ライバルとの「夢の決勝」を制して坂本怜が全国初優勝 [2021全中]
福島県会津若松市を舞台に開催された「第48回全国中学生テニス選手権大会」(会津総合運動公園テニスコート)の大会最終日は個人戦シングルスの2回戦から決勝、個人戦ダブルスの1回戦から決勝が行われ、男子シングルスは第5~8シードの坂本怜(名古屋市立楠)が決勝でトップシードの富田悠太(名古屋市立矢田)を6-3で下し、全国初優勝を果たした。
1セットマッチを4試合戦うタフな一日。それでも決勝に駒を進めた2人に疲れはなかった。2018年の全日本ジュニアU12を制したことがあり「第1シードのプレッシャーは感じなかった」という富田は危なげなく3試合をクリア。坂本もシードが崩れていった山をスルスルと勝ち上がっていき、「名古屋対決」が実現した。
決勝の舞台とはいえ1セットマッチの短期決戦。先制パンチがものをいう。結果的には第2ゲームで坂本が奪ったブレークが勝負を分けた。しっかりとリターンを合わせてラリー戦に持ち込むと、鋭いショットをライン際に突き刺してリードを奪った。
坂本はサービスに鋭いバックハンドが冴えた(写真◎菅原淳)
「最初のブレークが大きかった」と坂本が振り返るように、その後は富田も持ち前のアグレッシブさと多彩さを取り戻してサービスキープを続けた。しかし、坂本のサービスゲームはそれを上回っていた。
「安心感があった」というように身長191cmから繰り出されるサービスが確率よく収まり、3本目からのアタックで悠々とポイントを重ねていく。たとえ相手に主導権を握られても、「得意のショット」だというバックハンドのダウン・ザ・ラインで一瞬にして切り返してしまう。
第7ゲームで40-0から2度のデュースに持ち込まれた場面を凌ぎきると、マッチゲームとなった第9ゲームではファーストサービスを4本揃えてラブゲームで締めくくった。初の全国タイトルに「めちゃくちゃうれしい」と笑顔を弾けさせた。
2人にとっては、「ともに」全国の決勝の舞台にたどり着いたことがひとつのゴールだった。小学4年生で出会ってから同じクラブで腕を磨き、切磋琢磨してきた。ネットを挟めば、その日の調子次第で勝負がどちらに転ぶかわからないという実力伯仲。全中に向けても愛知大会では坂本が、東海大会では富田が優勝しての「3度目の激突」だった。
敗れた富田は悔しさとともに喜びも口にした(写真◎菅原淳)
坂本が「優勝を狙っていたし、富田と決勝をやりたかったから、本当によかった」と話せば、富田も「小学生のときから2人で全国の決勝を戦うことが目標だったので、それはうれしい」と悔しさよりまず喜びを口にした。
もちろん富田は「自分の力を出しきることはできたが、知り尽くしている相手なので勝ちたかった」と言葉を続け、「次に生かしたい」とリベンジを誓う。一方の坂本は「うまくてアグレッシブで凄くプレッシャーを感じたが、やってくることはわかっていた」と今回ばかりは一枚上をいったようだ。
全国の頂点を決める舞台に一緒に立ったことはひとつのゴールかもしれないが、2人のライバル物語とさらなる成長の新たな幕開けとなっていくはず。これからも目が離せない戦いを繰り広げていくはずだ。
男子ダブルスは小島/島が「決意の優勝」を果たした(写真◎菅原淳)
男子ダブルス決勝はノーシードから勝ち上がってきた小島温仁/島笙太(京都市立嘉楽)が第3~4シードの中廣勇太/清水陸来(名古屋)を7-6(4)で下して優勝を飾った。小島/島が2-0とリードしたところで雷による中断、インドアのあいづドームへの移動もあって流れは二転三転したが、最後はタイブレークで振りきった。
小島が「120点。こんなに調子がいいことはなかった。初めてこんなに強気でプレーできた」と喜びを爆発させれば、島も「小学生から組んでいて全国優勝が目標だったので、凄くうれしい」と言葉を続けた。
今年から全中は日程短縮もあってシングルスとダブルスのダブルエントリーはできなくなり、シングルスを優先する選手が多かった。その中で、決意を持ってダブルスでの出場を決めた。小島は「ダブルスに出ると決めてから、地区大会から全国優勝しか考えていなかった。優勝するために頑張ってきた」と言葉に力をこめ、島も大きくうなずいた。まさに「決意」がもたらした優勝だった。
編集部◎杉浦多夢 写真◎菅原淳
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