朝から雨で再三の予定変更、女子シングルス2回戦の一部を翌日に順延、男子シングルスは3回戦進出者が決定 [インカレ]
全日本学生テニス連盟が主催する学生テニス日本一を決める“インカレ”ーー「2021年度全日本学生テニス選手権大会(男子89回/女子65回)」(三重県四日市市・四日市テニスセンター/予選8月12日〜、本戦16~23日/ハードコート)は18日、男子シングルス2回戦32試合と女子シングルス2回戦32試合のうち、ドローのトップハーフ16試合を戦い終えた。
この日も朝から強い雨に降られ、屋根付きコート8面で試合は進行。天候回復を期待しても断続的な雨でそれも叶わず、早い段階で女子シングルスのボトムハーフ16試合が翌日に持ち越された。本戦が始まって3日が過ぎたが、まだ初戦を戦っていない選手たちがいる事態だ。
屋根付きコートでも強い風で雨が横から吹き込み、試合が中断することもある
予選が始まった12日から雨は降り続いており、連日スケジュール調整が行われている。すでに予備日の23日も使用してスケジュールを組んでいる状況。だが、荒天はまだ続くと予想され、スケジュールのやりくりのほかに試合形式を変更して対応している。
男女シングルス1、2回戦はベスト・オブ・3タイブレークセット(第3セットは10ポイントマッチタイブレーク)に、第1、第2セットでノーアドバンテージ方式(40-40になったらレシーバーがサイドチョイスし、1ポイント勝負)を採用。
さらに、男女シングルス3回戦も試合形式を変更して行うことが決まった。ベスト・オブ・3タイブレークセット(第3セットは10ポイントマッチタイブレーク)に、第1、第2セットはセミアドバンテージ方式(40-40になったらデュースを一度行い、次のデュースはレシーバーがサイドチョイスして1ポイント勝負)を採用する。
こうした“サドンデス”の戦いとなることは、選手たちの緊張をさらに高める一因となっている。上位シードを含む2回戦が初戦の選手たちのプレーがそれを物語っていた。そもそも新型コロナウイルス対策として選手たちは会場内にいる時間が決められ、そこに悪天候が重なって、普段なら行える練習すら行えていない。ボールが打てるのは、試合コートに入ってから行うウォーミングアップのみ。心も身体も整えるのが難しい状況にある。
そんな中、男子シングルスの第1シードで前回インカレ・チャンピオンの白石光(早稲田大3年)が2回戦で河野健(明治大3年)を6-2 6-1で破り、ようやく大会をスタートさせた。
試合後の白石光(早稲田大学3年/右)と河内健(明治大学3年)
「今日、会場のコートで初めてボールを打ったんです。最初は硬くなっててこずってしまった」と白石。練習できていないこと、対戦相手の河野が予選から1回戦まですでに3試合をプレーして準備ができていること、ファイナルセットの10ポイントマッチタイブレーク、ノーアド形式の“サドンデス”があることなどを考え合わせて臨んだ試合。緊張を抱えながらも、しっかり心して入った試合では、プレーしていくほど白石の経験が呼び起こされた。
「三重でインターハイもインカレも優勝して、このコートにはホーム感がある。勝っているコートという自信が持てる場所だと改めて思った」と、笑顔を見せた。インカレ連覇を目指すことへの気負いがなく、余裕のようなものがあるように感じられたのは、ある決心があったからだった。将来のプロ転向を決めたと言った。
「インカレの結果はどうあれ、決めたことは変わらないことなので、勝とうが負けようがフラットな気持ち」と目の前の勝ち負けよりずっと大きな目標を見据えていることが、今の白石の強みになっているようだ。
女子シングルスの第1シードで前回インカレ・ベスト4の平田歩(慶應義塾大4年)は田中菜冴美(姫路大3年)を6-2 6-1で破り、最後のインカレをスタートさせた。
平田歩(慶應義塾大4年)
「インカレは1年のときから目指してきたもの。でも(今大会は)タイトルを意識して戦ってはいません。いつも通り」と平田。初タイトル獲得に向かう気持ちはもちろん強いが、マイペースでいる。雨で試合が順延されていく毎日に、「くるかと思ってはこなくて。どんどん緊張していった」と言うが、初戦は「ラリーをしようという気持ちでいたのがよかった」と、田中と打ち合うことを心がけて良い結果を得た。
「今回が最後の個人戦です。テニスはひと区切り」と平田は言った。大学卒業後の進路について、競技選手を続けるのではなく一般職に就くという。今の望みは「インカレからリーグ戦に繋ぎたい。人のためにできることをしたい」と、最後の夏を戦っている。
シードが付いた選手たちはやはり強かった。シードダウンは男女ともひとりずつ。男子が第5〜8シードの白藤成(慶應義塾大3年)、女子が第13〜16シードの西本聖良(姫路大3年)。白藤は1年生の山口柚希(早稲田大)に4-6 1-6、西本も同じく1年生の斉藤瑠奈(亜細亜大)に4-6 3-6で敗れた。
山口柚希(早稲田大1年/奥側)対白藤成(慶應義塾大3年)
元プロという異色の経歴を持つ白藤に対し、1回戦のインカレ初勝利から自信を漲らせる山口が猛攻し続け、白藤はそれに対し「ひるんでしまった。相手が予想以上によくて。特にフォアがよく、やり合うこともできなかった。ここまで打たれ続けたこともないくらい」と肩を落とした。
高校卒業後、プロ転向した。世界で活躍することを夢見たが、手首のケガで長く競技から離れた時間に考え方が変わったという。テニスしか知らない自分ではだめだと気付き、しかし、テニスを諦めるのではなく続ける道を考えて、今の進路へと変更した。「これまで自分がやってきたことを生かしつつ、もっとうまくなりたい。大学テニスで過ごす時間は、将来のために大事だと思っている」。
男子1年生で3回戦進出を決めたのは、山口のほかに新井翼(法政大)、下村亮太朗(慶應義塾大)。女子はトップハーフから斉藤瑠奈(亜細亜大)が3回戦に進んだ。
19日は、女子シングルス2回戦のボトムハーフ16試合と3回戦、男子シングルス3回戦、男女ダブルス1回戦が行われる。悪天候を想定して屋根付きコート8面での進行。試合開始は8時15分の予定。
編集部◎青木和子 写真◎BBM
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