ビッグ3が支配する男子、より多くのチャンピオンが誕生する女子 [ウインブルドン]
ウインブルドン開始の日が近づく中、ふたつの最近のトレンドが現在の男子と女子のまったく異なる状況をとらえている。
ロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)の3人が、ここ10大会のグランドスラムでタイトルを独占している。一方、女子では同じ期間に9人の選手がトロフィを獲得しており、そこには6人のグランドスラム大会初優勝者が含まれている。
そして、次のことも考慮してほしい――2014年USオープンのマリン・チリッチ(クロアチア)以来、男子ではグランドスラムで初優勝者が出ていないのだ。
「統計に目を通し始めると気付くが、本当に信じられないほど凄いことだ」と昨年のウインブルドン決勝でジョコビッチに敗れて準優勝したケビン・アンダーソン(南アフリカ)はコメントした。
月曜日に始まるウインブルドンにおいて、男子のこの選ばれしグループの優位性は、特にはっきりしている。フェデラー、ナダル、ジョコビッチ、そしてアンディ・マレー(イギリス)の4人組以外の男子チャンピオンを見つけるには2002年にまで遡る必要があるのだ。
マレーは腰の手術からの復帰を目指して努力する中、今回ダブルスのみをプレーすることを予定している。
2003年にウインブルドンで自身のグランドスラム初タイトルを獲得して以来、フェデラーはこのグラスコートの大会で男子の最多記録である8度の優勝を遂げている。ジョコビッチはウインブルドンで4度タイトルを獲得しており、ナダルは2度優勝している。
彼らは男子のグランドスラム大会での優勝回数の記録でも、トップ3を占めている。1位のフェデラーは20回で、ナダルが18タイトルでそれに続き、ジョコビッチは15回となっている。
「我々はかつて、(グランドスラムのタイトルを)ひとつ勝ち獲れば幸せだったものだ。ところが今、もし優勝が1度だけならダメなやつということになってしまう」と1987年ウインブルドン覇者でオーストラリアン・オープンでは2度準優勝しているパット・キャッシュ(オーストラリア)は見解を示した。
「彼らがこの年齢でプレーしているテニスの水準の高さは、まったく驚くべきだ。そしてそのモチベーション。それがカギなんだ。モチベーション! ひとたびグランドスラム大会で優勝したら、僕は『もう十分だ。家族と時間をすごそう』というふうに考えていた。しかし彼らは、進み続ける意欲に満ちている」
フェデラーは8月に38歳になり、ナダルは33歳、ジョコビッチは32歳だ。
人々の関心事はもうかなりの間、「ビッグ3がどのくらい長くテニス界を支配し続けるか? そして、どの若手プレーヤーが動きを起こし、グランドスラムでタイトルを獲るのだろうか?」というものだった。
「私の意見では、史上もっとも偉大な3人の選手が同時期にプレーしているのを我々は目にしているんだ」とジョン・マッケンロー(アメリカ)は語った。彼は自身8度グランドスラム大会で優勝しており、現在はESPNの解説者を務めている。
「彼らはとてつもなくハングリーだ。あの年齢で、驚くべき能力だよ。彼らは対戦相手を怖気づかせてきたと私は信じている。そして彼らは実際、より優れているんだ」
それと同じようなことは、何年にも渡って女子テニスでも起きていた。しかしこちらでは、ただひとりの選手――セレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が支配していた。彼女はタイトルに次ぐタイトルを重ね、1968年に開始したオープン化以降の時代では最多となる「23」のグランドスラム・タイトルを獲る過程で強い抵抗に直面したのは時折に過ぎなかった。
彼女はオープン化前も含む全時代を通しての最多記録であるマーガレット・コート(オーストラリア)の24タイトルまで、あとひとつ足りないだけだ。
2017年オーストラリアン・オープンのあと、セレナは妊娠・出産のためツアーから離れて休止期間を取った。それが、アシュリー・バーティ(オーストラリア)、大坂なおみ(日清食品)、シモナ・ハレプ(ルーマニア)、カロライン・ウォズニアッキ(デンマーク)、スローン・スティーブンス(アメリカ)、エレナ・オスタペンコ(ラトビア)らがそれぞれグランドスラム初タイトルを獲った現在の『誰もが勝つチャンスを擁する』期間の開始となったのは、偶然の賜物ではないだろう。
“誰がトロフィを獲るか”だけが重要なのではない。直近のグランドスラム大会、フレンチ・オープンの例を見てみよう。
そこで12度目のタイトルを勝ち獲ったナダル、そしてフェデラー、ジョコビッチは皆、揃って男子の準決勝に進出した。一方で女子のベスト4には、2001年に32シード制が採用されて以来パリで初めて準決勝に進出したノーシード選手ふたりの顔があった。優勝したバーティは、昨年のUSオープンまでどのグランドスラム大会でも4回戦に進出したことがなかったのである。
それに続いて起きたバーティの世界ランク1位への浮上は、男子と女子のテニスがどう違っていたかを別の形で際立たせた。バーティは2005年以降でWTAランキング1位となった17番目のプレーヤーだった。しかし男子のATPランキングでは、同じ期間の間に世界1位になったのはフェデラー、ナダル、ジョコビッチ、マレーの4人だけだ。
ウインブルドンでの戦績が2勝3敗であるにも関わらず、バーティはブックメーカーの選ぶ優勝候補だ。ジョコビッチ、フェデラー、ナダルは、当然ながら男子でのトップチョイスとなっている。
実のところ前述のことのあり方を鑑みれば、ウインブルドンでの2週間の末に誰が女子のトロフィを掲げることになろうとそれは驚きではない。反対に男子では、ビッグ3以外の誰かが勝つことはかなりの大騒ぎを生み出すはずだ。
「この段階で、あの3人のひとりでなかったのなら大きな驚きだろう」とマッケンローは言った。
「我々の多くが驚かされたい、誰がのし上がってくるか見たいと願っているんじゃないかと思う」
(APライター◎ハワード・フェンドリック/構成◎テニスマガジン)
※写真は昨年の大会で3年ぶり4度目の優勝を果たしたノバク・ジョコビッチ(セルビア)
LONDON, ENGLAND - JULY 15: Novak Djokovic of Serbia looks back towards his players' box as he celebrates with the trophy after winning the Men's Singles final against Kevin Anderson of South Africa on day thirteen of the Wimbledon Lawn Tennis Championships at All England Lawn Tennis and Croquet Club on July 15, 2018 in London, England. (Photo by Matthew Stockman/Getty Images)
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