クレーコートで修行を積んだ19歳のパリーが前年覇者クレイチコバを打破 [フレンチ・オープン]

写真はセンターコートで行われた1回戦でディフェンディング・チャンピオンを倒す番狂わせを演じた19歳のディアン・パリー(フランス)(Getty Images)


 今年2つ目のグランドスラム大会「フレンチ・オープン」(フランス・パリ/本戦5月22日~6月5日/クレーコート)の女子シングルス1回戦で、第2シードのバーボラ・クレイチコバ(チェコ)が世界ランク97位で19歳のディアン・パリー(フランス)に6-1 2-6 3-6で敗れる波乱が起きた。

 初戦にして早くも敗れたディフェンディング・チャンピオンは、1回戦で敗れた3人目のトップ10プレーヤーだった。初日にはこのところ好調だった第6シードのオンス・ジャバー(チュニジア)がマグダ・リネッテ(ポーランド)に逆転負けを喫し、第10シードのガルビネ・ムグルッサ(スペイン)はジャイアントキラーとして知られるカイア・カネピ(エストニア)に敗れていた。

 またこの日は第5シードのアネット・コンタベイト(エストニア)がアイラ・トムヤノビッチ(オーストラリア)に6-7(5) 5-7で敗れ、初戦で姿を消した4人目のトップ10プレーヤーとしてクレイチコバに続いた。

 ロラン・ギャロスにほど近いパリ郊外の出身であるパリーは、「母が私を学校に送ってくれるとき、毎日ロラン・ギャロスのスタジアムが見えたわ。そこで一度でいいからプレーしたいというのが子供時代の夢だったの。そこでプレーして試合に勝ったのだから、本当に素晴らしいわ。今日、素晴らしい観客たちの前で夢が叶ったのよ」と喜びを表現した。

「出だしは酷かったわ。大勢の知り合いの前でプレーし、それも世界2位で前年の覇者が相手だったから、いいプレーをしたかったのね。それで恐らくボールを強く打ち過ぎていたかもしれないけど、その必要もあったの。それが試合を通して気付いたことよ。私はよりアグレッシブにプレーしようとした。第1セットの終りに、私は自分のショットのリズムを掴むことができた。そして第2セットではサービスゲームをキープすることができ、試合が進むにつれて感覚はどんどんよくなっていった」とパリーは試合を振り返った。

 一方で敗れたクレイチコバは痛みなくプレーできたことをうれしく思うが、しばらく戦列を離れていたため体力面で壁にぶち当たったのだと試合後に話した。

「私はただ、フィジカル面で崩れてしまったのだと思う」とクレイチコバは試合後の記者会見で語った。

「(大会前に)試合をしていなかったから厳しかったわ。私は可能な限りいい形で準備しようと努力したけど、試合は練習とは違うわ。ラリーの中で私は彼女のショットに対応していたけど、そのうちやや遅れ始めた。ミスが出始め、試合の流れが変わったと感じたのはそのときだった。私が遅れ、もはやプレッシャーをかけることができなくなったから、彼女は強打で私を圧倒したのよ」
 
 2019年にジュニア世界1位として注目を浴びていたパリーは、同年に16歳でロラン・ギャロスを初体験して2回戦に進出していた。

「あのときと比べることはできないわ。私はもっと若かったし、コートは小さくてすべてが違っていたから」とパリーは当時のことを回顧して話した。

「あのときも初勝利を挙げてうれしかったけど、今日の勝利は私にとってより重要だわ。だって大勢の観客の前、フィリップ・シャトリエ・コートでプレーしたんですもの。あれ以来、私はメンタル的に凄く成長した。もっとも、まだまだやるべきことはたくさんあるけどね」

 ジニア時代の成功後に小さなケガなどもあってやや表舞台から外れていた彼女は、脚光の外で密かにクレーコートでの経験を積んでいた。実際にパリーはコーチのゴンサロ・ロペス サンチス氏の薦めで昨年を通して非常に多くの屋外クレーコート大会に出場し、ウルグアイ・モンテビデオのWTA125シリーズでタイトルを獲得している。パリーによればクレーコートの大会を選んで出ていたのはポイント獲得のためではなく、ディフェンス能力を含め多くを学ぶためだった。

「私はまだ若いから、コーチは私が経験を積むことを望んでいた。屋外のクレーコートで多くの試合をプレーしたことは、肉体的にもテニス的にもメンタル的にも、私をより強くする助けになったのよ」とパリーは説明した。

 コーチのロペス サンチス氏は昨年末、2021年にパリーをクレーコートばかりでプレーさせているのはなぜかと尋ねられた際に「ディアンにディフェンスを学ばせるためだ」と答えていた。

「彼女は信じられないほど攻撃的な精神を持っているが、ディフェンス力も向上させて10本以上のラリーをして勝てるようにならなければいけない。彼女は3本目のショットでポイントを取れなければいいプレーをしていないと思っているけど、それは事実ではない。軌道の高いボール延々を打ってくるスペイン人たちとプレーし始めたとき、ディアンは完全に途方に暮れていたよ。この現実に直面しなければならない。彼女が11~12歳のときにやっていなかったことを、私たちは今やっているんだ。彼女はとてもいい形でこの挑戦に応じてくれた。彼女は多くのウィナーを決めながらも、大いにディフェンスできるようになったよ」

 経験を積んだパリーは今、より成熟した姿勢でこのフレンチ・オープンに取り組んでいる。

「コートで素晴らしい感慨を味わった。でも浮かれないようにして、1試合1試合に取り組んでいきたい。この瞬間を楽しんだら、直ぐ大会に集中したいわ」

 パリーは次のラウンドで、前日にワイルドカード(主催者推薦枠)で出場したアルモニー・タン(フランス)を6-4 6-3で破って勝ち上がったカミラ・オソリオ(コロンビア)と対戦する。

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写真◎Getty Images

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