「スケジューリングとスポンサー選びは賢く!」1968年USオープンを制したバージニア・ウェードがラドゥカヌについて語る

今年のUSオープン決勝で拍手を送るバージニア・ウェード(イギリス)(Getty Images)


 1968年のUSオープン以来、イギリス人女性として53年ぶりの優勝を果たしたエマ・ラドゥカヌ(イギリス)。その戦いぶりをスタンドから見守ってい中の一人に、53年前に快挙を成し遂げたバージニア・ウェード(イギリス)がいた。

 ウェード氏は決勝とラドゥカヌの今大会の勝ち上がり、今後直面するであろう問題について語った。

「エマの優勝は嘘みたいで信じられない。でも、試合を観ると、彼女がどの試合でも相手を上回っているのがわかる。誰がどうやって彼女を倒すのかと思って見ていた。大会を振り返ると、本当に信じられないことをやり遂げた。10試合連続勝利はとんでもなく難しいこと。しかも、1セットも落とさず、予選から勝ち上がった。私は53年前に優勝した。いつか優勝したいと夢見ていたけど、実際に成し遂げるのはまったく別物。エマは、自分がトロフィーを掲げる姿を新聞などで見て、夢ではなく実際に起きたことなんだと理解するでしょう」 

「決勝に進んだ2人はともに素晴らしかった。彼女たちは観ている者すべてを魅了した。レイラ・フェルナンデス(カナダ)は本当に強い選手を倒して勝ち上がり、真のジャイアントキラーだった。決勝では少しナーバスになってしまったようだ。準決勝までのようないいプレーはできなかった。それに対してエマは岩のように硬く、安定していた。サービスもいいし、リターンは本当に素晴らしい。エマはリターンのときに頭を使ってポジションをいろいろと変えていた。左利きのレイラのワイドへ切れていくスライスサーブを警戒していたのでしょう。レイラはもしかしたら、いつものように心地よくサービスが打てなかったかもしれない。理由は詳しくはわからないけど、準決勝までの試合ほどいいプレーができなかった。エマと対戦した相手は、彼女に対してどうプレーすればいいかわからないように見えた」

「このように特別な選手は10年にひとり現れるかどうかという選手。クリス・エバート(アメリカ)は特別な選手だと皆がわかっていた。マルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)やセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)もそうでしょう。でも、人々から評価されて名声が先行して、登場したときにはすでに知られており、特別な才能を持っていた。エマにも同じように才能が見える。3人のスーパースターは長期に渡ってテニス界を支配してきた。今、女子テニス界は才能のある選手が溢れている。私の意見では今後10年間で6~10人の選手がグランドスラム大会のトロフィーを分け合うのではないかと思う。みんな素晴らしい選手たちなので、誰かが独占するのは不可能でしょう。その中でエマとレイラは他の選手たちよりも多くを獲るのではないか」

「エマはフィジカルに優れ、身長もまずまず高く、足が長く、動きがスムーズで、ベースライン上を左右に動くときに凄くクイック。フットワークが軽やかで相手のショットを上手く読むことができ、サービスは本当に素晴らしい。ストロークはとても安定感がある。コート上でフィジカル面もメンタル面も充実している。体のバランスも素晴らしい。彼女の集中力の高さも非常に重要な要素だ」
 
「決勝では2人のプレーをすべての人が楽しんでおり、3セットにもつれたらもっと盛り上がったでしょう。ニューヨークでは試合が終わると普通、観客の半分は一気に帰ってしまう。でも、誰ひとり帰らなかった。皆が表彰式やスピーチを楽しみにしていた。多くの人をハッピーにした素晴らしい試合だった。その雰囲気の中で自分がいられたこと、そして表彰式で自分の名前を挙げてくれたことに感激した。いつかは断言できないけど、エマは間違いなくウインブルドンで優勝するはず。できなかったらおかしいくらい、凄い実力を持っている」

「これからどの大会に出場するのかというスケジューリングが凄く難しくなると思う。例えば、2ヵ月で3大会に出場したとして、早期敗退すると十分な試合経験ができなくなる。逆に5大会に出場してすべて決勝まで進んだら、疲労が限界を超えてしまうでしょう。ロジャー・フェデラー(スイス)のような選手であれば、自分がどの程度勝ち進めるのかをある程度予想できるので予定が組みやすい。そこがまず一つ目のポイント。それからもう一つはスポンサーや注目度の高さにどう対処するか。“はい、私やります”、“いいえ、それはやりません”とはっきり言えるだけの強さがあるかどうか。これからスポンサーのために多くの時間を取られることになる。スポンサーから多大な報酬を受け取れば、それだけ多くの時間をスポンサーのために費やさなければならなくなる。これは簡単ではない。どれを選ぶのか、しっかり賢く判断しなければならないでしょう」(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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