セルビアがジョコビッチとともに歴史を築くチャンスの喪失に泣く「今は子供たちともっと一緒に過ごしたい」
ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が『年間グランドスラム(同じ年に四大大会全制覇)』を達成した半世紀ぶりの男子選手になることでテニスの歴史を築くことに失敗したあと、月曜日のセルビアは失望とともに目覚めた。
これまではジョコビッチが絡んだグランドスラム大会決勝後にはいつも花火が上がったり路上で車のクラクションが鳴り響いたり人々がダンスしたりするのだが、今回セルビアの首都には陰鬱な静けさがあった。世界ランク1位のジョコビッチが日曜日のUSオープン決勝で、同2位のダニール・メドベージェフ(ロシア)に4-6 4-6 4-6で敗れたのだ。
その試合に勝っていれば、34歳のジョコビッチは同じ年にオーストラリアン・オープン、フレンチ・オープン、ウインブルドン、USオープンで優勝した1969年のロッド・レーバー(オーストラリア)以来となる男子選手となるはずだった。彼はまた21回目のグランドスラム制覇を果たし、男子の最多記録を分かち合っているロジャー・フェデラー(スイス)とラファエル・ナダル(スペイン)を追い抜いていたはずだった。
「年間グランドスラムに関しては今できなければ決してできないというものだったが、21回目のグランドスラム制覇に関してはもう目前だ」とセルビアのテニス記者であるササ・オズモ氏はSKスポルクラブのサイトに書いた。
熱狂的にジョコビッチを応援するファンの間では、彼が次に何をすべきかについて意見が分かれていた。セルビアのソーシャルメディアではジョコビッチが世界1位でいるうちに引退するよう求めるファンもいれば、彼が奮起して史上もっとも偉大なプレーヤーと見なされるようになると信じているファンもいる。
「ノール、君は年間グランドスラムがなくてももっとも偉大な選手だ」とセルビアの日刊紙『ブリツ』はヘッドラインを打った。ニュースメディアの『N1ポータル』は「ジョコビッチ、歴史的チャンスを逃す」と書き、タブロイド紙『クリル』は聖書の文句に引っ掛けて「岩でさえ泣く」と報じた。
試合後にジョコビッチは涙を止めることができず、セルビアメディアとの記者会見を短く切り上げた。
「大きなチャンスが失われたから、僕は失望と悲しさを感じている。このような敗戦に耐えるのは簡単なことではない」とジョコビッチはコメントした。
東京オリンピックが1年延期になったことにより、ジョコビッチは『年間ゴールデンスラム(同じ年に四大大会全制覇+オリンピックの金メダル)』達成の類い稀なチャンスを手にしていた。彼は東京オリンピックの準決勝でアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)に敗れたが、ニューヨークで年間グランドスラムを達成することで変わらず歴史を築く可能性を擁していた。
すべてが終わったあとにジョコビッチは自分が次に何をするか、どこでプレーするかについて何も言わなかった。
「正直なところ、僕にはどんなプランもない。完全に何もないんだ。自分がどこのどの大会でプレーするかもわからないよ」
そしてジョコビッチは涙にくれながら、「もちろん僕の人生は今、完全に違うものになった…。僕は今、子供たちともっと一緒に過ごしたい」と話した。
決勝でのジョコビッチは、コートの上でも滅多に見せない姿を晒した。試合の終盤に年間グランドスラム探求の夢が終わりかかっていたとき、彼はチェンジコートのベンチでタオルを被って涙を隠していた。ジョコビッチの元コーチでテニス界のレジェンドであるボリス・ベッカー(ドイツ)は、歴史に残る重大なことを成し遂げるプレッシャーがあまりに大きすぎたのだと擁護した。
「彼は精神的に、感情をコントロールする準備ができていなかったんだ」とベッカーは語った。(APライター◎ドゥサン・ストヤノビッチ/構成◎テニスマガジン)
写真◎Getty Images
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