「小さな少女からレイラ宛てにたくさんの手紙をもらった」USオープン準優勝のフェルナンデスの父ホルヘ氏

2019年のフレンチ・オープン・ジュニアを制したフェルナンデスが父ホルヘ氏と優勝を祝う(Getty Images)


 南米でプロサッカー選手として活躍したエクアドル人のホルヘ・フェルナンデス氏は、現在カナダ在住で娘のレイラ・フェルナンデス(カナダ)がテニスを始めたときから現在もコーチを務めている。USオープンに姿を現さなかった理由は、過去に自分が帯同した大会の決勝で負けたことが理由だと言う。

「2020年2月のアカプルコで彼女が決勝に進出して自分がスタジアムで観戦したとき、負けてしまったんだ。それから私は2ヵ月ほど自分への嫌悪感で落ち込んだ。そのことについて誰とも話したくなかった。周囲には、“ただのテニスの試合で彼女は決勝までいった。負けたのは、君に何も問題があった訳じゃない”と言ってくれた。でも自分の中では決勝にいかなければよかったという後悔しかなかった。だから、USオープンに行かなかった。いつも彼女と夕飯を一緒に食べているキッチン越しにテレビで観たよ」

 これまでコーチとして娘に接してきたが、女の子の父親のほうがコーチングよりも難しいという。

「普通の家庭でも女の子の父親であることだけでも簡単なことじゃない。今は小さな女の子から小さな女性に変わっていく時期で、10代の子はいろんなことが身の回りで起きる時期だ。そしてUSオープンの大会中に彼女は19歳になった。彼女の誕生日はレイバー・デー(毎年9月の第一月曜日の“労働の日”)と被ることが多かったから、なかなか祝うのが難しかった。キャンプに行ったり、学校の準備で忙しかったりするんだ。でも、どうせそのうちUSオープンに出てまた忙しくなるのだから、関係ないと話していたんだ。しかし、父親であることが一番難しい。ダメなコーチにはなれるけど、ダメな父親にはなれないんだ」

 自分を信じる強さが際立っているが、過去に大きな挫折を乗り越えてきた。

「彼女が昔、通っていたポテンシャル開発スクールを辞めさせられとき、深く傷ついていた。僕自身は彼女と過ごせる時間が増えるからうれしかったんだが。それで彼女の目を見て、いつでも君の助けになると約束した。そのスクールのように、多くの人が彼女のことを信じてくれなかったと思う。彼女は運動ができてテニスはできるという点では信じてくれた。でも、ここまでの選手になれるかというと、まったく話にならなかった。小さな子供として大きな夢を抱いていた彼女には、信じること、自信を持つことができるようにすることが重要だった。“誰かにノーと言われても、誰にも何も言わせるな”と言った。“自分自身を信じろ。自分の価値は自分が一番わかっているはずだ”とね。自分を信じて、自分に賭けろと。そのような影響から彼女の中にある考え方、何に価値を見出しているかは、今テニスコートでの姿を通して皆が見ている。これまでに自分の中に育んできた自信なんだ。いつもトレーニングで話していた。君は自分より3倍も大きな相手と対戦することになる。今大会でのアーニャ・サバレンカ(ベラルーシ)のようにね。だからこそ自分を信じないといけない」

 いつもレイラには2つのメッセージを伝えている。

「いつも彼女との会話は2つに分けている。一つはテニスの話。今はどんな内容かは言えないよ。重要なメッセージは、今大会はただの始まりに過ぎないということ。これまでになかったような日が続いているが、これを日常の1日として扱うことが重要だ。ハードなトレーニングを積んできたこれまでの日と同じように扱う。このときのために厳しいトレーニングをしてきたのだから。彼女に伝えてきたメッセージをここで披露する。“今、自分の夢を生きている最中だ。思い切って戦え、その夢のために。何が起きてもいいんだ。自分の姿を鏡で見て、自分のことを誇りに思えるなら、それが一番重要なことだ”」

 USオープン決勝後にレイラとどんな会話を交わしたのか。

「難しかった。何と声を掛ければいいかわからなかった。自分にとっても最初のグランドスラム決勝での敗戦。自分もどう消化すればいいのかわからなかった。ここまで濃密な時間を過ごしてきたから、私が傷ついているなら、それを彼女に伝えないといけない。彼女がハッピーでないなら、彼女はそれを自分に伝えないといけない。そして彼女がそのあと大忙しで話をする時間がなかなか取れなかった。彼女に10分間時間を与えて話してもらった。それから自分からいくつか質問をした。彼女は当然落ち込んでいて、何を話していいのかわからない状態だった。僕も同じだから、大丈夫と返した。周囲は誇りに思うと言ってくれるけど、最後は負けたのだから落ち込んている。いろんなことを犠牲にしてきたのに、最後は夢が叶わなかったのだから。でも、数日後には笑顔を取り戻し、次のチャレンジに向かっていくはずだ」

 エマ・ラドゥカヌ(イギリス)とレイラがUSオープンで活躍したことは、多くの少女にも好影響を与えているという。

「今大会でエマとレイラは多くの若い子に多大な刺激を与えている。小さな少女から“これをレイラに渡してくれない?”と多くの手紙を受け取った。この少女たちは“レイラの影響で自分を信じられるようになった”と言ってくれる。今回のファイナリストの2人に影響を受けてさらに若い選手たちがこの先も続々出てくるだろう。テニス界、WTAにとってこれ以上素晴らしいことはない」(テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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