「自分を信じて」19歳フェルナンデスがスビトリーナに競り勝ち準決勝へ [USオープン]

写真はレイラ・フェルナンデス(カナダ)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の大会9日目は、ボトムハーフ(ドローの下半分)の男女シングルス準々決勝などが行われた。

 レイラ・フェルナンデス(カナダ)がUSオープンで重要なポイント――彼女はそれを2005年のマリア・シャラポワ(ロシア)以降でもっとも若い準決勝進出者になれるほどものにした――を勝ち取ったとき、このエキサイティングなテニスと情熱を持ったティーンエイジャーは右の拳を突き上げたり腕をぐるぐる回したりして自分自身と観客を駆り立てる。

 いいポイントでも悪いポイントでもそのあとに彼女がすることは、左利きで素早い反射神経を持つフェルナンデスが成功することと同じくらい重要な意味を持つことだ。彼女は対戦相手とコートに背を向けて少しの間ベースライン後方にある壁のほうを向いて集中し、何であれその日選んだマントラ(祈りや瞑想などで唱えられる聖なる言葉)を繰り返すのである。

 火曜日のアーサー・アッシュ・スタジアムで第5シードのエリナ・スビトリーナ(ウクライナ)に対して6-3 3-6 7-6(5) の勝利をおさめた試合の間、フェルナンデスは自分を信じることに気持ちを集中させていた。この日の殊勲は、タイトル防衛を目指していた第3シードの大坂なおみ(日清食品)と2016年チャンピオンで第16シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)に対する番狂わせに続くものだった。

「私はとにかく自分を信頼すること、自分のテニスを信じることだけを考えていたの。取っても取られても、ポイントが終わるたびに私はいつも自分に『自分のテニスを信じるの。自信を持ってショットを打ち込め。ボールが行方だけを見るのよ』と言い聞かせていたわ」とフェルナンデスは試合後に明かした。月曜日に19歳になったばかりの彼女はこれまで6度グランドスラム大会に出場したことがあったが、一度も3回戦を超えたことがなかった。

「私は自分が感じていることを理解していて、自分の心をとらえるフレーズややる気を起こさせてくれる言葉があることを知ってるわ。私はそれを、試合を通して心の中に留めているの」

 その方法は機能していた。

 ドローに勝ち残ったアメリカ人プレーヤーがひとりもいなくなった中、USオープンの観客たちは隣国カナダの選手たちを養子に迎えた。男子ではフェルナンデスに続き、第12シードのフェリックス・オジェ アリアシム(カナダ)がカルロス・アルカラス(スペイン)の途中棄権で準決勝に駒を進めた。

 世界ランク73位のフェルナンデスはカナダのモントリオールでフィリピン系カナダ人の母とエクアドル人の父の間に生まれ、フロリダをベースに練習している。彼女の父はコーチでもあるが、ニューヨークには来ていなかった。彼はフェルナンデスによれば「個人的理由」から自宅に留まり、毎日電話でアドバイスを与えてくれている。

「試合後、ロッカールームから父に電話したの。彼は私がこの試合で彼に地獄を味合わせ、それから連れ戻したと言っていたわ」と彼女は話した。

 そして観客たちは、そのすべての瞬間を楽しんだ。

「ありがとう。私は今日、皆さんのおかげで頑張り抜くことができたわ」と彼女はスビトリーナを倒したあとに観客たちに向かって言った。スビトリーナは東京オリンピック銅メダリストで、2019年USオープンを含めてグランドスラム大会で2度準決勝に進出した実績を持っている。

 突如として脚光を浴びることになったフェルナンデスは、スポットライトが好きだという。

 大舞台でトッププレーヤーと対戦するときとより小さな舞台でよりランキングの低い選手と対戦するときとどちらがナーバスになると聞かれた彼女は、「違いはないわ」とシンプルに答えた。

 今この時点で、それについて論ずるのは難しい。フェルナンデスが第1セットを取って第3セットで5-2とリードしたあとでさえ、この試合の終盤はどのような結果になるかまったく見当がつかない展開だった。彼女が明らかにアドバンテージを握っていたのは、8回以上続いたラリーにおいてだった。フェルナンデスは長いラリーを26回制したのに対し、スビトリーナは16回だった。

 2度に渡って勝利まであと2ポイントまで迫ったフェルナンデスは、2回とも次のポイントを取ることができなかった。最終的にタイブレーク5-5となったとき、彼女はネットのテープをかすめて抜き去ったダウン・ザ・ラインのパッシングショットを決めてついにマッチポイントを握った。ショットがネットに触れてやや軌道を変えたためフェルナンデスは詫びるような仕草をし、スビトリーナは口に手を当てて失望感を露わにした。

「ちょっぴりラッキーだった。でも私は、得られるのならすべての運をものにするわ」とフェルナンデスは振り返った。

 次のポイントでスビトリーナのバックハンドリターンがアウトとなったとき、試合に終止符が打たれた。フェルナンデスはベースラインで膝を落として顔を覆い、スビトリーナはネットの反対側まで歩いていくと彼女を抱擁した。

 マジカルな進撃を続けるフェルナンデスの次のページは、この日と同じく自分よりもランキングが高くてテニス界の大舞台でより経験を積んでいる選手に対するもうひとつのテストとなる。彼女は木曜日、第2シードのアーニャ・サバレンカ(ベラルーシ)と対戦する。7月のウインブルドンでもベスト4に進出したサバレンカは、同日のナイトセッションで第8シードのバーボラ・クレイチコバ(チェコ)を6-1 6-4で下して勝ち上がった。

 自分のナイトマッチを待っていたサバレンカはフェルナンデスとスビトリーナの試合中に練習をしていたが、「観客の叫び声が聞こえるので、スコアを見る必要がなかったほどだった」と語った。

 今年のフレンチ・オープンを制したクレイチコバは、勝ち残っていた女子選手の中で唯一グランドスラム大会での優勝経験を持っていた。しかし彼女は第9シードのガルビネ・ムグルッサ(スペイン)に対する日曜日の4回戦でケイレンと眩暈に見舞われたあと、準々決勝での自分のプレーは「完璧な体調ではなかった」ことの影響を受けていたと打ち明けた。

 試合の終盤にメディカルタイムアウトを取ったクレイチコバはそのあともポイント間に時間をかけ過ぎたため、ムグルッサは彼女の振る舞いを「プロフェッショナルではない」と批判していた。

 火曜日にそのことについて尋ねられたクレイチコバは、「私は今まで見たこともなかったグランドスラム大会のチャンピオンに本当に辱められたわ」とコメントした。(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)

続きを読むには、部員登録が必要です。

部員登録(無料/メール登録)すると、部員限定記事が無制限でお読みいただけます。

いますぐ登録

写真◎Getty Images

Pick up

Related

Ranking of articles