【『ペア競技の復元力』発売前特別企画】中身チラ見せ6連載|連載1|技術とは「再現できる選択肢の集合」である



ペア競技の復元力 技術・戦術・メンタルを一本につなぐ、ダブルスの本質
朴 相俊  パク サンジュン 著(国際ソフトテニス指導者・プレーヤー・スポーツメンタル教育者)
※詳細プロフィールは最下部

ソフトテニスの緻密なペアリングから学ぶ、すべてのテニスプレーヤー必読の書

8月18日発売(全国の書店、ネット書店で予約受付中)
A5判並製 312頁
本体価格2000円+税
ベースボール・マガジン社刊


|連載1|
(書籍『ペア競技の復元力』第1章より抜粋_24_25ページ掲載原稿)

第1章 技術は「正しさ」より「再現性」で考える

試合で残る技術とは何か

Section❶技術とは「再現できる選択肢の集合」である

 多くの場合、技術は「この打ち方が正しい」「この形が完成形」という単一の正解として教えられる。しかし試合では、同じ条件は二度と訪れない。体勢も、距離も、相手の位置も、毎回わずかに違う。その中で必要な技術は、一つの完璧な打ち方、形ではなく、似た状況で何度でも選べる「選択肢の束」。すなわち技術の再現性とは、同じ動きを繰り返すことではなく、違う条件でも同じ目的に戻れることを指す。

 技術は「形」ではなく、「幅」で評価することだ。技術を一つの形で固定すると、その形が崩れた瞬間にプレーヤーは迷うだろう。「今のはダメだ」「どう打てばいいかわからない!」など。しかし、技術を選択肢としてとらえていると、多少崩れても次を選び直そうと考えることができる。つまり再現性とは、失敗しても次の一手が残っている状態である。

 再現できる技術は、選び直せる技術とも言える。試合中に一度のミスでその技術を捨ててしまうプレーヤーは多い。それは、その技術が一回限りの正解としてとらえられているから。だが、再現性の高い技術、すなわち選び直せる技術は、ミスしても選び直せる。例えば「もう少し弱く」「もう少し高く」「もう少し安全に」というように。同じ目的の中で微調整ができる。

実戦例①技術の安定とは、フォームありき VS. 選択肢の数と幅

 ある後衛は、「このフォームで打てたとき」は非常に安定している。しかし、踏み込みが浅くなると入らない。少し遅れるとミス。一方、別のプレーヤーは体勢が崩れても「高く返す」「深さを優先する」「クロスに絞る」といった選択肢を持っていて、結果として後者はどんな展開でもラリーが崩れなかった。これは技術の差ではなく、選択肢の数と幅の差によるものだ。


イラスト◎サキ大地

実戦例②完璧なボレーを求める VS. 複数の役割を使い分ける

 前衛で、完璧なボレーを求めすぎるプレーヤーがいた。少しでも体勢が悪いとボレーに出るのをやめてしまう。一方、別のプレーヤーは、触る(取る動き、誘う動き)、消す(張る動き、相手が打ちたいコースを消す動き)という役割を使い分けていた。完璧に決めなくても、その役割の意味は大きい。その役割を理解していることが、ボレーに出続けるプレーを生んだ。

実戦例③ミスをしたら違う配球を選ぶVS. 同じ配球で違う結果を残す

 ある試合で後衛が攻めのストロークをアウトした。しかし、この後衛は次のポイントでも同じ配球を選んだ。少しスピードを落とし、高さを足すことを意識しながら。その結果、ラリーの主導権は相手後衛に渡すことなく維持できた。これは、技術の「形」が残した結果ではなく、選択肢の「幅」の中で選び直した結果だ。


技術とは、一つの正解「形」ではない。状況が変わっても選び続けられる「幅」がある、再現可能な選択肢の集合なのである。



著者プロフィール
朴 相俊 
パク・サンジュン◎1975年、韓国生まれ。小学校から高校までエリートコース(スポーツ強化)でソフトテニス競技に参加し、韓国ジュニア代表としてプレー。1995年、20歳で競技を離れた。大学3年時に休学して兵役に就き、任務を終えたのち1998年に来日。2010年に東京大学大学院教育学研究科身体教育学コースで修士・博士課程を経て、現在は長野県にある佐久大学で基盤教育を行い、並行して国内外のソフトテニス振興・普及活動を行っている。教育学修士、環境共生学博士、日本自殺予防学会編集委員、信州公衆衛生学会理事、日本認知・行動療法学会認定行動療法士。2010年からプレーを再開しており、全日本クラブ選手権や関東オープン(35歳の部)、全日本社会人ソフトテニス選手権(45歳の部)、東日本ソフトテニス選手権(45歳の部)などで優勝。指導者としては、韓国代表も含め、国内の大学・高校チームのメンタルサポート、自ら立ち上げたソフトテニスの地域クラブ「PSJクラブアカデミー(小中学生対象)」代表兼コーチ、実業団「ウェル・トレード・プロワカ」チーム監督。さらに、ソフトテニス普及活動を目的とした「一般社団法人World Challenge Project」を立ち上げ、普及活動家兼指導者として、指導者を対象にソフトテニス技術指導、スポーツメンタル教育、チームビルディング指導のほか、JSPO資格のコーチ講師を務める。国際ソフトテニス連盟ランキング委員会副委員長、日本ソフトテニス連盟特別委員会委員などの活動もある。
Instagram @seagullpark_2028



試合で崩れても残る技術がある。
判断を誤っても立て直せる思考がある。
不安になってもやり直せるメンタルがある。
それらは才能でもなければ、偶然でもない。
試合は設計できるものであり、指導できるものだ。


ペア競技の復元力(朴相俊 著)
818日発売
A5判並製 312頁
本体価格2000円+税

目次
はじめに
第1章 技術は「正しさ」より「再現性」で考える
第2章 前衛・後衛の役割は「配置」ではなく「判断」
第3章 戦術とは「配球」ではなく「心理操作」
第4章 試合を分けるのは「技術差」ではなく「認知の差」
第5章 メンタルは「才能」ではなく「設計」
第6章 ペア競技における信頼とズレのマネジメント
第7章 競技が止まった日、人生が再起動した
第8章 怪我を経験した指導者だから伝えられること 
―技術・戦術・メンタルを超えた「人を育てる視点」―
私の履歴書
おわりに



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Cover写真◎篠原秀典(日本体育大学ソフトテニス部監督/ソフトテニス全日本ナショナルチーム男子監督)

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