会連続の舞台だった。
「最後に言っておきたいことがある。多くの人々が僕から笑顔を取り去ろうとしているが、僕は変わらずこのマスクの下で微笑んでいるよ」とズベレフはコートをあとにする前に言い残した。
試合後の記者会見であのとき何を言いたかったのか正確に話して欲しいと頼まれたとき、ズベレフはあまり詳しく説明しなかった。
「ただ、多くの人ってことだよ」とズベレフは話し始め、それからポケットの中で鳴っている携帯電話に手を伸ばした。「プロのアスリートにとって、常に笑顔を取り去ろうとしてくる人々がいるものだ。彼らはやり続けることができる。でも僕は変わらず微笑んでいる」。
真意は定かではないが、大会中にズベレフは元ガールフレンドのオルガ・シャリポワさんが告発した暴力行為について否定していた。シャリポワさんはズベレフが昨年のUSオープンの前に、彼女を枕で窒息させようとしたと主張していた。
パリの決勝に一度も進出したことのない者同士、そしてここ2年のUSオープン準優勝者同士の対戦は、第1セット第12ゲームでズベレフがブレークするまで互いにサーブをキープしてブレークポイントも与えない形で進んだ。そのポイントでメドベージェフがフォアハンドをアウトしたときにズベレフは雄叫びを上げ、その声は無観客のベルシー・アリーナの静寂の中で響き渡った。
「第1セットのあと、実際僕は何をするべきか分からないでいた。何故って僕は一度もブレークポイントを取れていなかったからね」とメドベージェフは振り返った。「彼のサービスをリターンするとき、僕はいい感触を掴めていなかったんだ」。
ベースラインからメドベージェフが放つ機械のような正確さは第2セット第9ゲームでズベレフから浮いたボールを引き出し、彼はコート後方からの返球をアウトした。ATPツアーでも最高レベルとされるメドベージェフの精度の高いリターンがズベレフの自信に影響を与え、ファーストサーブからのポイント獲得率はメドベージェフの75%に対してズベレは57%だった。
13本目のサービスエースを決めて第2セットを取ったメドベージェフは、第3セットの出だしにズベレフが弱々しいフォアハンドをネットにかけてラブゲームでブレ―クされたときに試合の主導権を握った。次のゲームでズベレフが4度のブレークチャンスを逃したあと、彼は失速してメドベージェフが3-0とリードを広げた。
「第2セットの終わり、僕は疲労を感じていた。へとへとだった。僕にとって、第3セットはいつも非常に難しくなるんだ」とズベレフは明かした。「彼に対して少しでも疲れを感じ始めてしまったら、そこにつけ込まれてしまう。彼は相手をさらに疲れさせようとするんだ。彼は相手を走らせ、動かすようにプレーしてくる」。
ふたつ目のマッチポイントでズベレフがこの日3本目のダブルフォールトを犯し、メドベージェフは勝利を確定させた。彼らは11月15日から22日にかけてロンドンで行われるATPファイナルズで、ふたたび顔を合わせる可能性がある。
「僕は自分のテニスに満足している」とズベレフは明言した。「僕はただ、少し回復する必要があるかもしれないだけだ」。
昨年のロンドンのラファエル・ナダル(スペイン)と対戦したメドベージェフは、ファイナルセットで5-1とリードしてマッチポイントを手にしていた。しかし最終セットで崩壊して痛恨の敗戦を喫した彼は、その経験から多くのことを学んだのだった。
「あのことは過去に押しやり、前に進んでいかなければならないことは分かっていた。ただそこから学ばなければならないだけだ。もし5-1でリードからひとつブレークされて5-2になったとしても、まだリードしているのだからカッカしたりイライラしたりすべきではないんだ」と24歳のメドベージェフは語った。「僕はもう長いこと、メンタルの強化に取り組んでいるんだよ」。
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染を抑える目的でフランスで実施されているロックダウン(都市封鎖)のため、大会は無観客で開催された。(APライター◎ジェローム・パグマイア/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
Pick up
-
2024-04-22
予約開始『テニスフィジバト道場』(横山正吾 著)5月3日発売!テニスプレーヤーのための最新フィジカルトレーニング
Tennis Magazine extraシリーズテニスプレ
-
2023-10-30
「テニス丸ごと一冊 戦略と戦術」シリーズの第4巻、テーマは「あなたは必ずゲームがうまくなる! [ドリル編]」(堀内昌一著)
「テニス丸ごと一冊 戦略と戦術」シリーズの第4巻、テーマは「
-
2024-02-05
子どもが主体的に動き出すために大人はどうかかわればよいのか(荒木尚子/著)2月5日発売
子どもが主体的に動き出すために大人はどうかかわればよいのか(
-
2023-06-13
『ライバルに差をつけろ!自主練習シリーズ テニス』(宮尾英俊著)好評発売中!
『ライバルに差をつけろ!自主練習シリーズ』のバレーボール、バ
-
2022-12-05
勝つための“食”戦略 『最新テニスの栄養学』(高橋文子著)
Tennis Magazine extra シリーズ最新テニ
-
2023-04-03
『テニスの心理学~“心”技体を鍛えてメンタルタフになれ!』(佐藤雅幸著)
Tennis Magazine extraシリーズの最新刊『
Pick up
-
2024-04-22
予約開始『テニスフィジバト道場』(横山正吾 著)5月3日発売!テニスプレーヤーのための最新フィジカルトレーニング
Tennis Magazine extraシリーズテニスプレ
-
2023-10-30
「テニス丸ごと一冊 戦略と戦術」シリーズの第4巻、テーマは「あなたは必ずゲームがうまくなる! [ドリル編]」(堀内昌一著)
「テニス丸ごと一冊 戦略と戦術」シリーズの第4巻、テーマは「
-
2024-02-05
子どもが主体的に動き出すために大人はどうかかわればよいのか(荒木尚子/著)2月5日発売
子どもが主体的に動き出すために大人はどうかかわればよいのか(
-
2023-06-13
『ライバルに差をつけろ!自主練習シリーズ テニス』(宮尾英俊著)好評発売中!
『ライバルに差をつけろ!自主練習シリーズ』のバレーボール、バ
-
2022-12-05
勝つための“食”戦略 『最新テニスの栄養学』(高橋文子著)
Tennis Magazine extra シリーズ最新テニ
-
2023-04-03
『テニスの心理学~“心”技体を鍛えてメンタルタフになれ!』(佐藤雅幸著)
Tennis Magazine extraシリーズの最新刊『
Ranking of articles
-
2024-04-14
18歳の石井さやかがITFツアー初優勝、プロ転向後の初タイトルを獲得 [W35富士薬品セイムス ウィメンズカップ]
-
2024-04-13
2024年最初の国内ジュニア全国大会は鈴木琉斗(神奈川/慶應義塾高校)と上村睦実(愛知/名古屋LTC)が優勝 [MUFGジュニア2024]
-
2024-04-15
トップシードを守った内田海智が2021年10月以来のITFツアー9勝目 [M15キロタ]
-
2024-04-14
片山翔が男子シングルス2連覇、中川舜祐/楠原悠介はダブルス優勝 [第60回東京オープン]
-
2024-04-13
青山修子/柴原瑛菜が代表戦9試合目で初黒星、日本は3勝1敗でカザフスタンに勝利 [ビリージーンキングカップ日本対カザフスタン]