わずか19歳、世界54位のシフィオンテクがパリでグランドスラム初タイトルを獲得 [フレンチ・オープン]
今年最後のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦9月27日~10月11日/クレーコート)の本戦14日目は、女子シングルスと男子ダブルスの決勝などが行われた。
19歳にして突如グランドスラムのチャンピオンになった数分後、世界ランク54位のイガ・シフィオンテク(ポーランド)は表彰式でマイクを手に戸惑いを見せていた。彼女が躊躇ったのは、ここ2週間でこのときだけだったと言っても間違いではないだろう。
「最初に言っておきますが、私はスピーチがあまり得意ではありません」とシフィオンテクは話し始めた。「なので、すみません。最後に優勝したのは2年くらい前なので誰に御礼を言えばいいのか分かりませんが、この大会を可能にしてくれた皆様に御礼を言いたいです」。
しかし彼女がラケットを手にしたとき、話はまったく別だった。ベテランの落ち着きとチャンピオンのショットを兼ね備えたシフィオンテクは土曜日の決勝で最後の6ゲームを連取してソフィア・ケニン(アメリカ)を6-4 6-1で下し、ロラン・ギャロスでの圧倒的な進撃を締めくくった。
「2年前、私はグランドスラム・ジュニアで優勝しました。そして今、私はここにいます。すごく短い時間だったように感じます」とシフィオンテクは語った。「毎年テレビでラファ(ナダル)が優勝しているの観ていましたが、いま自分が同じ立場に立っているなんてクレイジーだと思います。信じられません」。
そう言いながら、彼女の声は初めて感情で揺れた。「ただただ、感極まっています」。
シフィオンテクはグランドスラムのシングルスで優勝した初のポーランド人であり、「母国では大変な騒ぎになっていると思います」と話した。ポーランドのある新聞は決勝に先立ち、『ポーランド・ギャロス』とヘッドラインを打っていた。
試合に終止符を打つために彼女が最後のフォアハンドのウィナーをコーナーを打ち込んだとき、シフィオンテクは右手を口に置いて屈みこみ、頭を振った。
信じがたい? そうかもしれない。結局のところこれは彼女にとってまだ7度目のグランドスラム大会であり、これまで1度も4回戦を超えたことはなかったのだ。
しかしここ2週間の彼女のプレーぶりは、この結果を大きな驚きとは感じさせなかった。彼女はパワフルで正確なグラウンドストロークをコーナーからコーナーへと打ち込み、時折ドロップショットを混ぜ、見事なリターン力とコートカバーリング能力を見せ続けたのである。
今大会の7試合を通してシフィオンテクはわずか28ゲームしか落とさず、2007年のジュスティーヌ・エナン(ベルギー)以来となる1セットも落とさずに優勝を遂げた女子選手となった。彼女はまた、1997年のイバ・マヨーリ(クロアチア)以来の10代の女子チャンピオンでもある。
そしてそれをシフィオンテクは、2018年優勝者で第1シードのシモナ・ハレプ(ルーマニア)と前年の準優勝者で第15シードのマルケタ・ボンドルソバ(チェコ)のような相手に対して6-1 6-2で勝つという圧倒的な強さを見せた上でやってのけたのだ。そのため例え21歳のケニンが2020年オーストラリアン・オープンで優勝して2度目のグランドスラム制覇を目指していたとしても、シフィオンテクが第4シードのケニンを乗り越えられたのは理にかなったことだとも言えた。
「素晴らしい大会、素晴らしい試合だったわ」とケニンはシフィオンテクに声をかけた。
今年のグランドスラム大会で16勝1敗という戦績を引っ提げ、ケニンはこの日の決勝に臨んだ。しかし彼女は第2セットで脚に問題を抱えている様子を見せ、ポイントを落としたあとに青赤白に彩られたラケットを蹴ってフラストレーションを露わにした。
試合を通して冷静さを保っていたシフィオンテクは高校を卒業したばかりで、コートに出る前にはガンズ・アンド・ローゼズの『ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル』を聴いていたのだという。
「私はメンタル的に安定していました」とシフィオンテクは振り返った。彼女はスポーツ心理学者とともにツアーを転戦し、コートチェンジでベンチに座っている間には目を閉じてゆっくりと息をして瞑想しているのだという。しかしそれでも、「今日は私にとってすごくストレスが大きいと感じていました。だからかなり厳しかったです」と言い添えた。
この週末は、通常とは違ったロラン・ギャロスの2週間のクライマックスだ。大会は新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックのために通常の5~6月から9~10月に延期され、ここ最近のフランスにおける新規感染者数増加のために政府は観客数を1日1000人に制限した。
2019年優勝者のアシュリー・バーティ(オーストラリア)や3度グランドスラム大会を制した大坂なおみ(日清食品)をはじめ、何人かの女子トッププレーヤーはエントリーを見合わせた。グランドスラムで23回の優勝を誇るセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)は参戦していたが、2回戦の前に故障で棄権した。
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