岡山勢の勢い止まず、団体優勝の岡山学芸館から吉本菜月、中島玲亜がシングルス8強 [北信越インターハイ]
第78回全国高等学校対抗テニス大会および第111回全国高等学校テニス選手権(北信越インターハイ テニス競技/8月2~4日 団体戦、8月5~8日 個人戦/浅間温泉庭球公園、やまびこドーム、信州スカイパーク庭球場/砂入り人工芝コート)の5日目は女子シングルス1〜4回戦、男子ダブルス1〜3回戦と準々決勝が行われた。※1、2回戦は1セットマッチ(6-6後、タイブレーク採用)、3回戦から8ゲームズプロセット(8-8後、タイブレーク採用)。
女子シングルスは全国から128名が出場し、この日も厳しい暑さの中、4回戦までの全128試合が予定通り行われ、ベスト8が出揃った。
◇ ◇
3回戦で、神奈川1位の平田葵(白鵬女子)がセンバツ個人戦優勝で今大会トップシードの五十嵐唯愛(四日市商業)を8-4で破った。この試合は団体3回戦のエース対決の再現。平田は五十嵐に2-8で敗れており、結局チームはベスト8に進むことができなかったが、その借りをこの個人シングルスで返すことができた。平田は続く4回戦で宮川このみ(札幌光星)も8-4で倒してベスト8へ一番乗りした。
平田葵(白鵬女子)
平田の準々決勝の相手は、2019年全中チャンピオンの伊藤あおい(代々木)だ。伊藤を含め、8強に勝ち進んだ2年生は3人。今年は1年生が21人出場して8強入りはなかった。
伊藤は1回戦から6-1、6-1、8-1、そして4回戦の滝澤萌夏(愛知啓成)に8-3と、各試合で失ったゲームを“3“以内にとどめ、“涼しい顔”で勝ち上がった。ベスト8の8人の中で、伊藤だけが団体戦に出場しておらず、個人戦に集中していることからエネルギーの消耗はまだ少ないように見える。
伊藤あおい(代々木)
「将来プロで活躍したいので、インターハイ、全日本ジュニアのタイトルが欲しい」と、この夏は強い覚悟をもって臨んでいる伊藤。強気を見せる反面で、裏には違う感情も持っている。「正直に言うと、ひとりだから寂しい」と本音も漏らす。高校の大会に出場すると各校が団体行動しているのに対し、伊藤はひとり。テニス部に女子メンバーはいないという。「自分が選んだ環境であることは分かっている」と前置きした上で、高校の試合に行くたび、「カモン!とか声を出したり、かけたりしているのを見て、余計に(寂しく)感じる」そうだ。だが、「力にもできる」と、すでに伊藤ならでは感情のコントロール法はある。
憧れの選手であるシェイ・スーウェイ(台湾)や伊達公子さんのような、ライジングショットやネットプレーが砂入り人工芝コートの上でも見られる。タタンと早いタイミングでボールを捕らえ、機を見てスルスルとネットに出てボレーで決めるプレーは、強打が主な他の選手たちと比べて異質であり、大きな武器に見える。
準々決勝に勝ち進んだ2年生は、伊藤のほかにふたりいる。単複2冠の可能性をただひとり持つ櫻田しずか(静岡市立)と団体準優勝の宮原千佳(第一薬科大学付属)だ。
櫻田しずか(静岡市立)
櫻田は、団体2回戦の対奈良育英(奈良)、3回戦の対新田(愛媛)のS1対決に勝利。続く個人ダブルスを勝ち上がってベスト4へ、個人シングルスもベスト8へ進出と、今日現在負けていない。大会6日目にはシングルス準々決勝と、勝てば準決勝、さらにダブルス準決勝を戦う予定で、体力も気持ちもきつくなるだろう。ただ、2種目を戦うことは櫻田にプラスに働いているようだ。前日のダブルスを戦ったあと、こう言っていた。「シングルスで勝てない相手にダブルスで勝てると、自信をくれる」。その通りのことが起きている。
櫻田のシングルス準々決勝の相手は山口花音(浪速)だ。ダブルス準々決勝では櫻田/稲葉梨莉で山口/堀江ちひろを破って勝ち上がった。櫻田の勝利の方程式で進むのだろうか。
山口はシングルス4回戦で地元・長野の期待を背負った中山友里(松商学園)を8-6で退け、近畿勢で唯一のベスト8進出を果たした。
山口花音(浪速)
ベスト8の3人目の2年生、宮原は1回戦から6-1、6-2、8-4、8-3と勝ち進み、団体戦準優勝の勢いを継続している。ただ3回戦の堀江菜実(沖縄尚学)、4回戦の小畑莉音(四日市商業)との対戦は、暑さと疲労からか、スコアほど簡単ではない試合に見えた。
宮原千佳(第一薬科大付)
団体初優勝の岡山学芸館からは、シングルスのふたり、吉本菜月と中島玲亜がベスト8に駒を進めた。団体準優勝の宮原同様に、これまでに相当な試合数をこなしているが、このふたりも周りにタフさを見せつけている。
吉本菜月(岡山学芸館)
吉本は、1回戦でダブルス4強の稲葉梨莉(静岡市立)を6-2で倒すと、2回戦では京都3人目の代表、久保まこ(京都外大西)に7-6(4)で辛勝、3回戦では宮本幸奈(東京学館船橋)を8-4で、4回戦ではダブルス4強の中川由羅(浦和麗明)を8-5で倒し、厳しい戦いを乗り越えた。また中島は、1回戦から6-2、6-2、8-4、8-5と着実に勝利を重ねている。団体決勝の第一薬科大学付属戦のS2対決で敗れていることに自身で触れたあと、「優勝したことは自信になっている。でも自分は負けている。団体は終わったこととして、今はシングルスに集中して優勝を目指したい。一試合一試合しっかり勝つ」と高い意識を保っている。
中島玲亜(岡山学芸館)
中島が準々決勝で戦う相手は、団体ベスト4の結果にダブルスで貢献した丸山愛以(四日市商業)だ。丸山にとって、このインターハイは初めての個人戦の全国大会。金山敦思監督はその丸山について、高校3年間での成長を手放しで褒める。「この3年間で本当に成長した選手。練習もトレーニングもさぼらないんです。走る、飛ぶ、投げる、打つ、とにかく運動能力が高く、それでいて欲も10倍」と笑う。
インターハイ予選の三重県大会で決勝に進み、チームメートでトップシードの五十嵐に敗れ準優勝だった。全日本ジュニアの予選、東海ジュニアでは準決勝まで勝ち進み、今度は五十嵐に初めて勝った。そこをきっかけに「(もっと上に)いけるのかなと」思ったそうだ。「自分が強くなっている感じはまったくなくて。メンバーの中では自分が“どべ”だから、人一倍練習やトレーニングをやってきた」と振り返る。
丸山愛以(四日市商業)
丸山は4回戦で、森岡きらら(神村大阪梅田)を9-8(6)で倒した。森岡は、2020年全日本ジュニア選抜室内(JOCカップ)の準優勝者。同世代から見る森岡は、数々の大きなタイトルを持ち、海外に挑戦する雲の上の人に映るらしい。「他の(強い)選手やプロや大学生のテニス動画をよく見るんです。森岡さんの動画もお手本にしていました。その森岡さんと対戦できることがうれしくて。また、勝てたことがうれしくて」と、同い年の対戦相手と見ているようではない。その気負いのなさが、もしかすると今大会の“台風の目”となるのではないか、と思わせる。
次の中島との対戦については、「相手の気迫に負けないように、粘り強く、足を使って、気迫と根性で戦います」と、初めての全国大会の楽しみは尽きない。
森岡きらら(神村大阪梅田)対丸山愛以(四日市商業)
◇ ◇
大会6日目の8月7日は個人戦の男女シングルス準々決勝、準決勝、男女ダブルス準決勝が浅間温泉庭球公園で行われる。いずれの試合も8ゲームズプロセット(8-8後、タイブレーク採用)。試合開始時間は9時の予定。
編集部◎青木和子 写真◎菅原 淳
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