「失格は過去のこと」ジョコビッチが対戦相手を息詰まらせる [フレンチ・オープン]
今年最後のグランドスラム「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦9月27日~10月11日/クレーコート)の本戦3日目は、男女シングルス1回戦残り試合と男子ダブルス1回戦が行われた。
ノバク・ジョコビッチ(セルビア)のバックハンドがネットの上部に当たってサイドラインを割ったとき、彼は首を横に振った。それだけだった。
その2020年フレンチ・オープンでの圧倒的な初戦で柔らかすぎたドロップショットがテープの上に跳ねて自分のサイドに落ち、ついに相手が1ゲームを奪った。そのときのジョコビッチはただ頭を下げ、ベンチに向かって歩いていった。
彼は世界ランク80位のミカエル・イーメル(スウェーデン)を6-0 6-3 6-2で倒したその試合を通してドロップショットを使い続けていたのだが、またも浮いたドロップショットを打ってブレークを許してしまった。そのときのジョコビッチはポケットからボールを出すと、それをラケットで優しく叩くことすらしなかった。ボールは彼のすぐ後ろ、コート中央に安全に着地した。
今月のUSオープン4回戦でジョコビッチはあるゲームを落としたあとのコートチェンジの際にカッとなり、後方に打ったボールを誤って線審にぶつけたために失格失格処分を受けていた。その事件以来のグランドスラム大会をプレーした彼は、怒りを露わにしたり落ち込んだりする必要がなかった。
確かに目をぐるりと回して見せたり、フィリップ・シャトリエ・コートに来ていた数少ないファンのひとりに皮肉な投げキッスを送ったりすることはあった。しかしそれを除けば、ジョコビッチが煩わされる理由は何もなかった。
「僕はただただ、息苦しさを感じたよ。コーナーからコーナーに振られ、彼は滅多にミスをしない。彼のコートでのポジションは、非現実的だった」とイーメルは振り返った。
「蛇がどうやって獲物を殺すか知ってるかい?」とイーメルは腕を絡ませて手を合わせ、大型蛇のボアが獲物を絞め殺す攻撃を手振りで表現しながら言った。「僕はコート上で、ちょっぴりそんなふうに感じていたんだ」。
試合中のイーメルはジョコビッチの機嫌にはまたく注意を払っていなかったと言い、ジョコビッチはフラッシングメドウで起きたことはもはや自分を煩わせてはいないと明かした。彼は今、フレンチ・オープンでの2度目の優勝と18回目のグランドスラム制覇に照準を合わせているのだ。
「僕の頭の中には、ニューヨークの痕跡はない。それはもう過去のことだ。正直なところ、もう忘れたよ。もはやそのことについては考えていない」と世界ナンバーワンのジョコビッチは2020年の戦績を32勝1敗としたあとに語った。この唯一の敗戦は、USオープンでの失格によるものだ。
「第1セットを6-0で取るというのは、グランドスラム大会を始め方としては最高だ。それはまさしく僕が意図していたことで、いいレベルの強度で非常に力強いスタートを切ることができたよ。言うまでもなく、早いラウンドで当たる選手たちには失うものが何もないからね」
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