激闘の末にジョコビッチを倒したティームが決勝へ「ナーバスになり、硬くなってしまった」 [Nitto ATPファイナルズ]
USオープンでグランドスラム初タイトルを獲ったことで、ティームはビッグマッチのもっとも緊迫する瞬間に落ち着きを保てるようになると考えていたという。しかし彼はATPファイナルズにおける世界ナンバーワンのノバク・ジョコビッチ(セルビア)に対する大勝負で、その見解がいかに間違っていたかに気付かされた。
それでも第2セットのタイブレークで「ナーバスになり、硬くなってしまった」がために4つのマッチポイントをフイにしたあと、ティームは体勢を立て直した。彼は最終的にこの試合の最後の8ポイントのうち7本を取り、このシーズン末のエリート大会で決勝に進出したのだ。世界ランク3位のティームは最終セットのタイブレークで一時0-4とリードされながらも7-5 6-7(10) 7-6(5)で勝利をもぎ取り、ジョコビッチの6度目の優勝への挑戦を終わらせたのである。
「彼が第3セットのタイブレーク0-4からやってのけたことは、非現実的だった」とグランドスラム大会を17度制した実績を持つジョコビッチは脱帽した。「自分がまずいプレーをしたとは思わない…。彼はただボールを引っ叩き、すべてが入ってきた」。
第1シードのジョコビッチがフォアハンドをアウトして試合が終わったとき、ティームはラケットを落として顔を手で覆った。
それよりも1時間前に、ティームが勝負を決めることもできたはずだった。しかし第2セットのタイブレークで、ティームは「メンタル的にあまり強くなかった」ことを試合後に認めた。
ツアーで300回目のマッチ勝利を挙げたティームは、2年連続でATPファイナルズ決勝に進出した。彼は2019年決勝で、ステファノス・チチパス(ギリシャ)に敗れて準優勝に終わっていた。
ふたつ目の準決勝では、世界4位のメドベージェフが第2シードのラファエル・ナダル(スペイン)を3-6 7-6(4) 6-3で倒した。準決勝に進出した4人の中で優勝経験があったのはジョコビッチのみだったため、ティームが勝った瞬間に誰が勝つにせよ初優勝を果たすことが決まっていた。つまり同大会では、ここ6年に6人の違ったチャンピオンが誕生することになったのだ。このようなことが起きるのは、1974~79年以来のこととなる。
すでに史上最多に並ぶ6度目の年末ATPランキング1位を決めていたジョコビッチは、ATPファイナルズ優勝回数で最多記録となる6タイトルを保持するロジャー・フェデラー(スイス)に追いつくことを目指していた。
5セットの死闘の末にジョコビッチがティームを破った2月のオーストラリアン・オープン決勝の再戦カードとなったこの土曜日の対戦には多くの長いベースラインからのラリーがあり、ブレークチャンスはごくわずかしかなかった。
試合を通して3つのブレークポイントに直面したティームは、そのすべてをセーブをした。それはジョコビッチというリターンの名手が相手だということを考えると、かなり素晴らしい出来だと言える。一方でティームが掴んだブレークポイントは2つだけだったが、彼は第1セット5-5の場面でそのひとつをものにした。
第2セットのタイブレークでティームはサービスエースを決めて6-5とリードして勝利まであと1ポイントと迫ったが、ジョコビッチが時速204kmのサービスでセーブした。次のチャンスは7-6で訪れたが、ティームはダブルフォールトを犯してそれを失った。
「体中がものすごく硬くなっていた」とティームは試合後に振り返った。
続いて9-8としたティームは3度目のマッチポイントを迎えたがフォアハンドのダウン・ザ・ラインをサイドアウトし、10-9からの第4のチャンスはジョコビッチがオンラインのフォアハンドを決めてかき消された。そしてジョコビッチはそこから3ポイントを連取し、勝負の行方を最終セットに持ち込んだ。
しかしティームは気落ちしても不思議のないその状況から体勢を立て直し、『ビッグ3』の皆に対して少なくとも5度勝ったふたり目の選手となったのである。この勝利でティームはジョコビッチに対して5勝7敗とし、フェデラーに5勝2敗、ナダルには6勝9敗だった。彼以外にそれをやってのけたのは、アンディ・マレー(イギリス)しかいない。
「それは僕にとって、この上なく特別なことだ」とティームはコメントした。「彼ら3人に対するすべての試合は、とてつもなく大きな栄誉だ。学ぶため絶好の機会でもあり、自信を大きく膨らませてくれるものでもあるんだ」。
ロンドンでATPファイナルズが開催されるのは12年目の今年までとなっており、2021年から25年まではイタリア・トリノで行われることが決まっている。(C)AP(テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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