残酷なUSオープン決勝での勝利がティームの前途を照らす
今年ふたつ目となるグランドスラム「USオープン」(アメリカ・ニューヨーク/本戦8月31日~9月13日/ハードコート)が日曜日、全日程を無事に終了した。
USオープンのチャンピオンとしてコートに崩れ落ちた15時間後――彼の心は疲労し、その脚は弱っていた――、ドミニク・ティーム(オーストリア)は月曜日にベッドから出たときにどう感じたかと尋ねられ、微笑んだ。
「うーん、実を言うと今日の僕は目覚めてはいなんだ。と言うのも、1秒も寝ていないから。僕はずっと感動しっぱなしで、アドレナリンに満ちているよ」とティームはふたりの記者とともに行ったアーサー・アッシュ・スタジアムからのビデオインタビューの中で語った。彼のすぐ近くには、新しいトロフィーが置いてあった。
「僕らは明け方の4時くらいまで部屋で夕食をとっていたんだけど、そのあと眠りに落ちることができなかったんだ。でも大丈夫だよ」
もちろん、大丈夫だろう。結局のところ、27歳のティームはグランドスラム決勝で0勝3敗というの戦績でその日曜日に臨み、その記録に伴うすべての疑念と戦ったのだ。
そして今は? 彼は男子テニス界において、ここ6年で初のグランドスラム新チャンピオンとなったのである。ティームのような多大な才能と自信を持った選手であっても、それが本当に可能なのだと知るには実際に何かをやってのける必要があった。
日曜日の夜、彼はアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)との死闘を2-6 4-6 6-4 6-3 7-6(6)で制した。USオープン決勝で最初の2セットを落としながら挽回勝ちが実現されたのは1949年以来のことで、第5セットのタイブレークで決着がついたのは初めてのことだった。
壮絶な幕切れを迎えたその試合を、「残酷な試合」とティームは呼んだ。「大作のドラマみたいだったよ」。
少しの間だけでも、ネットの反対側のことを考えてみるといい。ズベレフは2セットを先取して第3セットでも先にブレークしていたが、そこからすべてのリードを失ってしまったのだ。
それから彼は第5セットで5-3とリードしてサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップを迎えたが、それもまた彼の手からこぼれ落ちてしまった。
「あと数ゲーム、あと数ポイントだったのに…」とズベレフは悔しさを露わにした。「でも僕はまだ23歳だ。これがラストチャンスだなんて思わないよ。僕は自分がある時点で、必ずグランドスラムのチャンピオンになると信じている」。
確かにまだ「ビッグ3」の時代が過ぎ去ったと見なす時期ではないが、USオープンでのティームの勝利は彼が今後メジャー大会のトロフィーを勝ち獲る男であることを示すことになった。彼自身と他の皆に、自分が集団から抜け出す準備ができていることを証明したのだ。
男子テニス界の「ビッグ3」と呼ばれるロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は直近のグランドスラム13大会すべてでタイトルを分け合っており、ここ67大会で合計56回も優勝していた。そして2度に渡る右膝手術からの回復過程にあるフェデラーが今年の終わりまではもうプレーしないことを決めている一方で、他のふたりはもうすぐ始まるフレンチ・オープンで新しい連勝のスタートを切りたいと燃えている。
ハードコートのフラッシングメドウは通常であれば1年最後のグランドスラム大会だが、もっとも常軌を逸した今年はクレーコートのロラン・ギャロスがそれに続く。フレンチ・オープンは新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより従来の5月から延期され、本戦が9月27日からパリでスタートする予定になっている。そしてUSオープンと違い、人数制限があるとはいえ観客を迎え入れて行われる。
「間違いなく、ドミニクはまず休息を取って回復しなければならない」と彼のコーチを務めるニコラス・マスー(チリ)はコメントした。「それから我々は、クレーコートで練習を開始するよ」。
ティームは月曜日にウィーンに渡って次の週末まで休息の時間を取り、それからロラン・ギャロスに向けた準備のためにレッドクレーでプレーし始めるつもりだと話した。
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