“縁がある”2年生対決、山崎郁美(亜大)が照井妃奈(筑大)を破り準々決勝進出 [2021インカレ]
全日本学生テニス連盟が主催する学生テニス日本一を決める“インカレ”ーー「2021年度全日本学生テニス選手権大会(男子89回/女子65回)」(三重県四日市市・四日市テニスセンター/予選8月12日〜、本戦16~24日/ハードコート)は、本戦6日目の21日、女子シングルス4回戦(8試合)、男女ダブルス2回戦(各16試合)、男子ダブルス3回戦(8試合)が行われた。
予選が始まった8月12日から10日間、連日悪天候に進行を阻まれて大会はすでに予備日の23日、24日も使わなければ終わらない異常事態となっている中、この日は予定通りに試合が終了した。天候の問題のほかに、三重県は20日から新型コロナウイルス対策として蔓延防止等重点措置地区となり、施設の利用が20時までに制限されたため、大会は適切な進行が求められている。
雨の合間をぬってダブルスの一部がアウトドアコートで行われた、そのほかの試合は屋根付きコートで進行。青空の下、シングルスが行われる日はいつになるのだろうか。もはや“インカレ・インドア”になっている
女子シングルス4回戦8試合のうち、唯一の2年生対決となったのが第3〜4シードの山崎郁美(亜細亜大)と照井妃奈(筑波大)の試合だ。ふたりはお互いに、“縁がある”ことを戦う前から意識していた。
山﨑郁美(亜細亜大2年)
ふたりの初対戦は2年前、高校3年生でプレーしたインターハイ準々決勝。勝ったのは照井で、照井はその後も勝ち進み、北海道勢初のインターハイ・チャンピオンになった。次に対戦したのは昨年、大学1年生のインカレ予選。今度は勝ったのは山崎で、インカレ初出場を果たすとベスト4まで勝ち進み大学テニスのトップクラスに躍り出た。敗れた照井はインカレに出場できず、「インターハイに勝って(優勝したプレーヤーが)、インカレにいけない」と、自分自身も思ったし、周囲の目もあったと振り返った。その悔しさがずっとあったという。
それに加え、照井は同学年に対するライバル心が相当強い。「同い年に負けたくない」ときっぱり。1回戦から4回戦までの対戦相手全員が2年生だったことは偶然だが、それも勝ち上がる原動力になったようだ。3回戦では全日本ジュニア18歳以下チャンピオンで第13〜16シードの山口瑞希(関西学院大)を倒して勝ち上がった。
照井妃奈(筑波大2年)
今大会のドローに山崎の名前を見たとき、照井は「自分にとって一年越しのリベンジマッチになる」と、山崎と対戦する可能性がある「4回戦を目標に、勝ちにいった」。
山崎は、その思いが照井にあることを想像していたという。「悔しさをぶつけてくることはわかっていたので、不安もあったけど、立ち向かおうと思っていた」。
第1セットを山崎が6-2で先取。第2セットは照井が2-0とリードするも、すぐに山崎がブレークバックして、シーソーゲームとなった。照井は、「足が速くて守備がよく、プレーの幅が広い」山崎に対して、「1ポイント1ポイントが重たいというか、取るのに必死だった」という。それに対して山崎は、「以前よりも攻撃的で、精度が上がっている」照井に、「自分がやりたいプレーができない状況だったが、目の前の相手をどうするかを大事にプレーしようと思った」。
大局を見ていたのが山崎のほうだった。5-5のあと、照井がサービスの確率を落としたことを見逃さず、リターンで積極的に打って出て展開することを心がけ、ブレークに成功。そして、最後のゲームは武器であるサービスとフォアの組み合わせで締めくくった。
敗れた照井は「悔しい、のひと言です。取りたいときに安全にいってしまった」と、それが無意識だったことを悔いた。照井から見た山崎は、取りたいときほど「先に展開しているように見えた」そうだ。初のインカレは、「シードに勝って目標の4回戦にいけた」ことで合格点とした。次に掲げる目標は明確で、「インカレ優勝。全日本も目指します」。
1年生でインカレとインカレ・インドアでベスト4。2年生の今、頂点を目指す山崎は、今大会、そしてその先でどんなプレーをしたいと思っているのか目標を尋ねると、「サーブとフォアでアグレッシブに、最終的にはネットでポイントを取りたい。ただ、そうはいかないときもあるので、見極めながらやることが大事です」と冷静に言った。
次のひと言は自ら言い添えた。「火曜日が誕生日なんです。20歳になります」。悪天候のために大会スケジュールが変更されてシングルス決勝が火曜日になったとき、「自分の時代がきたなと思いました」と笑った。非常に稀な“火曜日の決勝”に、ひょっとすると縁があるかもしれない。
女子の準々決勝の顔ぶれは、8人中7人がシード選手。山崎のほかに第1シードの平田歩(慶應義塾大4年)、第2シードの阿部宏美(筑波大)、永田杏里(慶大3年)、今田穂(慶大3年)、神鳥舞(早稲田大2年)、猪川結花(法政大3年)、そしてノーシードの安藤優希(早大4年)というメンバーだ。平田対神鳥、山崎対永田、今田対安藤、猪川対阿部の顔合わせになった。
安藤優希(早稲田大4年)
第1シードの平田は、後輩で予選を勝ち上がった大川美佐(慶大2年)を6-1 6-2と、1時間20分で倒したが、対照的に第2シードの阿部は、第13〜16シードの堤華蓮(慶大2年)に4-6 6-2 [10-7]と、約3時間戦って勝ち上がった。阿部が第3セットのスーパータイブレークを戦うのは、2日連続だ。
昨年のインカレ・チャンピオンの阿部に対し、「名前負けしないように。がむしゃらに、しぶとく、1ポイントずつ積み重ねた」堤が、第1セットを6-4で先取。ただし、このセットは5-1リードから5-4までつめ寄られてのセット奪取で、そのときの阿部は、「ポイントの取り方がわかってきて、第2セットはいけるという感覚でした」。
阿部宏美(筑波大3年/奥)対 堤華蓮(慶應義塾大2年)
どの選手も、第3セットの“短期決戦”、10ポイントマッチタイブレークの戦い方を聞くと、戦わないように2セットで決めたい、もし戦うとしたら第2セットを取ったほうが有利と答えた。阿部もそう考えていた。
第2セットを取ってマッチタイブレークへ。「あとで苦しくならないように、リスクが高くても頑張って自分から攻めていこうと思っていた」一方で、粘り強く、ミスを減らすことで、終始ポイントをリードして[10-7]で決めた。気持ち的には前日より落ち着いてプレーできただろう。前日の3回戦は紙一重のマッチタイブレークで[10-8]。苦労しながら前進している。
第2シードの阿部宏美(筑波大3年)
堤は阿部に対して、よく考えてショットを選び、ミスを引き出していた。ウィナーも狙っていた。最初はうまくいっていたが、時間が進むにつれ阿部に対応策を見出され、術中にはめられた。「(阿部が)粘り強く、何球も返してきて、ペースを落としたり浅く打ったり。自分(私)からポイントを取るように強いられた」と堤。「打つべきか、繋ぐべきか迷った」と言い、マッチタイブレークの終盤に、バックハンドで似たようなミスを繰り返したところにそれが見てとれた。反省点は、「私に、粘る、打つ、どっち?と思わせるメリハリのあるプレーが必要だった」ことを挙げた。
昨年のベスト32を上回りベスト16入りを果たした堤華蓮(慶應義塾大2年)
大会7日目の22日(日)は、男女シングルス準々決勝(各4試合)、男子ダブルス準々決勝(4試合)、女子ダブルス3回戦(8試合)、準々決勝(4試合)が行われる。屋根付きコート8面での進行を予定。試合開始は9時から。
試合形式は、男女シングルス準々決勝以降がベスト・オブ・3タイブレークセットセットマッチ、男女ダブルスはベスト・オブ・3タイブレークセット(第3セットは10ポイントマッチタイブレーク)、ノーアドバンテージ方式(40-40になったらレシーバーがサイドチョイスして1ポイント勝負)で行われる。
編集部◎青木和子 写真◎BBM
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