2021-08-21

ジュニア

大舞台で進化を遂げた中富奏太が全小王者に輝く [第39回全国小学生]

中富が見事に全小タイトルを手にした(写真◎真野博正)


 第39回第一生命全国小学生テニス選手権大会は最終日を迎え、東京都世田谷区の第一生命保険株式会社相娯園グラウンドテニスコートで男女シングルスの準決勝、決勝などを行った。

 男子シングルス準決勝は、第8シードの丸山楓湊(東京・八王子市立みなみ野君田小学校6年)と第9シードの中富奏太(大阪・寝屋川市立第五小学校6年)、第6シードの柳宏優(埼玉・深谷市立深谷小学校6年)と第10シードの天野雄太(東京・成城学園初等学校6年)がそれぞれ対戦した。

 前日の準々決勝で第1シードの櫻井義浩(千葉・千葉市立幕張西小学校6年)を倒した中富の勢いは衰えていなかった。丸山の緩急を付けながら強打を打ち込むプレーも光ったが、中富がここでも粘りと勝負強さを見せた。

天野は準決勝で競り負けた(写真◎真野博正)

 もう一方の対戦は3時間超のマラソンマッチになった。クレーコートが得意な選手のプレーを参考にしているという天野は、エッグボール系のショットを次々とライン際に沈め、展開していく。その組み立ての巧みさに会場からため息がもれた。一方、柳のテニスは躍動感たっぷり。自分に言い聞かせるように独り言をもらし、気持ちを盛り上げ、ときに落ち着かせる。長いだけでなく、大会を通じて出色の熱戦となったが、軍配は柳に上がった。

 敗れた天野は体力切れを悔やんだ。「体力をつけて、ファイナルセットも第2セットまでと同じようにできたら」。痛恨のミスに顔をゆがめる場面もあったが、メンタルは崩れそうで崩れなかった。「前はメンタルが切れて負けたりしてたけど、最近はちょっとメンタルが強くなったと思います」。かつての短所を長所に。11歳が180度の転回をやってのけようとしている。

 決勝のコートに立ったのは、第6シードの柳と第9シードの中富だ。トップシードではないが、ここまでの戦いを見れば大会のクライマックスを飾るにふさわしい2人だ。スタートから柳が大きくリードしたが、中富が追い上げ、タイブレークで第1セットをものにした。逆転劇を演出したのは、中富の試合運びのうまさだった。

柳はあと一歩でタイトルを逃した(写真◎真野博正)

 敗れた柳が上手に説明してくれた。序盤は弾道の低い、速いボールの打ち合いが目立った。柳は相手のプレーを「ちょっとミスは多かったけど、しっかり打ってくるというか、球が向かってきていた」と感じた。ところが、劣勢の中富がプレーを変えてきたのだ。「自分がリードしてから、相手がディフェス気味というか、しっかりコートに収めるテニスをしてきた」と柳。準決勝の疲れもあって、柳は相手の変化についていけず、次第に焦りも出てきた。

「第1セットの前半はしっかり自分のテニスができて、しっかり気持を持てていたのですが、(セットの)後半、相手がプレーを変えてきたときに自分のミスが増えてしまった。修正しなければいけなかったのに、自分のテニス、気持ちを最後まで続けることができなかったと思います」

クレバーさが光った中富(写真◎真野博正)

 試合は中富の思うように進んでいった。相手の集中力の低下に乗じて第2セットは一気呵成にたたみかけた。「守るところは守って、攻めるところは攻めることができていた」と中富。第1シードの櫻井を破った準々決勝でも同じ意味の言葉が聞かれたが、これこそ第9シードが栄冠をさらった最大の要因だ。

 もともと、攻めるテニスで勝ってきたが、全国大会で攻撃力の高い選手と戦ううちに「守るところでは守る」ことを会得した。この決勝では試合中に「コートに収めるテニス」に切り替えるクレバーさも見せた。全国大会という舞台と強い相手が進化を促したのか。

「今回はほぼ守って勝ったっていう感じです」と中富。普通は自嘲気味に吐かれる言葉だが、中富の「守って勝った」には満足感と充実感が詰まっている。

続きを読むには、部員登録が必要です。

部員登録(無料/メール登録)すると、部員限定記事が無制限でお読みいただけます。

いますぐ登録

取材◎秋山英宏 写真◎真野博正

Pick up

Related

Ranking of articles