単複2勝を挙げたジョコビッチがセルビアを準決勝に導く [デビスカップ・ファイナルズ]

写真は準決勝進出を決めたニコラ・カシッチ(右)/ノバク・ジョコビッチ(セルビア)に駆け寄り喜びを分かち合うセルビア代表チーム監督のビクトル・トロイツキ(セルビア/手前)(Getty Images)


 男子テニスの国別対抗戦「デビスカップ by Rakuten ファイナルズ」(スペイン・マドリッド、オーストリア・インスブルック、イタリア・トリノ/11月25日~12月5日/室内ハードコート)の大会7日目は決勝トーナメントの準々決勝1対戦がマドリッド会場で行われ、世界ナンバーワンのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が単複で勝利をおさめて母国を準決勝に導いた。

 第6シードのセルビア(グループF・2位)は第1試合を接戦の末に落としたが、カザフスタン(グループB・1位)を2勝1敗で下してベスト4進出を決めた。

 グループステージを無人のアリーナでプレーしなければならなかったあと、ジョコビッチはふたたびファンの前でパフォーマンスする喜びを味わった。ジョコビッチは水曜日、出だしから観客からのエネルギーを糧にセルビアを勝利へと牽引した。

 第1試合でミカエル・ククシュキン(カザフスタン)がミオミル・キツマノビッチ(セルビア)に7-6(5) 4-6 7-6(11)で競り勝ち、第2試合はジョコビッチがアレクサンダー・ブブリク(カザフスタン)とのエース対決を6-3 6-4で制して1勝1敗となったあと、ニコラ・カシッチ(セルビア)/ジョコビッチがアンドレイ・ゴルベウ/アレクサンドル・ネドベソフ(カザフスタン)を6-2 2-6 6-3で振りきった。

 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者数増加によりオーストリアががふたたびロックダウンに入ったため、セルビアは予選ラウンドを通して無観客でのプレーを余儀なくされていた。

 試合を通して何度も観客に向けてアピールしていたジョコビッチは、「非常に大きな違いだ」とコメントした。

「ファンはプロテニスが存在する理由のひとつだからね。ファンの前でプレーするというのはもの凄く重要なんだ。彼らは我々に大きなエネルギーを与えてくれるし、僕らにコートでベストを尽くそうとするためのモティベーションを与えてくれる。インスブルックで僕らは観客の前でプレーできなかったから、雰囲気はまったく違っていたよ」

 現在のフォーマットを採用した最初の大会となった2019年ファイナルズで、セルビアはロシアに敗れて4強入りを逃していた。セルビアは2010年の決勝でフランスに勝って唯一のタイトルを獲得し、2013年には決勝でチェコに敗れはしたが準優勝を飾っていた。

 3時間以上かかって世界69位のキツマノビッチとの死闘を制した同182位のククシュキンは、第3セットのタイブレークでのふたつを含め4本のマッチポイントを凌いだ。第1セットを先取したククシュキンは第2セットも先にブレークしていたがキツマノビッチが4ゲームを連取して巻き返し、5つ目のセットポイントをものにしてセットオールに追いついた。

 最終セットでキツマノビッチは好スタートを切ったが、4-0とリードを広げるために手にした5度のブレークチャンスを生かすことができなかった。そのあと彼は5-3で得た2本のマッチポイントを無駄にしてしまい、タイブレークを強いられた。キツマノビッチは5-4の場面でトレーナーによる治療を受けたが、試合を最後まで続けた。

 タイブレークでさらに2度マッチポイントをセーブしたククシュキンは、自身が手にした5度目のマッチポイントをものにして勝利をもぎ取った。

「だからこそ、僕たちはデビスカップが好きなんだ。僕は母国のためにプレーし、カザフスタンのために勝利を挙げることを誇りに思う。僕たちにとって重要だった。僕は今、本当にわくわくしているよ」とククシュキンは語った。

 この結果で絶対に負けられない立場に立たされたジョコビッチは、その責務を堂々とまっとうした。彼は世界ランク36位のブブリクに対して各セットで一度ずつブレークし、デビスカップのシングルスでの連勝記録を「17」に伸ばした。今大会の最初の2試合も問題なく勝っていたジョコビッチは、1時間18分を要したこの試合で合計11本のブレークポイントを手にした。

 勝負を決めたダブルスで、セルビアは第3セット2-2と5-3の場面でブレークに成功して勝利を掴んだ。

 グループFを1勝1敗で終えたセルビアは、6つのグループ2位でもっとも成績のいい2チームのひとつとして決勝トーナメントに進出していた。彼らはドイツとオーストリアと同組で、ドイツに次ぐ2位となっていた。

 ビクトル・トロイツキ(セルビア)はプレーヤーとして出場した2年後、今大会でセルビア代表チームの監督としてデビューを果たした。セルビアは2017年以来となる準決勝で、イタリア(グループE・1位)を2勝1敗で破って勝ち上がった第4シードのクロアチア(グループD・1位)と対戦する。

 ここ10大会で6度目の準々決勝を戦ったカザフスタンは、クロアチアに敗れた2018年以来となる5度目のベスト4進出を目指していた。今大会でのカザフスタンはスウェーデンと前回準優勝国で第2シードのカナダを倒し、グループBで1位となって決勝トーナメント進出を決めていた。

 開催国のスペインがグループステージで敗退したにも関わらず、準々決勝の会場となったマドリッド・アリーナには許可された収容人数いっぱいの観客が詰めかけていた。2019年大会はすべての試合がスペイン・マドリッドで行われたが、今回はオーストリア・インスブルックとイタリア・トリノも開催地に加わっていた。マドリッドはメイン会場として、準決勝と決勝の舞台となる。

 来年の新しい会場は、日曜日に発表されることになっている。

 ファイナルズでは18ヵ国が3チームによる6グループに別れて総当たり戦を行い、各グループの1位と2位の中でもっとも成績のいい2チームが決勝トーナメントに進出して優勝チームを決定する。試合はベスト・オブ・3セットマッチで行われ、シングルス2試合とダブルス1試合で争われる。

 昨年の大会はパンデミックにより、開催中止となっていた。オーストリアがロックダウンに入ったためインスブルックでの試合は無観客で行われ、トリノが収容人数の60%に制限され、マドリッドは最大75%までの観客動員が許可されている。

 2019年大会では7日間に渡って全試合がマドリッドで行われたが、プレーヤーやファンから時間が遅すぎてスタンドに空席が目立つナイトマッチと対戦の間に十分な休みがないことに対する批判が出たため大会期間を11日間に延ばして会場を3都市に分けて行うことを決めていた。(APライター◎タレス・アッゾーニ/構成◎テニスマガジン)

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写真◎Getty Images

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