“幻のマッチポイント”で勝利が遅れるもクレイチコバが決勝進出を決める「ずっとこのような試合をしたかった」 [フレンチ・オープン]
今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月30日~6月13日/クレーコート)の大会12日目は、ボトムハーフ(ドローの下半分)の女子シングルス準決勝2試合などが行われた。
マッチポイントでバーボラ・クレイチコバ(チェコ)の足元に着地したボールは、ベースラインの後ろに落ちたように見えた。線審もそう考え、アウトとコールした。TVのリプレイもこれを裏付け、クレイチコバも確信して両手を上げて初のグランドスラム大会決勝進出を祝った。
しかしながら、主審のピエール・バッシ氏の判断は違っていた。彼は判定を覆し、ビデオのリプレイに関する議論に新たな火をつけるとともにクレイチコバの勝利を少し遅らせた。
その5ポイント後にテニス界は不公平な結果を回避し、クレイチコバはバックハンドのウィナーを決めてキャリア最大の勝利を締めくくった。彼女は最終セットの途中でマッチポイントを凌ぎ、第17シードのマリア・サカーリ(ギリシャ)に7-5 4-6 9-7で競り勝った。
「私はずっと、このような試合をプレーしたいと思っていたの」とクレイチコバは語った。
彼女はジェットコースターが好きに違いない。クレイチコバは土曜日の決勝で、ノーシードから勝ち上がってきたタマラ・ジダンセク(スロベニア)を7-5 6-3で破って勝ち上がった第31シードのアナスタシア・パブリウチェンコワ(ロシア)と対戦する。
カテリーナ・シニアコバ(チェコ)と組んだダブルスで2度グランドスラム大会を制したことがあるクレイチコバだが、シングルスでの本戦出場はまだ5度目に過ぎない。反対にパブリウチェンコワは初めて決勝に至る前に52回と、他のどの女子選手よりも多くグランドスラム大会でプレーしていた。
クレイチコバの決勝進出もまた、同様にありそうもないと思われていたことだった。
「信じ難いことのように響くわ。信じられない。でも実際に起きているのね」と彼女はコメントした。
第3セットの第9ゲームの時点では、それは特にあり得ないことのように見えた。そのときサカーリは、5-3とリードしてマッチポイントを握っていたのだ。サカーリは試合後、そこでアグレッシブな姿勢を弱めてしまったと告白した。
「決勝まであと1ポイントだと意識してしまった。正直、ストレスを感じ始めていたの。これはルーキーがしてしまうようなミスなんでしょうね」と彼女は振り返った。
その場面でクレイチコバはドライブボレーを叩き込み、ハラハラしながらも大胆なウィナーを決めてマッチポイントを凌いだ。その40分後、彼女たちはまだプレーしていた。
そしてそこから本当のドラマが起きた。最後のゲームでクレイチコバがマッチポイントを握り、サカーリはベースラインぎりぎりにフォアハンドを打ち込んだ。主審のバッシ氏は椅子から降り、跡を眺めてインだったと判定してポイントはやり直しとなった。
「彼が来て、『入っている』と言ったの。私は『ノー、ノー、ノー、違うわ、なぜ?』という感じだったわ」と彼女はのちに笑いながらそのときのことを説明した。
「でもどうすることもできないわ。彼の判定を変えることはできないのだから。『まあいいわ。先に進みましょう。次のポイントを取ればいいのよ』と考えるしかなかった」
テレビのリプレイでボールはアウトに見えたが、ボールが赤土の上に跡を残すロラン・ギャロスではビデオでのレビューは使われていない。
冷静さを保ったクレイチコバはのちに5本目のマッチポイントをものにし、今度は本当に勝利を祝った。
次の相手となるパブリウチェンコワについて、「彼女は決勝に進出したんだから、いいプレーをしているに違いないわ」とクレイチコバは話した。
同じことはクレイチコバ自身についても言える。彼女は大会前週に行われたストラスブールでシングルスでのツアー初優勝を飾り、キャリア最長のマッチ11連勝をマークしている。プロ化以降の時代でノーシードの選手がフレンチ・オープン決勝に進出したのは彼女が8人目であり、ここ5年では4人目となる。
グランドスラム大会のチャンピオンでもある亡きヤナ・ノボトナ(チェコ)の弟子だったクレイチコバは、1981年のハナ・マンドリコワ(当時チェコスロバキア)以降にロラン・ギャロスの女子シングルスで優勝した初のチェコ人になることを目指している。彼女はシニアコバとのペアで第2シードのダブルスでも勝ち残っており、2000年大会でのメアリー・ピアス(フランス)以来となる単複2冠の可能性を残している。(APライター◎サミュエル・ペトレキン&スティーブン・ワイン/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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