渡部将伍(早大3年)が羽澤慎治(慶大4年)を破り8強へ、女子は大会5日目でようやく16強が決定 [インカレ]

渡部将伍(早稲田大学3年)写真◎BBM


 全日本学生テニス連盟が主催する学生テニス日本一を決める“インカレ”ーー「2021年度全日本学生テニス選手権大会(男子89回/女子65回)」(三重県四日市市・四日市テニスセンター/予選8月12日〜、本戦16~23日/ハードコート)は本戦5日目の20日、男子シングルス4回戦8試合と女子シングルス3回戦32試合のうち、残していた11試合、そして男女ダブルス1回戦16試合+16試合を終えた。

 この日も朝から雨が降り、屋根付きコート8面で試合がスタートした。しかし開始してすぐ、雨が横から吹き込むコート2面は使用できず6面で進行することに。天気の機嫌を見ながら8面に戻し、青空が広がった時間帯にはアウトドアコートも使用してダブルスをプレー。だが、結局はふたたびの大雨に見舞われ、屋根付きコートのみでなんとか予定の試合を終えた。三重県は20日から新型コロナウイルス対策としてまん延防止等重点措置地区となり、施設の利用は20時までに制限される。


時々降る大雨が進行のじゃまをしている

 男子シングルスのベスト8が決まった。早稲田大が8人中4人を占め、第1シードの白石光、第5〜8のシード丹下将太、第13〜16シードの渡部将伍、ノーシードの小久保蓮を加えた全員が3年生。もうひとり関東勢がいて、8人中最年少の第11シード藤原智也(慶應義塾大2年)だ。

 また、近畿大から2人が8強入りした。第5〜8シード田口涼太郎(近畿大3年)と第13〜16シード松田龍樹(近畿大4年)。そして、もうひとりの関西勢が第5〜8シードの松田康希(関西大3年)。

 シングルスの4回戦までは、第3セットが10ポイントマッチタイブレークの試合形式で、その“短期決戦”にもつれ込むと、勝負はどちらが勝ってもおかしくないものになる。


白石光(早稲田大学3年)

 第1シードの白石光(早稲田大)は後輩の2年生、池田朋弥のビッグサーブ、ネットプレーに終始苦しめられたが、 4-6 7-5 [10-7] で準々決勝に駒を進めた。

 白石がラリーで主導権を握りポイントを取る、池田がサービスエースでポイントを取る。白石がパスを打つ、池田がボレーで止める。白石がロブを打つ、池田がスマッシュを決める。このやりとりの中、あらゆる手を尽くしてミスを引き出し、勝利を手繰り寄せたのが白石だった。

 大きなターニングポイントは第2セット5-5、池田のサービスで30-30のとき。ネットにつめた池田はネット際でスマッシュをネットにかけてしまった。痛恨のミスだった。だが、一方で違う見方もできる。そのロブは、白石が追い込まれた状況でありながら最大限努力して高く上げたロブで、ただのロブではない。30-40となり、池田にはまだ取り返すチャンスがあったが、白石のショットがネットに当たって池田のコートに弾むと、取りにいった池田だがショートクロスをサイドアウトし、大事なサービスゲームを落とした。


池田朋弥(早稲田大2年)

 10ポイントマッチタイブレークも一進一退の攻防が続き7-7。ネットに出て攻め続ける池田に、白石がまたしても執念のロブ。今度は池田にバックハンドハイボレーを打たせ、これがサイドラインを割った。以降もふたりはベースラインとネットで応戦を続けるが、池田はもうポイントを取ることはできなかった。

 普段から練習しているチームメイト。「日常生活もずっと一緒にいる」(池田)というふたりだけに手の内は知り尽くしている。「ラリーは勝ち目がないから、得意のサーブとボレーで勝負すると決めていた。僕が勝つとすれば、第2セットで決めるしかなかった。あのスマッシュミスが悔やまれます」と池田は振り返った。

 試合が終わったとき、白石はしばらく天を見上げていた。池田は、大学テニスのトップに君臨する先輩に迫れたことに満足する気持ちが強かったのだろう、笑顔で白石と握手をした。そのときは「楽しかったという気持ち」。ただ、振り返ると、「ベスト16に入って、心のどこかに満足した自分がいて。絶対に負けられないと思っている光さんとの差があった」。挑戦は、まだ始まったばかりだ。


羽澤慎治(慶應義塾大4年)

 1年生でインカレ準優勝、2年生でベスト16、3年生でベスト4と、優勝を目指してきた羽澤慎治(慶應義塾大4年)が、第13〜16シードの渡部将伍(早稲田大3年)に敗れた。第1セットを6-3で奪い、第2セットも3-0とリード。しかし、そこから1ゲームも奪えず3-6でセットを落とし、タイブレークは[8-10]だった。

「第2セットの3-0、40-40でリターンミスを2本。相手もいいサービスだったが、自分が集中しきれていなかった。そのあと相手のミスが減ってきて、何もできなくなってしまった」と羽澤。リードしていても、「気持ちよくプレーできていなかった。初戦も3回戦も。でも、トーナメントの中では内容がよくない試合もあって、その中でも勝って次に繋げなければいけなかった。結果も、自分のテニスも出しきれず終わってしまって、悔しいです」と肩を落とした。

 来年プロとして活動することを視野に入れている羽澤は、単複タイトルを目指して準備してきた。ダブルスの戦いはこれから始まる。


渡部将伍(早稲田大3年)

「今までテニスをしてきた中で一番うれしい」と渡部は笑顔を見せた。試合が始まって最初のうちは「相手のほうが格上で、名前負けしていた」という。だが、羽澤が振り返ったゲームを渡部も振り返り、1ゲームを取って3-1としたあとから、冷静になり戦術を変えた。「スピードを緩めてプレーさせるようにした。バックにミスが出てきてラリーに活路が見出せた。もしかしたらいける、と。希望が持てた」と渡部。戦術的なプレーで逆転に成功。10ポイントマッチタイブレークに入っても、「ペースを上げ過ぎず、いけるときにいく」と心に決め、やり遂げて掴んだ勝利だった。

「最低でもシードを守ってベスト16まで頑張ろうと思っていた。でもここまできたら、目の前のこと、一つ一つに集中して、いけるところまで勝つつもりでいきたい。明後日から3セットマッチになるので体力勝負。しっかりリカバーしたい」(渡部)

 女子シングルスのボトムハーフは、もっとも進行が遅れていたグループで、この日ようやく残っていた3回戦の11試合を終えた。予選から戦い続けて5試合目も勝利を挙げた大川美佐(慶應義塾大2年)と石川琴実(早稲田大学3年)がベスト16入りを果たした。


阿部宏美(筑波大3年)

 11試合のうち3試合で第3セットの10ポイントマッチタイブレークが行われた。第8シードの神鳥舞(早稲田大2年)が塚田結(筑波大2年)を5-7 6-3 [10-8] 、押川千夏(早稲田大3年)が吉川ひかる(亜細亜大学2年)を6-4 6-7(3) [10-4]、そして第2シードで前回インカレ・チャンピオンの阿部宏美(筑波大学3年)が鈴木渚左(明治大学1年)を6-7(6) 6-1 [10-8] で破って、それぞれベスト16入りを決めた。


鈴木渚左(明治大1年)

 阿部は第1セットを落としたあとからの逆転勝利だった。10ポイントマッチタイブレークでは9-5でマッチポイントをつかんだが、あと1ポイントとなったあとから、阿部のフォアのミス、鈴木のネットプレー、回り込みフォアが決まって9-8まで追いつかれた、鈴木が迫ってくる中、最後は鈴木のストロークがコートに入らず決着はついた。

 紙一重の結果に「緊張した」と阿部。「相手のテニスにはまってしまった。緩いボールとネットプレーの組み合わせで、ラリーもできる。自分から攻めたかったが、付き合ってラリーをしたり、どっちつかずだった」と反省の言葉を述べた。

 鈴木は、「攻めたけど、あとちょっとが入らなかった。悔しいです。悔しいですけど、あそこまで追い詰められたことは、自分がやってきたことが第2シードに通用するとわかってよかった」と前向きだった。その一方で、「もっとサーブ力をつけて、もっと全体的に上げないと。今回は初めてだから通用したと思う」と冷静に自己分析した。1年生ながら上位選手をぎりぎりまで苦しめた、確かな実力の持ち主だ。


予選が始まった12日から連日の雨となっている四日市。一瞬青空が広がり、アウトドアコートで数試合が行われた

 大会6日目の21日(土)は、女子シングルス4回戦8試合と、男子ダブルス2回戦16試合、3回戦8試合、女子ダブルス2回戦16試合が行われる。悪天候に備え、屋根付きコート8面での進行を予定。試合開始は8時15分から。

 試合形式は、女子シングルス4回戦がベスト・オブ・3タイブレークセット(第3セットは10ポイントマッチタイブレーク)、男女ダブルスはベスト・オブ・3タイブレークセット(第3セットは10ポイントマッチタイブレーク)、ノーアドバンテージ方式(40-40になったらレシーバーがサイドチョイスして1ポイント勝負)で行われる。

編集部◎青木和子 写真◎BBM

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