「シューズをどうぞ」ショーマン・キリオスがチチパスに勝利し決勝進出 [シティ・オープン]

ATPツアー公式戦の「シティ・オープン」(ATP500/アメリカ・ワシントンDC/7月29日~8月4日/賞金総額204万6340ドル/ハードコート)の男子シングルス準決勝で、ニック・キリオス(オーストラリア)が第1シードのステファノス・チチパス(ギリシャ)に6-4 3-6 7-6(7)で競り勝ち、決勝に進出した。

 試合中にキリオスは対戦相手のチチパスに修理したシューズを届けるというコミカルなショーを演じ、キーポイントでショットを決めるとダンスで祝った。彼は最後のポイントを決め、ファンと握手をした。

 一連の『ニック・キリオス体験』は、土曜日の夜のシティ・オープンで大盛況だった。そして彼は19本のサービスエースを刻み、マッチポイントを凌ぎ、2時間7分の戦いを可能な限り多くの記憶に残る出来事で満たしながら大接戦の末の勝利を挙げるといった具合に、かなりうまくそれを演じて見せた。

 どれほど競っていたか? ふたりはともに、試合を通して91ポイントずつを取った。双方が58本のファーストサーブからのポイントのうち48本を奪い、33度あったセカンドサーブからのポイントのうち16本をものにした。

「僕の意見では、ニックは過小評価されている。僕と彼の間のライバル関係の未来は――明るいように見えるよ」とチチパスはコメントした。

「僕たちは将来、非常に何度もぶつかり合うことになるだろうということに僕はかなり確信を持っている」

 一方のキリオスは、「彼もまた勝利に値した」と賛辞を返した。

シティ・オープン2019|PHOTOアルバム

 世界ランク52位のキリオスは日曜日に、ATPツアーで6勝目となるタイトルをかけて第3シードのダニール・メドベデフ(ロシア)と対戦する。メドベデフはもうひとつの準決勝で、ラッキールーザー(予選敗退後、本戦に繰り上がり出場)から勝ち上がってきたペーター・ゴヨブチック(ドイツ)を6-2 6-2で退けた。

 この試合はともに20代のクリエイティブな2人の選手による素晴らしいショットの応酬だったキリオス対チチパスと比べると、少し退屈なものだったかもしれない。

 もっとも価値ある幕間のエピソードは、第3セット序盤のチェンジコートの間に起きた。チチパスを何度も悩ませていたシューズの問題がふたたび起こり、コミカルなシーンを生み出したのだ。

 ハードコートでスライドすることからくる摩擦がシューズの靴紐の問題を引き起こしたチチパスは、それゆえ試合中にシューズを替えてきたのだという。そのことはチチパスの準々決勝の相手だった第10シードのブノワ・ペール(フランス)を大いに煩わせ、彼は抗議のしるしとして自分のシューズを脱ぎ捨てて見せたほどだった。

 今回はボールボーイが問題のシューズを修理のため、観客席にいたコーチでもあるチチパスの父親に届けた。キリオスはコート後方のスクリーンによりかかって待っていたが、それからチチパスの父親からシューズを受け取ってそれをコートの向こうのチチパスの元に運んでいくことで手助けをしようと決めらしいのだ。

 このときのキリオスはあたかも『ご主人様、靴の用意ができました』とでも言うように膝を曲げて頭を下げ、うやうやしく靴を差し出した。

 キリオスは微笑み、チチパスはやはり笑って親指を上げた。観客たちは大喜びだった。

「僕はただ、ことの進行をスピードアップしたかったんだよ」とのちにキリオスは言い、「ところで、アディダスはダメだね」と口を滑らした。

 そしてそこで、ツアーの広報は慌ててキリオスの記者会見を打ち切った。

 両者がこれ以前に対戦したことは一度もなく、過去には意見の相違などによるコート外でのちょっとした摩擦もあった。しかしふたりは今大会でチームを組んでダブルスをプレーしており、かなり意気投合している様子なのだ。

 最後のタイブレークは、ジェットコースターのようにアップダウンした。

 まずはキリオスが5-1とリードした。最初のゲームでぎこちなく動きを止めた際に滑ったあとにトレーナーを呼んで右腿にテーピングを施していたチチパスは、そこから5ポイントを連取して6-5とリードを奪い返し、先にマッチポイントを手に入れた。しかし、キリオスはそのピンチを時速212kmのサービスウィナーで楽々と回避した。

 7-6で訪れたキリオスのマッチポイントで、彼はスライスのバックハンドでミスを犯した。ふたつ目のマッチポイントの前に彼はアドバイスを求めるかのように最前列の観客と話し、強烈なサーブ&フォアハンドのウィナーで勝利を決めた。それから彼はその観客のもとに戻っていくと、男と握手を交わした。

 問題児として物議をかもすことも多いキリオスは、紛れもないショーマンだ。彼はよかれ悪しかれ、他のテニス選手が滅多にやらないようなことをやって見せる。

「ある者たちは彼が大好きだ。ある者たちは忌み嫌っている。テニス界には、彼のような選手が必要なんだ。僕はそう信じている」とチチパスは自身の見解を述べた。

「そうでなきゃ、すべてが真剣すぎるようになってしまう。彼は楽しくて面白いよ」(C)AP(テニスマガジン)

※写真は準決勝で対戦したニック・キリオス(オーストラリア/左)とステファノス・チチパス(ギリシャ/右)
WASHINGTON D.C. , AUGUST 03: NICK KYRGIOS (AUS) and STEFANOS TSITSIPAS (GRE) during day 6 match of the 2019 Citi Open on August 3 ,2019 at Rock Creek Park Tennis Center in Washington D.C. (Photo by Chaz Niell/Icon Sportswire via Getty Images)

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