「まだ携帯を見てない。この小さな世界の外側で何が起こっているのか見当もつかない」ラドゥカヌが優勝会見で語る [USオープン]

アーサー・アッシュ・スタジアムの前でトロフィーを掲げるエマ・ラドゥカヌ(イギリス)(Getty Images)


 今年最後のグランドスラム大会「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月30日~9月13日/ハードコート)の女子シングルス決勝で、レイラ・フェルナンデス(カナダ)との10代対決を6-4 6-3で制したエマ・ラドゥカヌ(イギリス)が試合後の会見で語った。

「レイラは今大会信じられないようなテニスをしているから、途轍もなく難しい試合になることは最初からわかっていた。何人もトップ10選手を倒していたから、本当に自分の力を出し尽くさないといけないと思っていた。1ポイントずつ、本当に集中しようと心がけた。凄いバトルが何度もあった。どちらのセットも逆境があって、そこから抜け出すのに物凄くエネルギーが必要だった。何とか粘って最後には切り抜けられたことを誇りに思う」

 試合が終わり、チームの元へ行って皆とハグをしていた。

「本当に夢が叶った。チームのボックス席に上がっていって、皆とハグをして祝うことはずっと頭の中にあった。あれをずっとしたいと思っていたし、あの瞬間のために皆で頑張ってきた。そしてその瞬間が現実になって、私と一緒にいてくれるチーム、イギリスに残っているチーム、イギリステニス協会、ここまで私をサポートしてくれたすべての人たちへの感謝の気持ちしかない」

 ウインブルドンの前に“君は今夏の終わりにはグランドスラム大会でチャンピオンになれる”と言われていたら、どう返答した?

「まったく信じなかっただろうと思う。グラスコートシーズンは、高校の試験が終わったばかりだった。最初の試合の前までに3週間の練習期間が取れた。とにかく1試合ずつ戦っていった。ウインブルドンは素晴らしい経験になった。4回戦進出で第2週に勝ち残れたのは、信じられない気持ちだった。物凄いことを達成できたなと思った。でもまだハングリーでもあった。休む間もなく、グラスコートシーズンのあとも一生懸命練習を続けてきた。それからここアメリカに来て、すべての試合、大会で自分のゲーム、ショットへの自信を深めていった。今日それらすべてがうまく噛み合った。大事な場面で本当に必要としていて、実際に決められたショットはこの5週間の中で学び、積み重ねてきたことの結果だった」

 2度目のグランドスラム大会で1セットも落とさず、タイブレークもなかった。このことに驚いているか?

「1セットも落とさなかったけど、どの試合でもピンチに直面した。自分が落ちていた場面をはっきり思い出せる。スコアはひとつの結果しか表さないけど、長いデュースの続いたゲーム、ダイナミックなポイントも中にはあった。それらを切り抜けられたことが重要だった。今大会自分が一番よかった点は、押していかなきゃいけないところでしっかり勇気を持って押していけたところ。すべての試合が物凄く大きなチャレンジだったけど、その中でセットを落とさなかった理由はそこにあると思う」

 長いラリーの最後に滑って傷ができ、治療を受けた場面のことを詳しく教えてもらえないか?

「30-30の場面だったと思う。凄いポイントだった。彼女がダウン・ザ・ラインに物凄いバックハンドを打ってきた。全力で追いかけて滑ってしまった。膝に結構酷い傷ができてしまったの。あれで30-40になって自分のサービスだったから、自分のリズムを崩したくなかったし試合を中断したくなかった。でも、傷から出血が止まらないからプレーを続けることが許されなかった。チェアアンパイアにすぐに治療を受ける必要があると言われた。治療中はそのピンチを切り抜けるためにどんなパターンでプレーするのか考えていたと思う。2、3分の中断を経てブレークポイントから再開するのは簡単じゃなかった。でも、大ピンチの場面でしっかりと切り抜けられるプレーができたと思う」

 いくつかマッチポイントを取れなかったが、最後にサービスエースで決めたときの気持ちは?

「レイラのサービスゲームでマッチポイントがあったのはボーナスくらいに思っていた。コート中央でフォアハンドのチャンスがあり、それを決めにいった。マッチポイントになったときも同じショットだけど、最後はミスしてしまった。最後の自分のサービスゲームでは多分、2回ブレークポイントがあったと思う。マッチポイントではワイドへサービスエースを決めたけど、その試合では1本もワイドへ打っていなかった。“打つならこのタイミングしかない”と思った。それまで見せたことがない形でトスしたボールにジャンプした。ええ、うまく打てたわ。すべてをその瞬間に懸けていた。今日の試合の雰囲気は最高だった。これほどの大観衆が集まってくれたことに驚いた。でも、ふたたび観客の前でプレーできるようになって、本当にうれしい」

 グランドスラム優勝はいつから夢見ていた? 実際してみると、自分が思っていたものと比較してどうだった?

「本当に小さい頃からグランドスラム大会で優勝することを夢見てきた。いつも口に出していた。でも信じ続けて、実際に達成したのは信じられない。少女の頃から夢見ていたことだったけど、実際に達成すると勝つ瞬間で、ボックス席でチームと祝い、ボックス席まで登っていく方法を探して、試合後に彼らに会うことだった。この数日はそれを毎晩イメージして寝ていた。まるで優勝の瞬間に眠りにつくような感じだった」

 ウインブルドンに続き、このビッグトーナメントでもプレッシャーにうまく対応して素晴らしいプレーを見せた。

「自分が成し遂げること、自分のゲームプラン以外のことは何も考えないようにできたことが、自分が成功した大きな要因だと思う。テニスコートで起きること以外、本当に考えてなかった。他の外部のことは完全にシャットアウトして自分のことにフォーカスできた。一端テニスコートに立つと、いつものように集中してプレーした。それが一番誇りに思っていること。このタイトルを獲るのに、一番助けになったのがこのこと」

 家族はどんな反応だった?

「親と話すけど、実はテニスのことはあまり話さない。私がこの瞬間にどんな風にしているかを知りたいだけなの。もちろん家族がここに来て一緒に祝い、同じ時間を共有できたら最高だと思う。でもイギリスから誇りに思って観てくれていると思う。“お前はもう父親よりも凄いな!”と言ってくれて物凄く安心した。父を喜ばせるのは物凄く難しいの。でも、今日はそれができた」

 3ヵ月前は高校生だったのに、今はUSオープンのチャンピオンになった。エリザベス女王から祝福の言葉もあった。君は携帯をまだチェックしていないと言ったけど、イギリスでは大変なことになっている。

「まだ携帯を見ていないわ。この小さな世界の外側で一体何が起こっているのか見当もつかない。私たちは静かな部屋でこの瞬間を楽しんでいるだけ。今は外部のことはシャットアウトしてチームでお祝いしたい。チームで勝ち獲ったものだから。自分一人でここまできた訳じゃない。ここで私と一緒にいる人は皆、この優勝までの道程で大事な役割を果たしてくれた」

 この優勝で人生が大きく変わることをもう考えているか。

「正直まだまったく考えていない。試合が終わったあとはシャワーを浴びて、いつもと同じルーティン。帰るときも考えないつもり。いつ帰るかもまだ決まっていない。明日の予定もまだ決まっていない。とにかくこの瞬間を目一杯喜びたい。今は先のことをまったく考えず、未来のことについてはスイッチをオフにするときだと思う。これから何が起こるのかまったくわからない。でも今は周りのことを気にせず、自分の人生を楽しみたい」


1977年のウインブルドンを制してトロフィーを掲げるバージニア・ウェード(イギリス)

 イギリス人としてグランドスラム制覇は1977年のバージニア・ウェード(イギリス)以来のことになる。今後はプレッシャーを感じる?

「バージニア・ウェードは偉大なことを成し遂げた。彼女はレジェンド。彼女が私の試合を見てくれて、物凄く光栄だった。今は何もプレッシャーを感じていない。私はまだ18歳。私は自分の身に起こることに対して自由に行動しているだけ。ここでの試合にもその姿勢で戦った。そのやり方でトロフィーを手にしたのだから、今は何も変える必要はないと思う」(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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